待ちわびた日
ようやく次の満月の日になった。
野村が口を滑らさないかヒヤヒヤして過ごしてきたが、ようやくこの日を迎えられて僕はホッとした。
それでも野村が
「なぁ!今日さ、また行こ…」
と大声で言いかけた時は
キッ!と思いっきり睨んでやった。
「おおぅ…な、なんでもない。」
とモゴモゴと言う野村に僕は、
「前と同じ時間に同じとこな。覚えてる?」
と低い声で聞いた。
カクカクと野村は黙って頷いた。
「じゃ。そういうことで。」
僕はそのあと極力関わらないようにした。
野村も僕の雰囲気で察したのか、その後は話しかけてこなかった。
そうして学校は終わり、僕らはそれぞれの家に帰った。
僕はご飯を手早く食べ、母親の「今日は出かけちゃダメよ。」と言う言葉に生返事をしながら、ベッドに寝転がり、その時間を今か今かと待った。
ようやく家を出る時間になり、またこっそりと抜け出す。
前回見られてしまった中嶋さんの家は通らないルートで、湖に向かった。
着いた時、まだ野村はいなかった。
約束の時間にはまだ10分ほど早かった。
早足で来すぎたか…と思った。
ふと青菜はもう着いているんじゃないかと思い、先に湖に向かってしまおうと思いついた。
その頃野村は……
「…ぐー…ぐー…」
自室で規則正しい寝息を立てていた。
ベッドに横になり、時間を待つうちに眠ってしまったようだ。
僕は野村のことを忘れていたわけではなかったが、青菜に早く会いたい一心で、湖に向かうことにした。
青菜に会える嬉しさで、少し興奮していたため、後ろからつけてきていた足音に全く気づいてなかった…。