放課後。。
「ちょっと、佐々木くん。置いてかないでよぅ。」
と言って僕の後ろを追いかけてくるのは
ちょっとドジな可愛い女の子。
ではなく
稀に見るおバカな男の子、野村である。
僕は完全に無視して下駄箱に向かう。
「ちょ。ひどーい。今日一回も話してないじゃん。」
なんなんだこいつ。
絶妙にイラッとくる。
僕はスタスタと歩き、人がいない公園まで来てやっと後ろを振り返って止まった。
「はぁはぁ。やっと振り返った。」
わざとらしく肩を上下させているが、特に走ってないだろお前。
「そのキャラやめて。話しにくいわ。」
僕は不快感をあらわにしてやった。
「これ?青菜イメージだったんだけど。まぁいいや、俺も似てないなと思ってたわ。」
唖然とする僕に対し、野村はひょいと肩をすくめた。
「言いたいことがあってさ。…また青菜ちゃんに会いに来月行かない?」
僕は野村と同じ気持ちだったことに多少のめまいを覚えながら、
「いいけどさ…。昨日のこと誰にも言っちゃダメだからな。」
と怖い顔で釘を刺しておいた。
しかし野村は
「えっまじ?また行ってくれるの?佐々木行ってくれないかと思った!めっちゃ嬉しい!」
と言い、嬉しそうにスキップして僕を追い抜かす。
僕は、しまった!と思い、
「ただし、条件がある。」
と厳かな風に言った。
途端にぴたっと足が止まり、
「え、なんの?」
と恐る恐る振り返る野村。
僕はしばらく考えて、
「それは…僕の言うことをなんでも一回だけ聞くこと。」
「えっどんな。」
「それは、その時が来るまでわかんない。」
今思いついた割にはなかなかいい条件だ。
我ながら素晴らしい。
これで野村の暴走の対抗手段ができたわけだ。
野村は不満そうに
「…わかった。だからまた行こうな。」
と言った。
約束を締結し、僕たちはまた歩き出した。
有利な条件を勝ち取り、僕はとても満足だ。
心なしか、いつもの風景が僕を賞賛しているようにさえ見えた。
しかし…五分後。
「野村!!その話し方やめろ!」
という僕の怒声が響き渡った。