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『 魂売りませんか? 』 著:夜空

「いらっしゃいませお客様、その物語をご所望でしょうか?」

「お客様に合う物語である事を、私共は心の底から祈ります」


「それでは、ごゆっくりと、おたのしみください……」

『 魂売りませんか? 』 著:夜空



 毎朝起きるたびに思うんだけど寝起きが良ければなって。



 太陽とコトリさんにこんにちは!犬の散歩行ってきます!とか爽やか女子になれればもう少しいいんじゃないかって。


 実際、冷えた焼き鳥食いながら、いやいや散歩に引きずられていくブルドックみたいな顔して朝を過ごしてますけどね。



 まぁそれはさておき



 今朝起きたらなんと金縛りにあっちゃいましたよ。キャーこわーい


 前後不覚に陥って「え、なに、なに、怖い怖い」って精一杯の女子力発揮して叫んでみました。


 でもね。なんかおかしいの。


 こう、普通さ、視界ってさ重力に逆らったりしねぇじゃん?



 ばっちり重力に逆らってんの。見える世界が真逆。わぁ異世界。


 そのあたりになると気づいたの。



 私ベッドと壁の隙間に挟まってんの。わぁ怖い。


 私の寝相どうなってんの?


 普通寝相が筋肉バスターってなくない?



 しかもねぇ最悪なことにさっきの悲鳴をきいて隣の人が来たわけ。


 あせるあせる。


 ドア叩いて「大丈夫ですかー」



 だから「私も大丈夫です!」って全然大丈夫じゃねぇけど


 いやホントは入ってきてもらって助けてもらいたかったよ?



 でもほらなんつうのかな


 私の部屋って、ゴミやら服やらでシュールレアリスムな感じになってんの。


 見る人が見れば理解してくれるけど、こう︙︙普通の人が見たらうわってなる感じの。



 想像してみて、ぐっちゃぐちゃの部屋の中のベッド。


 そこには壁に挟まれた謎の女が。


 って完全にホラーだよね。


 ゴルゴも背中見せて女の子みたいな悲鳴あげながら逃げるレベル。きゃーっつて。



 そんなこんなことがありながらもちゃんとおきましたよ。


 で、歯を磨きながらあまりの暇さを持て余して遠くの山のプロフィールとか考えながら時間つぶしてたのね。



 山美。3900歳。好きなタイプはどっしりしてる活火山タイプなんてね。


 最近いい出会いがないのって。私と同じだね。


 というかそもそもここ最近の出会いって行きつけのコンビニの店員くらいだよね。


 あれ涙が出てきたね。



 そんな時にピンポーンってなったの。


 五メートル飛び上がったよね。


 ほらさ、私って友達いないから家のインターフォンにそんな機能がついてたんだーって


 私の家にだれも来ないのはインターフォンが壊れてるせいじゃなかったんだーって


 あれもう涙がナイアガラの滝並だね。



 で通話ボタンを恐る恐るおしたら、ほら来た。



 イケメンですよ。冗談よしこちゃん。



「絵なら間にあってます。宗教ならゾロアスター教なので必要ありません。保険ならこれ以上入れません。お墓なら死ぬ予定はありません。」



 まぁこれだけの台詞をつらつらコミュ障の私が喋れたよね。


 どう考えてもイケメンが私のところに来るのなんて何らかの交通事故としか思えないから。



「キタゾノさん。あの……お話だけでもいいですか?」



 うわぁ。今までさんざんもてない人生だったもん。


 いまさら白馬に乗った王子様がブリッジしながら空から落ちてきても絶対に驚かない自信あったけど、いざこういう風に人生で言われて見たい台詞第一位ぶつけられたら面食らうよね。



「一旦家に入れていただいて……」


「にゃぁぁぁぁぁ!!!」



 入ってきた男を必死で押さえつける



「ちょちょちょつよ!痛い痛い痛い!」



 待って!部屋にあらゆるものが散らばりすぎて大変なことになってるから!


 軽く地層をつくってるから!


 部屋が創世記ジェネシス状態になってっから!



 まじなにいってんのかボルナレフ状態だったよね。



「わかりました!わかりました!」



 でようやく閉め出した頃には変な汗がドバドバ、女にあるまじき陸に上がった河童状態にさすがのイケメンもくるとこ間違えたなぁって顔してた。



「それではお話だけでもどうですか?」



 いやむしろお願いします。


 私がイケメンと話す機会なんてドンペリ頼まないといけないからな。



「単刀直入にいいますよ。死んでいただけませんか?」



 ……うん?



「はい?聞き間違いかもしれませんが、僕と結婚してくれませんか?って言いましたか?」



「はい。間違えてますね」



「うわぁ」



 一言で蹴散らされたよ。か?とはい。の間わずかの0.3秒。


 ばっさり切り捨てる世界大会があったら間違いなく二位はとれるよ。



 一位は私。駅前のエステサロンのティッシュ配りを神速で断るのは人間やめてるレベル。



 エステごときでモアイが人間になると思ってんのか?


 削岩機もってこい!



「それじゃあなんて?」



「来る黙示録の日に備えて先行して地獄に来られる方を募集してるんですよ」



 あーなるほど。電波を受信してる系男子の方でしたかー。地デジかー。



「すいません。キタゾノは留守にしております」



「いやいやいや」



 居留守は通じないか。


 学生時代は空気よんで空気になってたんだけどなぁ。そのスキルが使えないとは。



「ふっ。第六天魔王に見初められし、私にそのようなことをきくとは。愚かなり。一体どこの宗派のものだ?」



「頭大丈夫ですか?」



 こうさ。ネタにマジレスされるとクソ恥ずかしいよね。


 恥ずかしいね。やばいね。


 顔から火炎放射機が出そう。汚物がいたら消毒できる。



 まぁ当然気まずい空気が流れ出すわけですよ。


 え?これ私のせい?



「で。結局あなたはだれ?」



「悪魔です」



「無いわー。引くわー」



「いや。本当の話ですよ」



「いや。私だって名前聞かれて人間ですとは答えねぇよ?」



 今、お前猿人類で進化とまってんだろって思ったやつあとで屋上な^^



「人間界においては種族を明らかにしたほうがいいかと思いまして」



 あぁその辺しっかり設定があるのね。



「名前は?」



「人間の口の形では発音が難しいのですが、。マンコチリシカッパです」



「下ネタじゃねぇか」



「は?」



「は?」



「……とにかく。地獄へと堕ちる気はありませんか?」



「なんでおちなあかんねん」



「今、ほとんどの方は地獄に落ちてますよ」



「まじか」



「天国のほうがむしろ大変ですよ。少子高齢化に労働問題。あれやこれや」



 うわぁ。死んでからもそんなこと考えなきゃいけないのか大変だな。



「で?地獄に落ちろと?」



「まぁ早い話そうですね」



「なんか先に地獄落ち決定したらいいことあんの?」



「そりゃもちろん」



「たとえば?」



「今なら地獄釜ゆめぐりツアーコースがついてきます」



 いやーそんな気楽な口調でいわれましても。めぐる場所が場所ですよ?


 疲れが吹っ飛ぶ前に肉体が天地の果へとフォエバーしません?



「謹んで辞退させて頂きます。それでは」



「ちょっとまって!」



「しつこいですよ!悪魔なんているわけないじゃないですか」



「まだ疑っているんですね」



「そりゃそうでしょうよ」



「しょうがないですね。本当はこれをやるのは禁じられているのですが」



「なにかやるつもり?」



「なにがみたいですか?」



「そら、悪魔なら魔術みたいなものつかえないの?」



「つかえますよ」



「例えば?」



「魔術で犬の散歩とか」



「ショッッッッッッボ!」



「しょぼいですって!?魔法を使って犬の散歩をするのがどれだけ難しいか…」



 それからなんか魔法術式がなんだの、不科学性がどうだの小難しいことを言い出したから右から左にうけながした。頭のなかをつるーんと滑っていく。



「ほかに無いの?」



「うーん。コレ以外だと、周りにいる人達の命を一瞬で刈り取ったりとか…」



「え!?すごい!やってみてよ?」



「……それは契約の履行ってことで問題なしですか?」



「ちゃうちゃう。なんかもっとこう、、ぱーっとすごいやつ」



「うーん。命奪う以外でやることはとくには」



 なんでそんな火力最大か最低しかないガスコンロみたいな仕様になってんだよ



「あ、一つだけ」



「え?」



「ちょいと失礼をば」



 その瞬間目の前で不思議なことが起きたんだ。


 今まで目の前に突っ立てたはずのイケメンがペロンと薄くなって溶けて消えた。



「は?」



「後ろですよ」



「は!?」



 うしろを振り返るとイケメンさんが。



「これぞ魔術、瞬間移動ですよ」



 あ︙︙でもそこは︙︙



「うっわぁ!!!!!」



 すげぇなあ。


 羽生くんでもあそこまで回らねぇよ。


 三回転半のきれいな弧を描きながらずっこけたイケメンは。



 そのまま顔面着地を決めた。



 訪れる沈黙。



 さぁどうしたもんかね



 まぁ。不法侵入してきたせいだし。


 でも、あんなに派手にずっころんだのは私のせい?


 確かにあんなお山になるぐらい服をためたん私だしね。



 もうおへやって単語じゃないもんね。おべやだもんね



 ってかまじでイケメン大丈夫か?


 さっきからピクリとも動いてねぇけど?


 え?


 これ殺人になったりするのかしら?


△△△   ▲▼   ▽▽▽


 まったくもって災難だった。 楽勝だと上司からおしつけられた先にいたのは人間だか妖怪だか、ぼくらよりもよっぽど冒涜的な見た目のやつがいた。 おまけに罠にはめられてこのざまである。 魂だけを地獄にとばして上司に連絡をとる。 「なんかすげー手強いやつがいます」 「しらんがな」



「どうにか、契約できませんかね?」



「それだったらアレ。使えばいいじゃん」 「アレってあの詐欺まがいのあれですか?」



「そそ」



「えーあれ達成感ないからあんまりすきじゃないんですよ」



「文句言わない」



△△△   ▲▼   ▽▽▽


 こいつ気絶したり起き上がったり元気なやっちゃなー



「あの!」



 さっきまで気絶してたやつの台詞とは思えんくらいの大声量に思わず気をつけ。 「それじゃあお試しパックをつかって見ませんか?」 うわ、そんなんまであんの?


 ほんとすごいな。



「今日だけ。今日だけ地獄にいってみませんか?」



「今日だけ?」



「そうです」



「ほんとうに今日だけ?」



「本当にです」



「結婚してくれる?」



「善処します」



 信用できない言葉トップ一位頂きました。



「まぁ今日だけなら」


「本当に!?それじゃあこの契約書にサインを」



 どこからだしたし。 しかも字がまったく読めねぇし。何語だよ



「ここにサインを書けばいいのね?」



「そうです」



 サインし終えた瞬間、ふっと目の前が暗くなった。




△△△   ▲▼   ▽▽▽



「さてはて、こんな初級のトラップに引っかかってくれるとはね」



 僕は目の前の人を見下ろしながら言った。



「今日って言う日は明日になればその日が今日になる。つまりは永遠に地獄行きってことなんだよなぁ」



 そのとき上司から連絡が入った。



「おつかれ」



「お疲れ様です」



「いきなりで悪いんだけどぉ。さっき回収した子。現世に戻してくんない?」



「なんでですか?」



「うっさい」



「は?」



「ひたすらにうっさいの」



「はぁ」



 地獄でもさっそくやらかしてくれたらしいな。おい



「もどしたことはないんですけど、どうやったらもどせるんですか?」



「キス」



「はい?」



「ほら昔から相場がきまってんじゃん。白雪姫でもさ。そんじゃよろしく」



「え?ちょっと。え?」


…………

……


◇著者◇

夜空


※ 初週は公開記念としまして、毎日 19:00 に新しい物語をお届けいたします。

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