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第六十八話 物語の裏

【外伝アナザーロード】最強剣士の/(スラッシュ)ロード 掲載しました。不定期更新ですが、今月中には第二話更新します。こちらも是非よろしくお願いします。


 絶句する四人とは違い、俺は特に驚いてはいなかった。


 四人と違い、俺はすでに【契約】について詳細を聞いていた…だけではない(・・・・・・)


 ルナを除いた三人の表情や様子で自分の考えに確信が持てたからでもあった。


 …会長とルナの護衛の話をした時から気になっていた事があった。

 

 何故、会長は【未来視(ウォッチャー)】で視た暗殺者について、俺に話さないのかと。


 刺されたルナだけでなく、風景、星の動きなど、あらゆる点を把握するほどの会長が、暗殺者の顔や服装などに一切触れなかった事。

 人物像や身につけている物が分かれば警戒や対策も打つ事が出来たはずだ。

 もし、【未来視(ウォッチャー)】では視る事が出来なかったのなら、そう話せばいいのにそれすら口にしなかった。


 そこが最初の疑問だった。



 次に【未来視(ウォッチャー)】の説明の時だ。


 コイントスを行い、【未来視(ウォッチャー)】を『自由に使えない力』だと目の前で説明したが…


 あれだけでは本当に『自由に使えない』と証明出来た訳ではない。


 たかがコインの裏表を当てる、確率二分の一のゲームだ。


 そんな簡単なゲームで会長は『裏』と答え、負けた。


 その結果、【未来視(ウォッチャー)】は『コインの裏表を当てるような未来も簡単に視る事の出来ない力』と思わせられるような状況になった。

 とは言え、【未来視(ウォッチャー)】についての説明を受けている内にすぐにその可能性も考えたが…あの場ではあえて口には出さなかった。

 【未来視(ウォッチャー)】が常時発動出来る力でなかったとしても、自由に使えるのなら下手に探りを入れてもこちらが損をするだけだからだ。


 二つの疑問は大した内容ではないが、一番気になったのは報酬変更後に追加された条件だった。


 追加された条件は一つ。


『暗殺者は生かしたまま捕まえて欲しい』だ。


 暗殺者を捕らえ、情報を引き出す事が目的とも考えられるが、それは狙われているルナはともかく、バース商会にとってメリットは少ないはずだ。


 バース商会の目的はあくまでもルナの護衛。



 その最終手段として、暗殺者側の殲滅を行うのであればまだ分かるのだが、下手に刺激すれば暗殺者側が商会も巻き添えにするかもしれない。


 会長がそこまでする理由が分からなかった。


 ルナが目覚めるまでの間や護衛の合間に会長の経歴を調べたところ、未だに独身なのはかつての思い人を忘れられない為と聞いた。

 若い時に盗賊に襲われ、思い人を連れ去られた挙げ句、しばらくして見つかったアジトには盗賊も含め生存者は誰もいない悲惨な現場だったと。



 【未来視(ウォッチャー)】で視た暗殺者がかつての盗賊団の一員であり、自ら復讐を果たす為に生け捕りを望んだ。


 そう考えれば納得出来ない事はなかったのだが…


 依頼について話した時の会長の目は鋭かったが、復讐とは違うように感じた。


 決意はあったが、憎悪はなかった。


 そんな疑問の中、暗殺者と対峙してみると余計に話が分からなくなった。


 目の前の暗殺者はルナよりも少し年上であるものの、どう見ても当時の関係者とは年齢が違いすぎた。


 当時の関係者ならどれだけ若くとも会長に近い高齢でなければおかしい。


 俺の『身分証明書(ライセンスカード)』と同じ【偽装魔法】が使われているかとも考えたが、気絶した暗殺者の姿は変わる事なく、また武器や魔具と思える物を全て取り上げてみても【偽装魔法】に関係する物はなかった。


 小さな疑問や違和感があちこちから浮かぶが、全てつながらない。


   


 そこで大前提の考えをもう一度見直してみた。


 『恩人のルナを守りたい』


 全ての始まりは会長の言葉だ。


 『窮地に陥った自分を救ってくれたルナが殺される場面を視たから助けたい』と会長は言っていた。

 


 …その言葉が本当の目的ではないとしたら?


 全て嘘でないとしても、隠された目的があったとすれば。


 追加された条件…あれこそ会長の目的だとすれば?


 それにそもそも…



 会長はいつ(・・)未来視(ウォッチャー)】を視たのか(・・・・)


 ルナが助けに入った後に視たと思っていたが、もしずっと前からその場面を視ていたのならば…



 話が何もかも変わってしまう。 



 捕らえた暗殺者から【契約】について聞いた時、ある突拍子もない推理が浮かんだ。


 何も知らない人間からすれば誰もが呆れるようなそんな滅茶苦茶で歪な考えだ。


 しかし、【情報撹乱(シャッフル)】と言う【スキル】があれば話は別だ。


 そして、その荒唐無稽な推理は会長達によって真実だと分かった。


「会長。」


「………」


 俺が声をかけても会長はまだ話せる状態ではなかった。


 執事長とゴドさんを見たが、二人は無言で首を振った。


「…俺が話します。いいですか。」


 会長は顔を上げる事なく、うなずいた。


 俺は静かに待っている暗殺者に向けて、話を始める。


 この物語の裏を。



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