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番外編 執事長は出迎える



「遅い時間に来てくださり、真に感謝いたします。」


 来客を屋敷の玄関で出迎え、挨拶をすると客人は苦い顔になって、頭をボリボリかきはじめました。


「毎度思うけどよ、その口調どうにかなんないのか?」


「出迎えの挨拶だけだ、そう気にするな。」


 私は口調を崩し、彼、ゴドを来客用の部屋に通しました。


 普段は他の執事やメイドもいる手前こんなしゃべり方をしませんが、今この屋敷には私とゴドしかいません。


 よって彼にだけは昔の口調で話します。


 彼とは古くからの知り合いですので、紅茶などは用意していませんが、代わりのモノを用意しています。


「お!さすがだな!」


 ゴドは部屋に入るとテーブルに用意してあった酒瓶に目を輝かせました。特別珍しい酒ではありませんが、ゴドが昔から好きな酒です。生産が年々減っているとの事でイガリでも手に入れるのは難しくなっています。


「今回の報酬はそれだ、相棒。」


 私の言葉にゴドは「ん?」と首をかしげました。

 彼には前もって『依頼』を説明していて、ここに来たのも了承の証だったはずですが。

 何か説明が足りなかったかと思いましたが、ゴドは私と酒瓶を交互に見て、言いにくそうに切り出しました。


「いやな、お前にしてはこの酒一本ってのはずいぶんショボいなって。」


 ああ、そういう事ですか。

 確かにちゃんと言っていませんでしたね。

 では改めて。


「報酬はその酒だ。」


「ああ、分かっているが…」


 私は執事服から一枚の紙を出し、ゴドに見せました。


「その酒の権利だ。」


「…………」


 あ、固まりましたね。

 戦闘中ならともかく、昔から驚きすぎると思考停止するクセは未だに治っていないようです。


「…けんり?」


 おや。

 どうやら昔と違い、復活するのが早くなったようですね。


「簡単に説明すると、今後お前にはこの酒が飲みたいだけ飲めるってわけだ。」



 製造元は人手不足や材料の高騰の影響で生産を減らしていたのでバース商会が補助を行うようにしました。もちろん、製造した酒を最優先で卸してもらう事を条件に。酒の販売経路などお金に関わる話もありましたが、ゴドには興味がない話なのでそこは省きます。


 私が持っている紙はその契約書です。


「…ずいぶん太っ腹じゃねえか。」


 ゴドが何かに気づいたようににやにやしながら私を見るので、一瞬契約書を破り捨てようと思いましたが、


「いいぜ、文句は一切ねえ!」


 一言そう告げるとゴドは酒瓶を戻すと、私に手を差し出してきました。



 私がその手を握ろうとすると、


「久しぶりに暴れるがいいんだな?」


 ゴドが真剣な顔でそう聞いてきました。


「…ふ。」


 つい笑ってしまいました。


 若い時はそんな事は全く考えなかったのに…やはりお互い歳をとったようですね。

 

 無茶で無鉄砲、勢いだけで駆け抜けたあの時。


 そして…


 

 ………



 …今は関係ありませんね。



 私も彼の手をしっかり握り返します。




「ああ。よろしく頼む、相棒。」



「おう!」


 さあ、準備を始めましょう。



 腕が鈍ってないかが気にはなりますが、その時はその時。


 

 盛大に出迎えましょう。


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