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第四話 契約

 この世界には様々な神がいる。

 火の神、水の神、土の神、雷の神…

 戦いの神や癒やしの神など とにかく数え切れないほどだ。

 だから当然ながら俺の知らない神もいても不思議ではない。

 むしろ知らない神が多い事が普通だ。

 

 「…まさか、復讐の神がいるとはな。」


 目の前の少女は復讐神と名乗った。

 初めて聞く神だが復讐の神が俺の前に立っている事はつまりそういう事なのだろう。

 

 さっきの夢をはっきりと覚えている。

 

 心から何を望んだのかも…

 

「次元の狭間に落ちてきた君に興味を惹かれてね。思考は読ませてもらったよ。」


「…そうか。」


 俺がスピア達から逃げる時に使ったのは転移魔法ではない。

 

 次元魔法だ。

 

 ただの転移では奴らは魔法の痕跡から必ず追ってくる。

 だが、次元魔法で一瞬だけ別次元へ行けば痕跡は残らないし、追ってくる事もできない。

 

 次元魔法をまともに使える人間は俺しかいないからだ。

 最強の魔法使いと呼ばれるスピアでも発動は出来ない。


 とは言っても、あれだけ負傷した状態では俺も満足に発動出来なかったようで、一瞬だけ別次元へ行くつもりが、次元の狭間へ落ちたみたいだ。

 

 …よくも無事に生きていられたものだ。


 別次元への移動を何回も行ったかのように話しているが、全ては理論上の事で、俺はこんな荒技今まで一度も使った事がない。


 身体が万全の状態でも危険な行為に変わりなく、あの時は腕の一本は失うと確実に思っていた。


 周囲から何らかの雑音が聞こえるが、特に害はないようだった。


「君が落ちたここは私、復讐神の領域だ。そして、『力』を求めた。後は分かるだろう?」


「…契約か。」


 ごく希に神様と契約をする人間がいる。

 そういう人間はスキルと呼ばれる特殊な力をもらう代わりに、死後の魂を捧げたり、絶対従順の誓いをしなければならないなど、与えられる力や神によって様々な契約を交わしている。

 王都の図書館で見た資料によれば、王都に現れた邪竜を倒す為に一人の戦士が戦いの神と契約し、勝利したが、一日一回の戦いをしなければ命を差し出す代償を払っていた。結局、その戦士は戦いの日々に耐えきれず、壮絶な最期を遂げたとも…


 復讐神の話しぶりからして、俺はすでに契約を交わしたようだ。


 俺の体が回復している事も契約に関係しているようだが、契約の内容はなんなのか…


「復讐神である私との契約内容は簡単だ。代価は君が復讐を成し遂げる姿を見せてくれれば、それでいい。」


 拍子抜けする内容だった。

 だが、それが全てではないだろう。


「…復讐を成し遂げた後はどうなる。」


「どうもしない。そもそも私は契約をした事がほとんどないから、勝手が分からないのさ。」


 …なんだと?



 復讐神って割にはずいぶんと甘い…

 いや、甘すぎる。

 とは言っても俺に選択肢はない。

 すでに契約を済ませている上、ここは復讐神の領域だ。

 元の次元へ戻れるかどうかもこの神の気分次第だ。

 今は信用しよう。

 警戒も忘れない。

 それでいい。


「さてと。それじゃあ、契約内容として与える力、スキルは四つだ。」


 四つ?


 王都の資料では与えられる力はどんな契約だろうと一つと書かれていたが?


「普段は世界を隔てた状態での契約だから制限がかかるんだ。でも、君は神様の領域で直に契約したんだぜ?制限も何もない。」


 俺は四つのスキルをもらう事になった。




【復讐の誓い】

 復讐対象によるあらゆる攻撃が無効化される。


【報復の覚悟】

 復讐対象が存命する限り、決して死ぬ事はない。


【闇の洗礼】

 すべての闇魔法が使える。


【??????????】

 ???????????



 …なんだこのスキルは。


 明らかに異常だ。


 強すぎる…




「そうでもないさ。【復讐の誓い】も【報復の覚悟】も復讐すべき相手がいなくなれば意味を無くす。【復讐の誓い】に至っては復讐相手以外には一切の効果を発揮しない。」


「…それを引いても異常なんだよ。」



 一つだけ何の説明もなく、また理解も出来ないスキルがあったが、復讐神は説明する気はないようだった。


 とは言え、このスキルはありがたい。

 スピア達の魔法は避けるだけで命がけだった。

 最強の魔法使いが自らの誇りである魔法が何の意味も為さないと分かった時、どんな顔をするのか。


 あの自信満々の表情が砕け散る様を早く見たい。


「ほう、中々いい顔をするね。」


 復讐神は興味深そうに俺の顔を観察していたが、何かを思いついた顔をすると指を鳴らした。一瞬で復讐神の手には一枚の仮面が収まっていた。


「餞別にこれをやろう。君が復讐に困った時、使えばいい。」


「…礼を言う。」


 俺は素直にそう言った。

 恐らくこの神にはこの神なりの考えがあるのだろう。

 もしかしたら俺はうまいように利用されるだけかもしれない。

 そうだとしても…


「必ず成し遂げる。」


 仮面を受け取り、俺は再び誓いを口にした。


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