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番外編 復讐神は祈る


『…行ってくる。』

 彼は確かにそう言い、歩き出した。

「…いってらっしゃい。」

 笑って彼に伝えようとするが、この声はもう届かない。

「復讐神、お前まずくねえか?」

 少し前から私の『領域』に来ていた客人の声に苦笑いをするしかなかった。

「ははは。まあ、短い時間に干渉し過ぎたとは思うよ。でも、線引きはしているから大丈夫。」

 客人は私の問いに大きくため息をつき、つかつかと距離を詰めた。

 困惑する私の手を客人は掴むと、目がより険しくなった。

「…お前、力使いすぎだ。相当無茶な干渉しやがったな。」

「………」

 客人の言葉に私は黙るしかなかった。

 神と呼ばれる存在が契約した人間に干渉する事自体は問題じゃない。

 干渉を受けた者が、世界を混乱に陥れるような事をするなら話は別だが、それ以外なら何も問題はない。

「『領域』にいる神がこんなに短い時間に干渉すればこうなるって分かってただろ。特にお前は…」

 客人は最後まで言わなかったが、彼の言うことは分かる。

 神がそれぞれに支配する『領域』と呼ばれる空間から『人間界』へ干渉する事には力を大きく消耗する。

 神と契約し、スキルを手に入れようとしても一つしか得る事が出来ないのもこれが原因だ。

 そして…私の領域は干渉に使う力が他の神の領域よりも大きい。

 昨日まででもう限界寸前だった。

 それでも…

「…それでも『あの一瞬』は必要だった。」

 彼は踏み出せなかった一歩を踏み出した。

 

 行く道をほんの少しだけ変える事が出来た。

 

 それで充分だ。

 

 後悔はない。

 

 客人は私の様子を見て、また大きなため息をついた。

「…分かった。お前がそう言うならもう何も言わないさ。」

 …せっかくだ。この客人に一つわがままを言っておこう。

「…私が眠っている間、彼を頼むね。」

「…いいからお前はさっさと力を取り戻せよ。」

 客人は私の頼みに答える事なく、自分の領域へ戻っていった。

「…うん、大丈夫。」

 心配はしていない。

 私が眠っている間に彼に何かあっても客人がどうにかしてくれるだろう。


 今の私に出来る事は何もない。

 

 …眠るとしよう。

 

 また彼が踏み出せなくなった時に、背中を押せるように。


 声を届けられるように。

 

 そして、私は静かにまぶたを閉じ―――――。


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