第三話 憎しみが呼ぶものは…
憎い。
国を滅ぼされた事が憎い。
友を殺された事が憎い。
仲間を殺された事が憎い。
愛した人の命を奪われた事が憎い。
憎い。
勝てなかった事が憎い。
負けた事が憎い。
逃げた事が憎い。
憎い。
力が無かった自分が憎い。
命尽きるまで戦えなかった自分が憎い。
あの女に温情をかけた過去の自分が憎い。
憎い。
スピア・ローズが憎い。
ルーラ・アシルが憎い。
アズサ・ソメヤが憎い。
ライデンが憎い。
憎い。
ティア・シルクが憎い。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!
力が欲しい。
絶対的な力が欲しい。
あの五人を叩きつぶす力が欲しい。
神でも悪魔でも誰でもいい。
俺に力を…
『…いいだろう。お前の望み、叶えてやろう。』
*****
気がついたら俺はベッドで寝ていた。
口に血の味がするが特に異常はない。
俺は周囲を見渡した。
「ここは…」
洞窟だった。
松明の灯りは大きく、隅まではっきりと見える。
壁は岩壁ではなく、触ってみると滑らかな鉱石で出来ている。
「ん?」
俺は自分の体を確認した。
焼かれ、貫かれ、潰され、感電させられたはずの体には痛みどころか傷一つさえなかった。
まるで全てが夢のようであったかのように。
「…夢じゃないか。」
自分が寝ていたベッドのすぐ近くに溶けかけの鎧とヒビの入った剣が置かれていた。あの戦いが現実である事の証明だった。
「その通り、現実さ。」
頭に声が響き、いつの間にか黒いローブを着た少女がベッドに座っていた。
とてもかわいらしい顔をした少女は俺の顔へ自分の顔を近づける。
「なっ!」
口元が触れそうになるギリギリで少女は近づくのを止めた。
「ふむ…傷もどうやら大丈夫そうだ。まさか、ここまで適正があるとは。」
少女はそう言って離れると、ニヤリと笑った。
「私は復讐神。君の望みを叶える者だよ。」