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第二十四話 欠点


「【復讐の誓い】は使い魔には効果がない?」

 復讐神から仮面をもらい、領域から出る準備をしている時に何の前触れもなく俺はそう言われた。

 話を切り出した復讐神はどこから出したのか椅子に座り、大きく息をついた。

「正確には『生命』には効かないってところかな。例えば、部下に命令してもその命令を実行するかは命令された本人の意志でしょ?『ゴーレム』のような意志のないものなら『復讐対象の攻撃』に入るけど、使い魔や部下は別。」

「ゴーレムは術者の魔力で動く人形だから無効化対象だが、召喚魔法で呼び出した使い魔や、自分の部下に攻撃させる事は対象外ってわけか。」

 復讐神が渡したスキルも完全無敵と言う訳ではないらしい。

 どのスキルも常時発動型ではあるが、見ようによってはこれも短所だそうだ。

「…なら、なおさら隠しておかないといけないな。」

 たった一つでもボロを出せば絶対に逃がすことのない連中だ。

 その為ならいくらでも犠牲を出すし、その事に何の罪悪感を感じる事もないだろう。

 何より…復讐の難度は大きく上がる。

「時間だ。それじゃあね。」

 そして、一方的に俺は復讐神の領域から元の世界へ帰されたのだ。




「特定人物からの攻撃を防ぎ、本人の意志とは関係なく常時発動する…そんな魔法は聞いた事がありませんわ。」

 アズサ・ソメヤは口元に手を当て、ぶつぶつとつぶやいている。

「ワイズ・フールのような絶対防御魔法は本人の素質があってのもの。もし、ゴミ虫にその片鱗さえあれば、以前の戦いで使っていたはず。」

 …これ以上はまずい。

 アズサ・ソメヤが【スキル】の可能性に辿り着くのは目前だ。

 その前に…!

 右手に魔力を集め、風の球を作り出し、撃ち出そうとした時だった。



「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 湖から轟音と共に水柱が現れ、そこからキメラゴーレムが飛び出てきた。


「!」

 予想していたとは言え、キメラゴーレムは全くの無傷だった。

 水の上を地面と同じように走り抜け、左手の毒針を撃ちながら、こちらへ距離を詰めている。

「……」

 連射される毒針を避けながら考える。

 キメラゴーレムはゴーレムを素体とした合成獣の一種だろう。

 体のあちこちに現れている特徴は取り込んだモンスターを表し、恐らく取り込んだモンスターの能力を使う事が出来る。

 誕生して間もなかったから最初こそ簡単な相手だったが、徐々に体の動きや特徴を理解し始めている。 

 実際にたった数分でかぎ爪を闇雲に振り回す攻撃から、毒針の射出、水の上を走るなど、自分の体に適した戦い方になっている。

 

 倒すなら今しかない。

 

 時間が経つにつれ、強さが上がるならとにかく早く倒す必要がある。

 

 ただでさえキメラゴーレムはグリードスパイダーとシールドバイパーを取り込んでいる。

 

 シールドバイパーは防御にのみ特化した蛇のモンスターだ。鱗はあらゆる魔法を弾き、皮膚はあらゆる物理攻撃を受け止める。防御能力だけならモンスターの中でも随一とされている。

 そんなシールドバイパーの能力に、グリードスパイダーの【グリード】まで使い出したら、いよいよ後がない。


 とは言え、今の俺では…



「オオオオオオオオオオオオオ!」

 陸地へ辿り着いたキメラゴーレムは左足のクモの複眼から白い糸のようなものを吹き出した。

「っ!」

 糸が左腕に絡みつき、キメラゴーレムは糸の出ている左足を勢いよく振り回した。

 鉄のように強靱な糸に引っ張られるように俺の体も振り回され、宙を舞う。

「この…!」

 振り回されながら右手を手刀の形にして、風魔法で覆う。

 風を纏った手刀はあらゆる物を切り裂く刃だ。

 グリードスパイダーの糸でも問題なく斬る事が出来るはずだった。

「!」

 だが、渾身の力で振り下ろした手刀の一撃を糸は切れる事なく受け止めていた。

 突如、柔らかくなった糸はその弾力で手刀の切れ味を殺していた。

「これは…!」

「オオオ、オオオオオオ!」

 勝ち誇ったように吠えたキメラゴーレムは糸をさらに強く振り回し、そのまま近くの木へ俺は衝突した。

「ぐっ!」

 木が折れるほどの勢いだったが【身体強化】のおかげでダメージは少ない。だが、糸は今も左腕に巻き付いたままだった。

「オオオオオオオオオオオオオオ!!」

 キメラゴーレムは毒針の着いた左腕を俺に向けていた。

「っ!」

 地面を転がり、飛んでくる毒針を避けながら、俺は糸の絡まった左手に魔力を集めていた。

 そして転がる事を止め、地面に倒れたまま魔法を使う。

「食らえ!」

 左手の魔力が収束し、強い光となって拡散する。

「オオオオオオ!?」

 キメラゴーレムはその閃光に思わず両目を手で覆い、膝を着いた。

 同時に手刀を弾いた糸から弾力がなくなっていく。

「はあっ!」

 再び右手に宿した風魔法を手刀に纏わせ、糸を切る。

 糸は弾力もなく、今度こそ完全に切れた。


 今、使った魔法は光魔法の目くらましだ。

 生まれてすぐのキメラゴーレムにとっては、ただ眩しいだけの魔法なんて予想する事すら出来ない。

 ほんの少しだが、時間を稼ぐ事が出来た。

「…」

 すでにキメラゴーレムはシールドバイパーの能力を使っていた。今まで絡みついていた糸は振り回す時は鋼鉄のように強靱で、切られる時は柔軟に受け止める、相反する特性を持っていた。


 シールドバイパーの『攻撃によって性質を変える』特性をキメラゴーレムは意識して使っていた。

 

 だからこそ、目くらましで糸から意識をそらす事で解除させることに成功したのだが。


「やるしかないか…」

 キメラゴーレムを倒すには今の俺の力だけでは足りない。

 

 風魔法でも光魔法でも届かない。


 もっと強い力がいる。


 …あの復讐の騎士の暴力的な力が。



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