番外編 密談
「森ごと吹き飛ばす…それは本当に行うつもりですか?」
「あら、私が嘘を言うとお考えで?」
「まさか…あなた様のお力なら確かに森を吹き飛ばすぐらい簡単な事でしょう。ですが、失礼を承知で忠言させていただきます。」
「あらあら。でも、よろしくて?その言葉に価値がないと私が判断すれば、それがあなたの最期の言葉になりますが。」
「構いません、この命一つで【賢者】がお考え直しいただけるのであれば十分な使い道です。」
「…本当にあなたは私を楽しませてくれますわね。私に忠言出来る人間なんてほとんどいませんわ。」
「身に余るお言葉でございます。では、詳細についてご説明させていただきます。」
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「…以上が忠言の内容でございます。」
「…先日、発見されたあの森の環境でしか生存できないモンスターや薬草の存在は確かに興味を惹かれます…が、それなら採取されたサンプルがあれば良いこと。森を吹き飛ばさない理由にはなりませんわね。」
「…では、もう一つだけよろしいでしょうか。」
「ええ、どうぞ。」
「あの森にはワイズ・フールが住んでおります。」
「!」
「…幸運にもワイズ・フール本人と話す機会がありましたので、無礼を承知でお聞きしたのですが、彼女は強欲の森の【中心エリア】に屋敷を構えているそうです。」
「…【中心エリア】ですか。」
「屋敷とその周囲には気配遮断や存在隠匿の魔法が張り巡らされていて感知する事はほぼ不可能とのことです。攻撃に対してもかなりの対策がされていると。」
「…それで、あなたは何をおっしゃりたいのかしら?」
「私もサティナを預かる身。あなた様の研究についても色々とお噂を耳にしております。」
「………」
「ワイズ・フールの屋敷には研究や資料が保管されています。あなた様の研究にお役立ちになるものも少なくないはず。」
「…【賢者】の私に盗みを行えとおっしゃるのですか?」
「そんなつもりはありません。ですが、二人だけで『話し合い』をして、その結果【賢者】へワイズ・フールが研究を『託す』可能性もあるのではないでしょうか。」
「……」
「二人きりの話し合いなら、些かの口論があっても誰も咎める者はいませんし、何があっても誰にも分かりません。誰かがワイズ・フールを殺害していても…」
「……」
「念のため伝えると、ワイズ・フールは森全体への強力な範囲攻撃を感知した際、屋敷にある研究や資料を破棄する仕掛けをしています。当然ながら屋敷への攻撃もその対象に――――。」
「あなたの目的は何かしら?」
「………目的ですか?」
「ええ。そこまでして、森を守る理由を教えていただけないかしら?」
「……簡単な事ですよ。あなた様に【賢者】の立場があるように私にも立場がある。あの森にはまだまだ利用価値がある。たかが罪人一人のせいで消すにはまだ早い。それだけです。」
「そう。まあいいでしょう。それで納得しましょう。」
「ご理解感謝いたします。ご存じでしょうが、あの森は特殊な魔力の影響で転移系の魔法は発動すら出来ません。加えて空間が歪曲している部分もある為、あなた様でもそれなりに時間がかかるとは思います。」
「お気遣い無く。ゴーレムを使いますから。」
「ご健闘をお祈りしております。」
「ええ、心配しなくても大丈夫ですわ。目的はあくまでも罪人を追う事。そのついでに、彼女と色々な【話し合い】をするかもしれないだけですから。」




