第二話 ありふれた日常
「しっかし、お前は変わり者だな。王都まで行ったのにこの国に帰ってくるなんて。」
久しぶりに会ったのに相変わらずズバズバ言う武器屋のおっちゃんには苦笑するしかなかった。
「権力争いや派閥とか面倒だからね。俺はここで騎士をするよ。」
「もったいねえな、魔法の天才のお前が。」
またなつかしい話だ。
この世界では誰もが当たり前のように魔法を使う為の魔力を持っている。モンスターとの戦いにも使えるし、火をおこしたり、生活にも魔法は必要だ。
俺はたまたま魔力の使い方がうまく、また保有していた魔力量も桁違いだった為、この国の王の推薦で王都へ行く事になったのだ。
王都では色々あったが、自分でもかなり強くなったと思う。
特に限られた人間しか持てない『光魔法』や『神の祝福』まで手に入れた事は大きかった。
十六才でここまでの男もそういないだろう。
「それより早く剣の手入れ頼むよ。」
「おう、任せろ。」
おっちゃんと別れて、俺は約束した川の畔へ向かっていた。
すでに畔には白い服で身を包んだ先客がいた。
「おっそ~い!」
「すま~ん!」
幼なじみのレイへ駆け出す。
伝えるんだ、レイに。
自分の思いを。
この国で幸せな家庭を…
「吹き飛ばせ【竜の咆哮】」
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そして世界は変わり果てた――――。
川も山も人も家も全てが消えた。
「ああああああああああああああああああああああああ!」
誰かが叫んでいた。
その叫びが自分から出ているのだと気づくには時間がかかった。