ゲーム世界
本日2話目投稿
ゲームの中に入るとリアルと殆ど変らない、だが見た事のない風景が並んでいた。
辺りを見渡すと、大きな広場に次々とログインして来たプレイヤーが目に映る。中には俺と同じで始めてログインしただろうプレイヤーも映った。
キョロキョロしていると、見覚えのあるパーツの少年が2人同じく周りを見回していた。
プレイヤーネームを見ると、サンと天貴と書いてあり、約束した2人である事が分かった。
「おーい。サン、天貴俺だ。アウスだ」
俺が声を上げると2人は俺の所まで駆けて来た。
「改めて宜しく。秀秋ことアウスだ」
「こちらこそ宜しく。貴樹こと天貴だよ」
「僕こそ宜しく。晴人ことサンです」
俺の見た目はリアルそのままの顔立ちに、短髪だった髪を少し伸ばし髪と目を青にした。サンもリアルと変わらない見た目だが、緑の髪に紫の瞳のヒューマンに。天貴もリアルと変わらない見た目だが、髪と瞳は金髪碧眼になっていた。なんというか、物語に出て来るエルフの様だ。まあ種族もハーフエルフなのだが。
「アウスはハーフドラゴノイドにしたんだね」
「おう」
サンがプレイヤーネームに一緒に表示される種族を見て俺に確認して来る。それも仕方がないだろう。VRで下手に見た目を変え過ぎると、リアルに支障が出る為、種族特有の変化はない。だが短時間なら問題ない為か、種族進化すると変身できる種族がある。たとえば俺が選んだドラゴノイドや獣人だ。
「そういえば2人はお兄さんとお姉さん、何処で待ち合わせしてるの?」
「兄貴は北門で待ってるってよ」
「奇遇だね。姉さんも北門で待ってるって」
「お兄さんとお姉さん、もしかして知り合いかもね」
サンの問いに俺と天貴が答え、皆で顔をあわせ笑った。
今居るのは始まりの大広場だ。北門は此処から一番近い門で、北に北上すれば着く。
「えーと、北だろ。マップ、マップと」
「マップだとあっちが北だね」
俺がマップ表示を見ていると天貴がある方向を指さした。
俺達3人はマップを見ながら天貴の指した方角へ歩いて行く。ほどなく大広場を抜け街道に出る。
「やっぱりこっちには露天ないね」
「此処は露天禁止だからな。南の通りは凄いらしいけど」
天貴の呟きに俺は調べた事を話す。サンは知らなかったのか、そうなんだと呟きつつ周りをキョロキョロしている。結局のところ俺達は始めて見る景色に興味津々なのだ。
北門に着くと妙にプレイヤーが多くざわついていた。
周りから漏れ聞こえる話を聞くところによると、トップクランの1つ『合縁奇縁』のクランリーダーとサブリーダーが居るそうだ。
クランとはプレイヤーが3人以上集まって作る集団の事だ。
周りの声を拾ってみると「移動砲台」「獣王」と言う声が聞こえた。
俺は獣王と言う声にもしやという思いが沸いた。兄貴は半獣人を選び、この1年で獣人になっている。それだけでなく電脳の天才なのだ。
電脳の天才とはVRが一般化して分かった事だが、脳の処理が異様に早く、電脳との親和性が生まれつき良い者の事を指す。他には俺の様な電脳の秀才と言う者も居る。電脳の秀才は文武や芸術にある程度秀でている者を指す。スポーツや算盤などある一定の動きができると、脳の処理が上がり電脳の処理速度が上がった者の事を言う。
天貴も何か思う事があるのか動き出した。
俺と天貴でプレイヤーを掻き分け先頭に向かう。サンは周りに謝りつつ俺たちに続いてやって来た。
先頭にたどり着くと1組の男女が居た。女性の方は癖のない長い金髪に緑の瞳、何処か天貴に似た美人のエルフだった。男の方はリアルと変わらない顔立ちに髪を銀髪に、瞳を青にした兄貴だ。
俺達が如何しようか悩んでいる内に男女が話しかけて来た。
「そこに居るのは弟の天貴であっているわよね」
「隣に居るのはアウスだな」
「「兄貴(姉さん)」」
エルフのお姉さんが天貴に、兄貴が俺に確認の声をかけて来た。それに声の被さる俺と天貴。
「此処から離れましょうか。プレイヤーも随分集まって来てしまったし」
「そうだな。行くぞお前達」
「「「は、はい」」」
エルフのお姉さんの言葉に俺達を促す兄貴。ハモって返事をしてしまった俺達は思う、プレイヤーが集まったのはあんた等のせいじゃないか! と。
「東門に向かいましょう。あ、自己紹介がまだね。私は天貴の姉で天月よ」
「よし、次は俺だ。アウスの兄のユウだ、宜しく」
どこに向かっているのか分からない俺たちに、天月さんが今向かっている方向を教えてくれた。
天月さん、兄貴と自己紹介をし俺達の番になったので、3人で誰から自己紹介するかアイコンタクトで相談する。
「俺はユウの弟のアウスです。宜しくお願いします」
「天月の弟の天貴です。宜しくお願いします」
「僕はアウスと天貴の友人でサンと言います。どうぞ宜しくお願いします」
「そう硬くならないでゲームなのだから。もっとフレンドリーにね」
俺、天貴、サンの順番で自己紹介すると、天月さんが苦笑して力を抜いてと言ってくれた。その間ニヤニヤしている兄貴の脛に蹴りを入れたが、簡単に交わされた。ムカつく。
「3人はどんなスキル構成にしたの? 全部でなくて良いから教えてくれないかしら。アドバイスするにも知らないとできないから。パーティーチャットに切り替えましょうか、パーティーに申請するわね」
天月さんからパーティー申請が来て俺達は天月さんのパーティーに入った。
「問題ないです。俺は【剣術Ⅰ】【盾術Ⅰ】【ステップⅠ】【ダッシュⅠ】【料理Ⅰ】です」
「俺は【火魔法Ⅰ】【魔力操作Ⅰ】【ステップⅠ】【ジャンプⅠ】【ダッシュⅠ】です」
「僕は【召喚術Ⅰ】【付与術Ⅰ】【光魔法Ⅰ】【隠蔽Ⅰ】【ダッシュⅠ】です」
自己紹介の順と同じく順番にスキルを話して行く俺達。それにしても2人は魔法職よりか、その割には別のスキルも取っているが。
「なるほど、アウスは剣士系の職業目指しているのか。料理はリアルでも旨いし期待してるぜ」
兄貴が俺のスキル構成を聞き簡単に俺の着きたいジョブを割り出す。ジョブはレベル20から持っているスキル構成で選べる職業の事だったはずだ。
料理に関してはリアルでの俺の趣味だ。容姿も良く、基本的に何でもできる兄貴が苦手な物が家事全般。昔兄貴にコンプレックスを抱いている時に練習していた物が、何時の間にか趣味になってしまった。
「天貴は魔法職を目指すのね。でもそのスキル構成だと移動しながら使うのかしら、プレイヤースキルが居るわよ。サン君は召喚術師か付与術師志望かしらね。魔法系スキル伸ばすなら魔力操作は取っておいた方が良いわよ」
「は、はい。召喚術師志望です。魔力操作は道場で取ろうと思います」
へー、サンは召喚術師志望か、元々ソロで動くつもりだったもんな。でも召喚術師結構難しいって聞くけどな。
「アウス料理スキル上げのクエストで美味しい場所教えるわね。そこに着いたら私からの紹介で来たって言ってね」
「ありがとう、後で行ってみる」
「天月さんとユウさんのHPとMP、SPが見えないのですがどうしてでしょう?」
「ああ、それはなレベルの差があるからだ」
サンがステータスで一部見えない所がある事を聞くと、兄貴が答えた。何レベル差か忘れたけど、レベル差があるとモンスターの場合レベルが見えなくなるんだよな。
ぺちゃくちゃ話しながら歩いていると東門に着いた。
「そうだ、これを渡しておくわね」
そう言って天月さんが俺達3人にピザとリンゴジュースをくれた。ザ・ディファレント・ミソロジーは満腹度と水分量が設定されており、それが0になると自然回復しなくなる。その他にも料理スキルで作られた料理には、バフ効果の着いている物もある。
「まず、1対Ⅰでモンスターと戦って貰いましょうか。危なくなったら助けるから、まずやってみてね」
「「「はい」」」
連携の前に個人の技術の確認の為と説明を受け1対1で戦う事になった。
順番はジャンケンでサン、俺、天貴の順番に決まった。
次話は明日の0時投稿です。




