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何か呪文唱えたら杖からジャガイモ出てきたんですけど

作者: 迷い猫

「あっどうも神でーす。

いや本当に申し訳ないんだけどー。

実は昨日神友と賭け事してて私負けちゃってねー。

んでその私を負かした相手が僧侶とか魔法使いとか生み出した神だったの。

それで腹いせに杖使い達の中から何人か選んでイタズラする事にしたから。

その一人君になっちゃった。てへ。

じゃよろしくね。」


ーーなんか凄い変な夢を見た気がする。

がそんな事は気にしていられない。

今日は勇者達と魔王を倒しに行く日だ。

魔法使いとしての俺の役目は勇者を守り

後方から援護すること。

気を引き締めないといけない。

ちなみに勇者達とは昼の12時に俺の家で待ち合わせとなっている。

現在時刻は9時。まだ3時間ある。


「気分転換にその辺のゴブリンでも狩っとくか」


戦闘用の服に着替え杖を持ち俺は外に出た。そしてゴブリンがよく出没する草原へ足を運んだ。

ここら辺は草がかなり伸びてしまっていてゴブリンが隠れるのには充分すぎる場所だ。

ゴブリン自体はそれ程強くないのだが集団で襲われればただではすまない。


ーー気をつけないと。


細心の注意を払いながら

俺はゴブリンを探す。


ガサガサ

ーーん。物音がする。

居た!ゴブリンだ!

しかも俺の存在に気づいていない!

チャンスだ!


俺は杖を振りかざし呪文を唱えた。


ゴロン


ーーん…?

なんか足元に何か落ちた気がするぞ。

これは…ジャガイモ…?

なんでこんなところにジャガイモが?

まさか昨日の夢…!?


そんな訳はない。ありえない。

誰が信じるというのだ。

呪文唱えたら杖からジャガイモが出てきたなんて。


「も…もう一回!」


俺は再び呪文を唱えた。


ゴロン


「ジャガイモだあああああ!!!!?」


「ウガガ?」


ーーしまった気付かれた!このなんとも言えない状況に思わず大声を出してしまった!

というより誰でも出すだろ!

杖からジャガイモが出てきてんだぞ!

ふざけんな!

だが今はそんな事を気にしている場合じゃない。とりあえずここから逃げないと。


俺は足元に転がっていたジャガイモを手に取りゴブリンへ投げつけた。そしてゴブリンが怯んだ隙を見て全力で逃げた。


ーーはぁはぁ。疲れた。

魔法使いのプライドなどもうなかった。

だって迷いもなくジャガイモぶん投げたからな俺。

ゴブリンはどう思ったのだろうか。

「うわ、こいつなんか投げてきた爆弾!?

え…ジャガイモや。」

とでも思ったのだろうか。

というかジャガイモ知ってるのかゴブリンって。


ってそんな事はどうでも良い!

これからどうすんだ俺!現在時刻は11時!

勇者あと1時間でくるぞ!


「とりあえず飯食おう。腹が減っては戦はできぬだ。なんかあったかなぁ」


冷蔵庫を漁ると結構食材があった。

人参。玉ねぎ。牛もも肉。ピーマン。

カレーのルーもあった。

じゃあカレーにしようかな。

ん?カレー?


俺は


呪文を唱えた。


ゴロンっと音を立てジャガイモがでてきた。


「役立ったわこの杖」


パクパクムシャムシャ


嘘だろ。何だこのジャガイモは。


「美味すぎる…!!」


凄く甘くて濃厚なのだがクセがない。

こんな美味しいジャガイモ今まで食べた事がない。涙が出てきた。本当に美味い。

なんかもう全部どうでも良くなる。

魔王なんてどうでも良い。


いやそれは良くない。

いくらジャガイモが美味しいからと魔王が侵略していい理由にはならない。


ピンポーン

やばいついに来た。

勇者だ…なんて説明しよう。


「おーい!迎えにきたよ!!」


とりあえずドア開けよう。


ガチャ


「よ、よう」


「どしたの顔色悪いけど体調でも悪いの?」


「い、いや別に体調は悪くない」


「じゃあ早く行こう!

この後僧侶さんと弓使い君の家にも行かないといけないんだ。」


「いやあのそのことなんですが…」


「なんで急に敬語なの」


俺は深呼吸をし、心を落ち着かせて言った。


「実は俺呪文唱えても杖からジャガイモしか出なくなったの」


「ちょっと意味がわからなかったから

もう一回言ってくれるかな。」


「実は俺呪文唱えても杖からジャガイモしか出なくなったの」


「はいいいいいい!!!!!?」


ーーうんそうなるよね。

君のその反応は間違ってない。

間違ってないよ。

きっと俺もそうなっているだろうから。

でも俺は泣きながら土下座しながら頼む。


「こんな俺でも魔王討伐に役立つかな」


「いや流石に無理。ジャガイモで敵倒せないし」


「ジャガイモ投げてゴブリン怯ませる事はできたんだけど」


「いや知らないよ。

もう魔法使い…いやジャガイモ使い君との契約は破棄だ」


バタン


ーー見捨てられた。

俺は見捨てられたジャガイモだ。

ミステラレータ・ジャガイモ1世の気持ちが今良くわかった。いや誰だそれは。

しかも勇者にジャガイモ使い君とか言われた

凄い傷付いた。でも言い返せなかった。

明日からどうやって生活して行こう。

契約は切られてしまったのでもう給料は入らない。俺に出せるのはジャガイモだけ。

どうしたものか。


「まぁ考えても仕方ないよな…

気晴らしに海でも行くか」


ザザーン


ーー波の音が俺の心を癒してくれる。

ジャガイモしか出せない俺の存在を肯定してくれているかのようだ。海は器がデカイのだろう。あのちんけな勇者とは違う。


「あんたそこで何してんの?」


「え?」


声がした方向へ振り向くとそこには勇者と冒険に出かけたはずの僧侶がいた。


「なんでここに僧侶が…」


「それは後で説明する。あんたどうしたの?」


「いや実は…」


俺はジャガイモ事情を全て説明した。


「あんたもだったんだ」


「うん」


ーーん。今なんて言った。

あんた「も」って言わなかった今。

俺の聞き間違えか?ジャガイモが杖から出るようになったら耳がおかしくなるのか?

いやそんなわけはない。


「今あんたもって言わなかった?」


「言ったけど?」


「ええええええええええええ!!!!!!!!!?」


「急にでっかい声だすな!うっさい!」


「いやそれは無理だろ!

驚かないほうがおかしいって!

ってことは…僧侶も杖からジャガイモが出るようになったってことだよな…?」


「いや状況は一緒なのだけれど私はジャガイモじゃない」


「な、何が出るんだ?」


「紅ショウガ」


「ぶっ」


「何笑ってんのよ!

あんたジャガイモでしょうが!

似たようなものよ!」


「いやだってよりによって紅ショウガて」


「紅ショウガはカレーのお供に最適なもの。ジャガイモより輝いているとしか言いようがないわ」


「待て!紅ショウガがジャガイモに勝つなんてあり得ないだろ!ジャガイモはメインにもなるから絶対紅ショウガより上だ!

それに…

呪文唱えたら杖から紅ショウガがポロッと落ちてくるとか笑う自信しかない」


「うっさい黙れ!

紅ショウガだってね食べ物よ!」


「いやなにその言い返し方!

完全に負け認めてるよねそれ!」


紅ショウガとジャガイモは

どちらが上かという

言い争いは30分にも及び

結局紅ショウガとジャガイモは互角という事で休戦を迎えた。


「あのさこれからの事で一つ案があるんだけど」


「なにジャガイモ野郎」


「誰がジャガイモ野郎だ!

話を戻す。この杖から出たジャガイモって凄い美味しかったんだ」


「そうなんだジャガイモ伯爵」


「もうつっこまねーぞ。

だから多分僧侶の出す紅ショウガも凄い美味しいんだよな。さっき言ってたよな僧侶

カレーのお供に最適だと」


「うん」


「カレーの必須食材と言えばジャガイモ

そしてお供に紅ショウガ。

この二つが揃ってるなら絶対美味しいカレーが出来るはずだと思うんだ」


「つまり何が言いたいわけ?」


「2人でカレー店を作るってのはどうだ」


「嫌だ」


「いやなんでだよ!!!

じゃあ何か他に案があるってのか?」


「…ない」


「じゃあやるしかないだろ!」


「うんわかった」


「よし」


半ば強引だったのだけれど俺は僧侶とカレー店を作る事になった。



ーーーーーーーーーそれから数年後


ある街にはとても美味しいカレー店があるという。その店の名物はジャガイモと紅ショウガらしく、どこの店にも負けてないらしい。


「お父さんそろそろジャガイモの秘密教えてくれたっていいでしょ!僕知りたいの!」


「わかったよ」


「やったー!けどなんで杖なんか持ってるの…?」


「美味しいジャガイモはこの杖で生まれるんだ」


「どういうこと?」


「まぁ見てろ!ハッ」


ゴロン


「なんか呪文唱えたら杖からジャガイモ出てきたんですけどーー!?」


おしまい。

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― 新着の感想 ―
[一言] ぷすっと笑ってしまうようなお話でした。 でも、ジャガイモなら色々使えるからある意味良いかもです。僧侶は何故か加工品なんですね……紅しょうが……って使いにくっ‼
[良い点] 気軽に読める作品。杖とジャガイモを組み合わせる発想が面白い。 評価入れときますね。
[良い点] 「神のいたずら」に巻き込まれた身 ふつうは神に復讐誓ったりするものですが 勇者との魔王退治の旅に付き合わなくて済む良い機会だったかもしれません 魔王を倒すのも世のためになるのでしょうけど …
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