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朝、流れ星を見たんだ  作者: 瀬田
7/10

終わりは既に始まっていた

「修也ぁ~!」


 大翔がテニスラケットを放り投げ、修也にガバッと抱きつく。修也はそれを半ば乱暴に突き放したものの、その顔は珍しく生き生きとしていて、喜びに満ち溢れていた。


「やったね、これで俺たち、ダブルスで関東一位だよ!」


 相手がいなくなったコートの上で、大翔はぴょんぴょんと飛び跳ねている。その試合を見学していた人々は、見事に高校生男子の関東大会を優勝した二人に、盛大な拍手を送った。


「まさか、ここまで来れるなんてね。」

「だよねー。でも俺たちなら、全国優勝も夢じゃないかも!」

「そうだな。」


 どちらからともなく、二人はハイタッチを交わす。その直後、大翔は右手で口を抑えてコホコホと咳き込んだ。


「おい…大丈夫か?」


 小さな肩を揺らして咳をする大翔の背中を、修也が軽くさする。


「うん、へーきへーき。」


 大翔はその手をさっと後ろに回すと、ニコッと微笑んだ。成長しても、その笑顔はまだ無邪気な子供そのもので、きゅっと細めた目がなんとも言えずに愛らしい。

 しかし修也はまだ心配そうに、大翔の背中をさすっている。


「そうか? 最近咳が多い気が…。」

「えー、なんだろ? アレルギーか何かかな?」


 大翔が首をこくっとかしげた時、「表彰式を行いますので、選手のみなさんは三コートに集まってください。」というアナウンスが聞こえた。


「行くぞ。」

「えっ、俺トイレ行きたいんだけど。」

「なんで今なんだよ…早くして。」

「うん、先行ってて。」


 修也と大翔は、別々の方向へと走って行く。その時、修也は気づかなかった。大翔がさっき口を抑えた右手に、わずかな血が付いていることに――――。

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