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夕食

随分遅れてしまいました。

楽しみに待っていただいている方々には本当に申し訳ないと思っております。

 花の間は今までのような一面白い部屋とは違い、花と言うだけあってか暖色が目立った。

 そしてその真ん中には謁見の間で見たときとは違う、もっと軽く動きやすそうな衣装に身を包んだ女王様がいた。呑気に手など振っている。

「え! 女王様、なんで……」

「私が招待したんです、当然でしょう。それより早く夕食をとってしまいましょう。コック長にどやされてしまうわ」

 私たちの驚愕など全く気にせずに女王様は微笑んでいる。

「しかし、私たちはあくまでも一般市民ですよ。同席するなんて……」

 そんなことを言っているうちに、二人の執事が女王様から一席分空けた位置のイスを二つひき、座るよう促してきた。

 ここまで来ると断るほうが失礼だろう、軽くため息をついて、私は座ることにした。

 リペラも納得はしていないようだったが、渋々というように席についた。

 そんな様子を、女王様は心底楽しそうに微笑んで見ていた。

「セイノア、お願い」

「はい」

 女王様の後ろに控えていたセイノアは上手の、目立たないように設計された扉に消える。余談だが、流石王家に仕える使用人といったところか、そんな何気ない動作も優美だった。……女王様は時々ガサツな面が垣間見えるのでよりそう思う。

 すぐにセイノアは皿を持った三人のコックを連れて戻ってきた。

 コック達は私達の前に皿を置いていく。

 目の前に置かれた料理は名前こそ分からないが、とても綺麗で美味しそうだった。

「うわ………」

 リペラもまた、だいぶ驚いているようだ。

「本当に……、こんな豪華な夕食に呼んでいただき光栄です、女王様」

「いいのよ。私が貴方達と話したくて一方的に呼びつけた、ただの我儘なんだから」

 そこまで話して女王様の表情がふっと悲しげなものに変わった。

「それと………」

「?」

 女王様は何かを言おうとして、しかし言うのをためらっている、そんな風に目線を泳がせている。

「どうしたんですか? 女王様」

「……私、さっきも話した通り友達が少なくて……、小説なんかでよくある様な“普通の友達”っていうのに憧れているんだけど、えっと………」

「……」

 何を言いたいのか、いまいち真意がつかめない。私達は続きを待った。

「正直、とても言いにくいのだけど、……折角友達になつたのだから名前で呼んでほしいなって……」

「……あぁ」

 私は少し拍子抜けした。どうせまたいい忘れか、はたまた無理難題を押し付けてくるのかとばかり。

「それだけですか?」

「え? そ、そうね」

 私はニッコリと笑った。

「別にそれくらいのことだったら喜んでやらせて頂きますよ」

 リペラをちらりと見る。

「何よ。……何それって私も含まれてるの?」

「え、入ってないとでも思ってたの?」

 微笑みながらそう言ってやると、思い切り溜息をつかれたが私は気にしない。

 目線を女王様に向けた途端、重大なことに気が付いた。

「あ、じゃあ、女王様のお名前を教えて下さい」

「あら、そういえば言ってなかったわね」

 スッと表情が“女王”に変わる。

わたくしはこのミゼラート国第二十三代女王セイミル・ディラルーシュ。現国王ロドル・ディラルーシュの妻です。申し遅れましたこと、心よりお詫び申し上げます」

 軽く頭を下げ、上げた時には今までと変わらない優しい表情になっていた。どうやら名乗るときにはそういうスイッチが入ってしまうらしい。

「そ、そんな、お詫びなんて……」

「私達にとっては国民がいてこその私達なのだから、いいのよ。商人とお客様みたいな感じ。それよりも食べながら話を続けましょうよ」

「そうですね……じゃあ、セイミル様と呼びますので」

 既に食べるために紙ナプキンを膝に置いていたセイミルは驚いた表情でこちらを見てきた。

 私は気付いていないフリをして、紙ナプキンを広げながらリペラにもそれを促した。

「え、折角だから呼び捨てがいいのだけど……」

 この言葉には私より先にリペラが反応した。反応の速さからして、恐らく予想していたのだろう。

「セイミル様はあくまでも女王なんですからだめですよ?」

「そう、よね……」

 リペラの強めの言葉に押されたようで、黙ってしまった。

 空気が重い。それに耐えられなくて私は話を無理に変えた。

「こんなに美味しそうな夕食、早く食べないと損ですよ」

 セイミルのメンタルは結構強かったようで、すぐに返してきた。

「そうね、ここのコックは私自ら選んで雇ったコックだから、味は保証するわよ」

 その言葉の通り、夕食は今まで食べたことがないほどの美味しさだった。さっきの空気の重さが嘘かと思うほど、会話もそれなりに弾んでいたので、満足度はかなり高かった。


 城内の装飾といい、女王様といい、ここでの出来事は一生の思い出になるだろう。


女王様の登場回数が増えてきたので、だいぶキャラが掴めてきたのではないかと思います。

セイミルはもうちょっと先まで出てくるので、結構重要人物だったり。

そして、自分で結構気に入っているキャラはセイノアですね。

普段の二人の会話なんかを聞いてみたいですよ。女王様が楽しげに話すことについて、セイノアはお茶の準備をしつつ割りとにこやかに、しかし女王様を見ずに相づち打って、お茶ができたら話の途中でも「女王様、本日は○○ティーです」なんて言ってそう。いや、ただの妄そ、想像ですよ?

こんな完璧な女性に会ってみたいですね(遠い目)


誤字脱字等気づいた点ありましたらご連絡下さい。

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