女王の謁見
今回はだいぶ短いです。
何分時間がないので。
「こちらです」
案内された先は当然のことながら謁見の間。この先には女王様がいるという。
兵士が扉に手をかけた。
ガチャリ
扉が徐々に開いていく。
開いた先に見えたのは、大きく真っ白な世界だった。
廊下や控えの間も十分に白いのだが、謁見の間はもっと白い。世界から色がなくなってしまったのかと錯覚するほどだ。
しかし、そんな白い世界にも色はあるようで、紅く綺麗な絨毯が扉からまっすぐ先にのびている。
その先にいたのは、真っ白いフワフワのドレスに身を包んだ女王様だった。
「まあ、予想してなかったわけじゃないけど……」
全体的に白すぎだろ、と思う。女王様まで真っ白だ。
とりあえず、二人は絨毯の上を腰が引き気味になりながらも歩いた。
目の端に動くものが映ったのでそちらを見る。ベージュのフード付きローブ、だろうか。それが数人並んでいる。フードを深くかぶっているので、表情までは読み取れない。
女王様の綺麗な顔がしっかりと見えてきた頃、横に控えていた兵士が止まるよう合図をしてきたので、私はリぺラを肘で軽く突き止まった。
どうしていいのか分からずに、またちらりと兵士を見るとしゃがむよう合図を出している。私はそれに従って片足を立てた状態でしゃがんだ。
私の斜め後ろにリペラも同じようにしゃがんだ。
「女王様。こちらが例の娘にございます」
「ありがとう」
女王様の声はとても優しそうな、なおかつ威厳のある美しい声だった。見た目は二十歳くらいに見える。
玉座に座っていた女王様は、いきなり立ち上がり、こちらに歩いてきた。三四歩離れたところで漸く立ち止まり、話しかけてきた。
「貴方、名前は?」
そう聞かれてなんと答えていいのか分からず、少し間が開いてしまう。
「……私には記憶が無いので、今はレイラと名乗っております」
「可愛らしい名前ね」
女王様はニッコリと笑った。とても可愛らしい。
「後ろにいるのはお友達?」
「リペラ・フィールと申します。両親はパン屋を営んでおります」
「毎日は楽しい?」
「はい、お陰様で両親とも元気でやっています」
女王様は満足したようにまた笑う。よく笑うお方だ。
「本当ならもっと話を聞きたいのだけれど、二人はなぜ呼ばれたのか分からずに来たんだものね。早く本題に入らないと」
少し淋しげに笑ったようにも見えたが、すぐに真剣な表情になった。
「まず、結論から言いましょう。レイラ、貴方はこの世界の人間ではないわ。他の世界の人間なのよ」