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風鈴と俺  作者: 雲母あお


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1/1

風鈴と俺  ー風に吹かれてー

隣の家の風鈴がうるさい。

短冊の代わりに、A5サイズの絵のついた紙がぶら下がり、優美とは言い難い音をたてている。

深夜帰宅して、壊れたエアコンを睨みつつ、窓を開ける。

文句を言う勇気もなく、誰か言ってくれることを期待しつつ、電気を消して布団に入る。


ガラガラン


それにしてもひどい音だ。

自分の許容以上の大きさのものをぶら下げているから、風鈴も辛いのかもしれない。

そう考えると、急に風鈴に同情の気持ちが湧いてきた。


今日のことが頭をよぎる。

「これ頼むわ!」

そんな簡単な言葉で、人に仕事を押し付けて帰った同僚。

そのままにして帰りたい。

でも机に座りなおし、気づけば日にちが変わっていた。


今まさにガラガラ音を立てている風鈴が、まるで自分の代わりに泣き叫んでいるかのような気持ちになった。


辛いよな。

自分の許容を超えたものを持たされるのって。


次の休日、文具店に出かけた。


風鈴の家の前を通ると、おばあちゃんが庭仕事をしていた。

「こんにちは。素敵な風鈴ですね。」

思わず声をかけた。

「ありがとう。でも短冊が取れてしまって。孫がいらないって置いていったシールをつけてみたんだけど、変な音になっちゃって。」

おばあちゃんは、寂しそうな愛おしそうな顔で風鈴を見つめている。 

「あの、これ……」

手に持っていたものを、そっと見せる。

すると、

「まあ!素敵!それをつけてくださるの?」

「よ、よろしければ。」

口ごもりながら答えると、

「嬉しいわ!」

ぱあっと笑顔になり嬉しそうに言ってくれた。

俺は、シールをそっと外し、手に持っていた手作りの短冊につけかえた。


チリリン


軽快な涼やかな音色が響く。

「今までで1番いい音!ありがとう!」


いつもしない行動。

俺の勝手な思いで作ったのに、笑顔でありがとうと言ってもらえた喜び。


次の日。

「頼むわ!」

また同僚が俺の机に仕事を置こうとしている。


その時、

チリリン

あの風鈴の音が聞こえた気がして、思わず椅子から腰をあげた。

「どうした?急に立ち上がって。」

俺は俯いたまま、

「ごめん。今日はごめん。」

「用事あるのか?」

たくさん頷いてみた。

「分かった。」

「え?」

ぱっと顔をあげると、

「お疲れ。」

そう言って、同僚は自分の机に戻っていった。

「お疲れ様。」


いつもしない行動。

断れた。


チリリン


あの風鈴の音が聞こえる。

もうすぐ俺の手作りの短冊をぶら下げて、愛嬌よく心地いい音を奏でる風鈴が見えてくる。


自然と歩くスピードがあがった。

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