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1-8 魔将の誕生3
グロ表現があります。苦手な人は読み飛ばして下さい。
森の風が泣いた。
エルフの姫が天に祈りを捧げたその瞬間、祈りは呻きに変わる。
艷やかな金の髪は黒く染まり、剛毛が全身を覆い尽くす。
柔らかな耳は尖り、額が裂けて角がせり出す。
「森が……呼んでる……違う、これは……」
涎を垂らしながらつぶやくその声は低く、獣の咆哮へと変わっていく。
しなやかな肢体は膨張し、爪が地を裂き、牙が月を噛む。
その瞳は闇を見透すようにエメラルドの輝きを放つ。
森の守護者として生きた魂は、自然の復讐者――“原始の災厄”へと堕ちた。
その名は獣姫。
優しき調和の象徴は、血と怒りに支配された黒き野獣となった。
「お前達には新たな四魔将となって人類を蹂躙してもらう」
魔王は冷たく言い放つ。凱旋を夢見ていた者たちに、それは死より残酷な宣告だった。
「人類の始末はお前達に任せよう、私には他になすべきことがある」
「但し、殲滅する必要は無い。どうせ奴らはすぐに増えるから、適当に間引いておけ」
魔王は言い捨てると城の上を見上げ、勇者との密約を思い出す。
既に歯車は狂い始めていた。




