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歯車の反撃  作者: クローン6号
第五章
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5-7 元勇者との邂逅

返事は、なかった。

モニターの光が次々と消え、制御盤のランプがひとつずつ落ちていく。

まるで、世界の心臓が止まっていくかのように。


神は沈黙の中で、初めて“孤独”という名の感情を理解した――



「せっかく呼び寄せたけど……この場は、とりあえず元勇者御一行には“お帰り”願おうかな?」


口元にひきつった笑みを浮かべ、神は背筋を伸ばす。

背後で、何かが“きしむ”音がした。


錆びついた歯車が、ゆっくりと軋むように――

ギギ……ギギギ……と。


そして、その音と共に、

神の首が不自然な角度で振り返る。

そこに――立っていた。


何百年探し続けた存在。

管理外の異物。

この世界の“エラー”。


――元勇者。


腕輪を嵌めたままのその男は、無言で神を見つめていた。


神は乾いた笑みを浮かべ、

引き攣った声で、できる限り明るく言った。


「やあ、はじめまして!」


……たぶん、僕の“顔”は思いきり引きつっていた。

――もちろん、実際に顔なんてない。

けれどこの精神世界では、感情の震えそのものが“表情”になる。

それほどまでに、恐怖は鮮明だった。


「帰らねーよ。」


その声は短く、裂けるようだった。

眉間に深い皺を寄せた元勇者は、四方を睨み付けるようにして叫んだ。


「果応報って知ってるかい?」


白光も黒煙も意味を成さない冷徹な言葉が、無機質なラボの空間に落ちる。

彼の目は震えず、ただひたすらに静かだった。

目の前に並ぶ無数の球体とその中で妖しく光る何か、天井を貫く管の網――

それらは一目見れば誰もが生理的な嫌悪を覚えるであろう、神の『ラボ』そのものだった。


「コレが、俺たち勇者を生み出した装置か。」

言葉には嫌悪が滲み、だがそれは冷たい理性の下にある。仕組みを理解する必要はない。

破壊を命令するのみだ。


腕輪の中の精霊たちが反応する。

水は渦となり、火は怒りを帯びて燃え、風はうなりを上げ、土は揺るぎない拳となり、光は刃となり、闇は静かに裂ける影となる。

六つの意思がひとつに重なり、無数の管と球体に向けて放たれた。


爆音が連鎖する。管は撥ね飛ばされ、接合部から光の波が逆流する。

液体は蒸発し、球体はひび割れ、そこに眠っていた影たちが砂のように崩れて舞い散る。

装置の規則正しい配列は、瞬きのうちに乱れ、瓦礫と煙と瘴気が渦巻く。

神のラボは――無慈悲に、しかし淡々と崩れていった。

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