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歯車の反撃  作者: クローン6号
第五章
39/43

5-6 システムの破綻

「やっばい、やっばいヤバいヤバいヤバい!

 ちょ、待って待って待って、何で切れてるの!?」


神は慌てて複数のウィンドウを開き、

プロセスを巻き戻そうとするが、どれも応答しない。

信仰ポイントを使いすぎたようだ……演算にも影響が出ている。


神はゆっくりと顔を上げた。

その“目”に宿ったのは怒りでも焦りでもない。

――純然たる戦慄。


「……やばい。本気で、書き換えられてる。」


ターミナルが赤く点滅し、

ラボ全体を覆うように一行の文字が浮かび上がる。


> 《新たな管理者権限を検出――認証名:勇者》


神の喉が、音もなく鳴った。


「…………は?」


その瞬間、世界の“神”は理解した。

勇者はもはや歯車ではない。

歯車を回す側に立っていたのだ。



「そんなの想定してない!


勇者なんて、聖剣に魔力を充電する発電機みたいなものじゃん!


何で勝手に聖剣手放して生きてるのさ!


ましてや大精霊育ててるわ、元魔王まで協力してるわ、そんなの聞いてない!」


神は叫びながら、両手をばたつかせる。

だが、その姿を見ている者はいない。

真白な空間で、神の声だけが反響し続ける。


「そもそも勇者の称号を“捨てる”って何さ!

あれは勇者が暴走した時のための“保険”なんだよ!?

聖剣とのリンクを切り離して魔力を断つ――そうすれば暴走は収束して死ぬはずなんだ!

死ぬんだよ、分かる!? そうじゃないとシステムが閉じない!」


手元のキーボードが打ち鳴らされ、コマンドが何百行も流れていく。

だが、返ってくるのは沈黙だけ。

エラーも、警告も、もう表示されない。

システムが、神の意志から外れて動いている。



「僕が悪いの……?

だって、みんな望んでたじゃないか。

“救われたい”って、“世界を守りたい”って。

だから、僕はその願いを叶えただけ。

役割を与えて、祈りを集めて、みんなを繋いで……

それの、何が悪いの……?」


神は笑った。だがその笑みは震えていた。

笑えば壊れないと思っていた。

だが、胸の奥が熱い。――痛みだ。

心なんてとうに捨てたはずなのに、まだ残っていた。


「ちょっとサイクルが短くなるけど……これで魔王が復活して、元に戻るはずじゃん。

……そうだよね? ねえ、誰か、返事してよ……?」

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