表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歯車の反撃  作者: クローン6号
第二章
13/32

2-3 火山

俺は旅の途中、水の妖精を見つけた。

それをきっかけに、魔王の言葉を思い出し魔力の安定を優先させることにした。

どうせ当ての無い旅なら目標があった方かいい。


その黒々とした岩山に近づくにつれ、森は徐々にその息を絶たれた。

緑は痩せ、木々はねじれたまま朽ち、やがて灰と化していく。

代わりに現れたのは、鋭く裂けた岩の群れ。

地の痛みがそのまま地表に噴き出したような、荒涼たる景色だった。


歩を進めるたび、足裏にじんわりと熱が伝わる。

大地の鼓動が、静かに俺の体温を奪っていく。

――ここは、火山地帯だ。


水の精霊は俺の魔力を吸収して少し元気になったようだが、流石にこの環境は辛いようだ。それでも水の精霊は俺を守ろうとするかのように「水の膜」を与えてくれた。

その加護は今も、肌を湿らせるように身体を包んでいる。

……だが、ここではそれが裏目に出た。

水気が熱を孕み、空気は蒸し、呼吸すら重くなる。

それでも俺は、精霊の好意だと思って耐えるしかなかった。


ふと、陽炎の中に揺らめく光が見えた。

いる――。

火の魔力。

それも、限界まで衰えた微かな残滓。

岩の隙間で、今にも消えようとしている。

俺はそっと手を伸ばす。

その赤い光は燃え尽きる寸前の燠火のように震え、やがて掌に降りてきた。


「……やっぱり、俺にはこれだな」


熱はなく、むしろ少しだけ温かかった。

次の瞬間、光はまるで安堵するように腕輪へと吸い込まれ、消える。


残されたのは、鈍く燻る赤い魔石。

それは、まるで長い眠りの中で夢を見るように、微かに脈動していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ