断罪イベント365ー第59回 新商品を断罪イベントで使ってみた件
こんにちは、黒幕ラボのクラリです。
本日のラボ活動は、いつもの「裏会議」でも「ざまぁ戦略会議」でもありません。
……なんと、新商品の実地テストです!
前回、ラボで誕生した新アイテム――『言葉を風に乗せる香水 ~Whispering Breeze~』。
吹きかけた相手の“心の声”が、風に乗ってふと漏れ出すという、とても繊細で、とても危険な香水。
今回は、その香水を断罪イベント会場で使用してみることにしました。ふふ。
「風向き、南西。観衆席に流れるわね。」
Bが記録帳を閉じた。
断罪広場の最上段――黒幕ラボの特別観覧席では、クラリ嬢を中心にメンバーが静かに陣取っている。
今日の目的はただ一つ。
**新商品『言葉を風に乗せる香水 〜Whispering Breeze〜』の実地テスト。**
「宣伝も兼ねて、王子の断罪で試してみましょう」
紅茶を手に、クラリ嬢は優雅に言い放った。
アリステアが頷く。風属性の魔法師、今回の現場担当だ。
「風は完璧。……吹かせますか?」
「ええ。王子の口、軽くしてあげて。」
---
断罪イベントが始まった。
広場の壇上で、王子が威厳たっぷりに声を張り上げる。
「この者、王家への忠誠を欠き――!」
その瞬間。
アリステアが香水瓶を軽く傾け、ミストをひと吹き。
青りんごと白茶の香りが、風に乗って舞い上がる。
Bが小声で報告した。
「香気拡散率、上昇中。対象、吸入確認。」
クラリ嬢がにやりと笑う。
「よし、始まるわ。」
---
風がひと筋、王子のマントを揺らした。
そして、彼の口が……勝手に動いた。
「……ほんとは俺が悪いんだけどな……」
観衆がどよめく。
クラリ嬢の紅茶カップが静かに揺れた。
「もう一度、言ってくれる?」
とクラリ嬢が呟くと、まるで応えるように風が回る。
「彼女の方が頭も良くて、人気もあって……正直、ムカついてたんだよ!」
観衆「えええーーっ!!?」
アリステアが楽しそうに髪をかきあげる。
「やはり、風は嘘を運ばないですね。」
「素晴らしいわ。真実暴露キャンペーンの広告映像に使えるわね。」
「ナレーション、私が担当しましょうか?」とB。
「お願い。低音ボイスで“本音、吹きこぼれる”って感じで。」
---
壇上の王子は必死に口を押さえた。
だが、風鈴のようなチャームが瓶の首で鳴るたび、
彼の口から次々と“真実”が滑り出る。
「……浮気も二回したけど……別に悪気は……!」
「……母上の宝石を勝手に……あれは誕生日プレゼント代……!」
観衆、静寂。
鳥すら鳴かない。
クラリ嬢が静かに立ち上がり、
「――風向き、完璧ね」と一言。
---
その日の夜、ラボにて。
「結果報告。香水の効果、暴露率100%。副作用:観衆も若干本音漏れ。」
「つまり、宣伝効果は上々ね。」
クラリ嬢は満足げに笑い、紅茶を掲げた。
「さあ、次は“沈黙を強制するお香”を作りましょう。
断罪イベント、音声事故を防ぐために。」
「それ……もう事件では?」
とBが小さくため息をついた。
――だが、黒幕ラボの商品開発は止まらない。
風が、また新たな秘密を運んでくる限り。
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m




