第七話 真実
「なっ!? 何故、ルージオ様が!?」
「噓っ!? なんで!?」
ジョンとルルナは驚愕すると、後退りをする。つい先程まではジョンとルルナが、この場において絶対的な支配者だった。しかしそれは俺が正体を明かしたことにより崩壊したのだ。伯爵令息と公爵令息では立場が違う。加えて、彼らは散々悪行を俺の前で口にしている。焦るのも無理はないだろう。何せ、彼らが罪から逃れる術は一つもないのだ。
「何も驚くことはありません。事前にジョン・ベンガー伯爵令息とルルナ・ドロン男爵令嬢が共謀し、セリーヌ・ドレン子爵令嬢を断罪する計画は知っていました。その悪事を挫く為に、カールソン男爵にも協力して貰ったということです」
俺は淡々と状況を説明する。そう俺の目的は、セリーヌの断罪を阻止することだ。その為に、俺は猛勉強の上に飛び級で学院を事前に卒業をした。そしてこの誕生パーティーに忍び込む手段として身分を偽り、カールソン男爵令息を演じていたのだ。
「……っ!? ですが……証拠はあるのですか? いくらルージオ様でも、冤罪は許されませんよ?」
「そうですよ! 私はセリーヌ様に虐められていたのです! 信じてください! ルージオ様!」
これだけの悪事を企てる二人である。ジョンとルルナは自分たちの非を認めることはしない。逆に俺を脅すジョン、ルルナは甘えた声でウソ泣きを始めた。
「何か勘違いをしているようですが、証拠なら勿論ありますよ」
「っ!?」
先ずはジョンから黙らせることにする。俺はベストのポケットから畳まれた紙を取り出した。
「セリーヌ・ドレン子爵令嬢の成績についてですが、全て彼女の実力です。教員から事前に試験用紙を買収したという件に関しては、ジョン・ベンガー伯爵令息。貴方の方ですね? 試験用紙を売った教員は捕え、証言も取れています」
「……っ!? なっ!?」
俺は紙を広げると、ジョンの悪事を読み上げる。その内容にジョンは狼狽するが、俺は読むのを止めない。無実の人を貶めようとしたのだ。自身の罪を自覚するべきである。
「それから……ルルナ・ドロン男爵令嬢。 セリーヌ・ドレン子爵令嬢から人気のない所で、暴言を吐かれた。噴水に突き飛ばされたそうですが全て噓ですよ?」
「ち、違います! 私は本当にセリーヌ様に……」
次にルルナに関して確認をする。しかし愚かにも演技を続けようとした。
「言い訳は結構です。ドレン子爵令嬢は、放課後や昼休みは図書館で勉強をしています。噴水がある広場とは真逆の方向です」
「……っ! で、ですが……」
突き飛ばされた噴水がある場所と、セリーヌが日々過ごす場所は真逆の位置にある。
「人気のない場所とは具体的に何処ですか? 何時何処で、暴言を吐かれたのですか? 念密な調査を行いますので教えていただけますか? ルルナ・ドロン男爵令嬢?」
これ以上、言い訳を聞く気はない。ルルナが虐められたと噓を吐いているのは知っている。だから事前に調査はしてあるのだ。そしてセリーヌが虐めたという事実が無いことは、既に確認済みである。その上でルルナに罵声を浴びせられた場所を訊ねた。
「……くっ?! そ、それは……」
ルルナは悔しそうに顔を歪ませると、口を閉じる。
「加えて、……セリーヌ・ドレン子爵令嬢が『金遣いが荒く、贅沢三昧の浪費家』というのは噓ですよ。彼女は勤勉であり、その成果が首席という成績です。加えてドレン子爵家は研究に資金を使い、その知識を我が国に貢献してくれています。素晴らしい方々なのですよ」
静かになった所で、俺は彼女にかけられた噂について言及する。勿論、彼らがそのことを知って考えを改めるとは思えないが、言わない訳にはいられない。
「……ぐっ!? ですが!! ……」
この期に及んでジョンが食い下がる。
「最後に……贅を凝らしたパーティーに、ジョン・ベンガー伯爵令息とルルナ・ドロン男爵令嬢の豪華な衣装。『金遣いが荒く、贅沢三昧の浪費家』とは貴方方のことですよ。全て調べがついています」
親であるベンガー伯爵の資金を糧に、学院で好き勝手をするジョン。そしてそのジョンに取り入ると、贅沢三昧なルルナ。『金遣いが荒く、贅沢三昧の浪費家』とは彼らのことである。決して、真面目で勤勉なセリーヌに囁いて良い噂ではない。セリーヌが『金遣いが荒く、贅沢三昧の浪費家』という噂を流したのも彼らであることは調べがついているのだ。
「……っ、うぁ……終わった……」
「そ……そんなっ……」
俺の言葉に観念したのか、ジョンとルルナは床に座り込んだ。そんな二人を俺は冷たく見下ろした。




