第四話 裏切り②
「……は……?」
「えっ……?」
俺の発言に場が静まり返る。ビリーとアンドレの間抜けな声が響く。如何やら現状を理解することが出来ていないようだ。
「聞こえませんでしたか? もう一度言いましょう。彼らの証言は、全て真っ赤な噓です」
啞然とする彼に分かり易い様に、俺は説明を加えた。先程よりも声量を上げているのは、親切心である。
「なっ!? 何を言っている!? カールソン!!」
「そうだぞ! カールソン、自分が何を言っているのか分かっているのか!?」
彼らは焦った表情で俺を問い詰める。それはそうだろう。セリーヌを貶める為の証言をしたというのに、その内の一人が裏切ったのだ。その僅かな綻びから、自分の立場が危うくなる可能性がある。そして俺の裏切りは、悪事の主であるジョンとルルナの機嫌を損ねることになるだろう。その為に、ビリーとアンドレは必死なのである。
「ええ、勿論です」
俺は彼らの焦りを嘲笑うかのように、笑顔で頷いてみせた。
「……っ!? 裏切るつもりか!?」
「一体なにを考えている!?」
ビリーとアンドレは俺の言葉に、更に顔色を悪くする。此処まで話しておいても、未だに俺の考えが分からないようだ。何でも人に答えを求めるのは良くない。少しは自分たちで考えてほしいものである。しかし俺のイレギュラーな状態に、冷静な思考を保つことができないのだ。
「『裏切る』? 嗚呼、貴方方からすればそうですね……。しかし元々、貴方たちの仲間になった覚えはありませんよ?」
俺は彼らが知らない事実を告げた。
ある目的があり、俺はセリーヌの悪行を証言する立場としてこの場に居る。逆に言えば、この立場が無ければ、この誕生パーティーに潜入することは難しい。何せ、この誕生パーティーはセリーヌを断罪する為の会場である。学院の中立を保つ生徒や、セリーヌを味方する者は除外されているのだ。ジョンとルルナに味方だと思われている者しか出席することができない。故に、俺はジョンやルルナの味方であるフリをしていた。だがそれも、終わりである。
「……っ!? このっ! ジョン様っ! ルルナ様! カールソンの事は気にしないでください! 頭が変な奴なのです!」
「そうです! カールソンは見てなくとも、我々がセリーヌの悪行を目撃しております!!」
ビリーとアンドレは、俺が何か目的を持ち発言したことを漸く理解した。そして彼らはジョンとルルナに弁解を告げる。ビリーとアンドレの頭の中にあるのは、自身の保身だ。伯爵令息のジョンの不敬を買えば、学院での立場は無くなる。陰湿な虐めが待っているのだ。加えて、ジョンが溺愛しているルルナの機嫌を損ねることも同義である。
ジョンが学院で大きな顔をすることができているのは、父親であるベンガー伯爵の資金が豊富であるからだ。その資金を利用し、学園で好き勝手をしている。更に言えば、この学年には伯爵以上の令息が居ないことも拍車をかけているのだ。
全くもって風通しの悪い学院だ。




