7.俺のいるべき場所
(この魔法を、ここで使うことになるなんて思いもしなかったよ……)
掌で壁に触れ、魔力を流す。
練られた漆黒の魔力が俺の掌から壁へと流れ、部屋全体へと広がっていく。
これは探知魔法だ。
この魔法は何か探したいものがあるときに使われる魔法。まさか盗聴器を探すために使うことになるとは思っていなかったけど。
目を瞑り、意識を集中させる。
「っ……!」
見つけた。
……いや、見つけてしまったと言うべきだろうか。
探知魔法で探していたもの――盗聴器が引っかかった。
1つや2つではない。
この部屋の中だけでも5個以上。
琴音はやっぱり嘘をついていなかった。
義理とはいえ、自分の母にそんなことをされていた事実に泣きそうになってしまう。
この盗聴器を母が仕掛けたという確証はないけど、ほぼ確実に母の仕業だろう。
(確証を得るには……)
自室を出て、リビングへと戻る。
母さんはまだ起きており、ソファで寛いでいた。
心臓の鼓動が早く、うるさく鳴り始める。
母さんに近づいていく。
「あら、どうしたの? 寝るんじゃなかった?」
不思議そうに俺に声を掛けてきた。
「いや、なんか眠れなくて」
「そうなの? ホットミルク飲む?」
「うん、飲もうかな」
「用意するからちょっと待ってね」
「うん。あ、母さんちょっと止まって」
「ん?」
俺は母さんの頭に手を触れる。
「髪の毛に埃が付いてるから取るね」
「あら、ありがとう」
極細に魔力を練り込み、母さんの頭へと流す。
これが確証を得るための魔法だ。これで真実が分かる。
母さんと琴音のどちらを信じるべきなのか、これではっきりする。
(見える……!)
母さんの記憶が俺の脳内に魔力を通って流れ込んできた。
そう、これは人の記憶を覗き見る魔法だ。家族に使うとは思ってなかったし、本当は使いたくなかった。
でも、真実を知るにはこの魔法が1番手っ取り早かった。
母さんの記憶の中から母さんと父さんの会話が聞こえてくる。
『ねえ、あの子はいつになったらいなくなるの?』
『まあ、もう少しだろう』
『結婚したらあの子を家から追い出すって言ってたじゃない』
辛い真実……。
目を逸らしたくなる。
『琴音ちゃんも協力してくれているのだし、もうすぐ出ていくだろう』
『それもそうね。琴音は私に逆らえないから渋々協力してくれたわ』
これが、真実というわけか。
母さんだけじゃなかった。
母さんと父さんの2人はグルだったんだ。
2人とも俺をこの家から追い出したかったんだな。
1番身近な家族にまで裏切られた真実に絶望しそうになったが、希望は1つだけあった。
母さんと父さんはもう信じることは出来ないだろう。
だけど、俺にはもう1人、家族がいる。
真実がはっきりとしたことで琴音の言葉も真実だったことが明らかになったわけだ。母さんの記憶を見た限りでは琴音も被害者の様なものだった。
母さんに俺を家から追い出す手助けを強制させられていたのだろう。
涙が俺の頬を伝い、落ちた。
「あら、急に泣いちゃってどうしたの?」
母さんが心配そうに俺の顔を覗き込む。
どうせそれも『心配しているフリ』をしているだけなんだろ?
悲しみと同時に怒りが込み上げてくるが、俺はその感情を抑え込み、敢えて普通に振舞う。
「いや、ごめん。何でもないよ。だけど、ちょっと外で涼んでくる」
「ええ、わかったわ」
俺は適当な理由をつけて、外に出た。
もちろん涼む為ではない。
真実を知ったことで、俺は決心したのだ。
もう、この家を出よう、と。
母さんだけならこの家に残ったかもしれない。
でも、父さんまで俺を追い出そうとしていたのだ。
これ以上この家に残る必要も無いし、彼らも俺には出て行ってほしいのだから、お互いにwin-winだろう。
組織の拠点に戻ろう。
これからは俺もメンバーのみんなと一緒に暮らそう。
「行くか」
俺は走ってダンジョンに潜り、拠点へと足を向かわせた。
「今までありがとう。さようなら」
足を止めずに、そう呟いた。
♢
1度来た場所だから道順は覚えていたのですぐに拠点に着いた。
魔力を足に纏わせて走ったので普通の人間とは比べ物にならないほどの速さで走ったからでもある。
「みんな起きてるかな」
そう呟きながらドアノブに手をかけた瞬間。
背後から気配を感じ、振り返る。
「お兄ちゃん……?」
琴音だった。
「琴音」
「その名前で呼ぶってことは、家族のことで話したいことがあるんだよね?」
「……ああ」
「わかった。ここじゃ他のメンバーに聞かれるかもしれないから私の部屋で話そ」
俺は琴音に連れられて琴音の部屋に入った。
その間、他の部屋も通ったりしたが、明かりは消えており他のメンバーはすでに眠りについてしまったようだった。
これからここに住むことは明日伝えよう。
部屋に着くと、琴音は座布団を用意してくれた。
俺はそこに腰下ろした。
「お兄ちゃん……」
「あぁ、今から話すからちょっと待って」
「今のお兄ちゃん、酷い顔してるよ。相当辛いことがあったんだね」
「…………うん」
兄として琴音の前で情けない姿は見せてはいけないはずなのに、涙が止まらなくなってしまう。
「辛かったよね。今は思いっきり泣いていいから」
琴音はそう言い、俺のことを優しく抱きしめてくれた。
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