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6.帰る義兄の背を眺めて

「もうこんな時間か」


 メンバーのみんなと色々話をしながら遊んでいるうちに気が付けば、かなり時間が経っていたらしい。時計を見るまで全く気が付かなかった。

 それほどまでにこの場所が俺にとって心地よいものだったのだろう。


「もう帰る?」


 エナは寂しそうにそう言った。


「お前は帰らないのか?」


 小声でエナの耳元で囁いた。

 まあ、同じタイミングで帰ったら俺たちが兄妹だとバレてしまう可能性はあるけど。


「今日はここに残るよ」

「そうか」


 こんなに広い拠点なんだ。

 全員分の部屋もちゃんとあるのだろう。

 なんか合宿みたいでいいな。部活入ったことないから知らんけど。


「ミデン様もう帰るの~?」


 ペティが俺とエナ間に割り込み、腕に抱きついてそう言った。

 エナは不満そうに頬をぷくーっと膨らませた。


「もう時間も遅いしもう帰ろうと思ってる」

「ええ~、ミデン様もここに住めばいいのに~」


 俺が住む……?

 ここに……?


 この楽園に……?


 というか、他のみんなはこの拠点に偶に泊るとかではなくて、住んでいる者も多いのだろうか。

 たしかに、一緒に住む方が一緒に行動しやすいのか。


 まあ、俺の場合、今日は帰宅して確認しないといけないことがあるから今日から住むことは出来ないな。


「今日は帰ってやらないといけないことがあるから、今日は無理だな」

「じゃあ、明日から住もっ」

「考えておくよ」


 俺は立ち上がり、皆に帰ることを伝える。


「今日は楽しませてくれた事、感謝する。明日もまた、闇の中でお前たちと逢えることを願う」


 心の中で「決まったぁ」とガッツポーズをしながら拠点を出た。

 皆も俺との時間が楽しかったようで引き留めようとするものが大勢いたが幹部たちのお陰もあり、すんなりと拠点を出ることに成功した。


「ちょっと待ってお兄ちゃんっ!」

「ここでその呼び方は……!」


 背後を振り向くと、そこにはエナがいた。

 ここでその呼び方はダメだろう、と思い注意しようと思ったがそこにエナ以外の姿はなかったので今回は良しとした。


「お兄ちゃんに言っておかないと、って思って」

「何を?」


 エナの真剣な眼差しを見て、俺は今はエナじゃなくて琴音として話していることに気づいた。


「家で盗聴器を見つけてもそれを取ったりしないでね。お母さんに気づかれちゃうから。あと、見つけても何も言わない方が良いと思う」

「なるほどな。気を付けるよ」

「…………」


 何か言いたげだが、何も言わずに心配そうな表情で俺のことを見つめている。


「じゃあ、また明日な」


 俺はそれだけ言って、家へと向かい始めた。


 ♢


「抜け駆けなんていい度胸ですわね、エナ」


 ミデンを見送り、拠点に戻ったエナを待ち構えていたのはディオンだった。

 紫色の縦ロールを揺らしながら、腕を組みながら立っている。


「別に抜け駆けじゃ……」

「他のみんながミデン様を追いかけないように止めていたというのに、エナは1人でミデン様のとこに走って行っちゃったじゃない。これは抜け駆けではなくて?」

「ただ、夜道は暗いからお気をつけてと伝えただけです」

「ふーん、本当かしら」

「本当よ」


 ディオンは疑いに満ちた視線でエナを睨んだ。


「はあ、今回だけよ」

「許してくれるの?」

「だから、今回だけね。エナも幹部の1人なんだからその自覚を持ちなさいな」

「……はい」


 今回は許してくれたようだ。

 エナは安堵し、胸をなでおろした。


「なに安堵しているの? 私は許したけど、他のみんなも同じとは限らないわよ」

「え……」


 その瞬間。

 約50人のメンバーが一斉にエナの周りを取り囲んだ。


「1人だけズルいぞ~!」

「そうだそうだ~」

「私もミデン様ともっとお近づきになりたぁい」

「抜け駆けを許すなー!」


 幹部だけでなく全員に言いたい放題言われてしまう。

 みんなこの数時間でミデンのことをかなり気に入っているようだった。


「……ごめん」


 エナは謝罪の言葉を口にしながらも、「私のお兄ちゃんだぞ!」と心の中で呟いた。


 ♢


「ただいま」


 帰宅した俺はもしかしたら父さんと母さんがもう寝ているかもしれないと思い、足音を出来るだけ抑えて、家に入った。


「あら、翔悟くん遅かったね。おかえり」


 リビングに入ると、母さんがまだ起きていた。


「うん、少し遅くなっちゃった。次からはもう少し早く帰れるようにするね」

「友達と遊んでたの?」

「まあ、そんなところかな」


 今の俺は普段通りに受け答えが出来ているだろうか。

 不自然なことは言っていないだろうか。


「そういえば、琴音もまだ帰ってきてないんだけど知らない?」

「いや、分からないな」

「そっか。まあ、子供じゃないんだし、大丈夫よね」

「……うん。それじゃ、少し疲れたからもう寝るね」

「そうね。私ももう少ししたら寝るわ」

「それじゃ、おやすみなさい」

「うん、おやすみ」


 俺は母さんとの話を切り上げて自室に向かった。

 このまま話し続けていると口を滑らせてしまうような気がしたから。


(とりあえず、探してみるか)


 部屋の鍵を閉めてから、盗聴器を探し始めた。

 盗聴器を探しているところを母さんに見られてしまったら、マズいからな。



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― 新着の感想 ―
ここまでは読みました。 新しい母親は、毒親なんでしょうか? でも、だからといって娘に義理の息子への罵倒を指示するとか。 ちょっと意味が分からないですね。 謎です。
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