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5.闇に潜む拠点

「ここは……」


 歩くこと約15分。

 俺たちはようやく拠点のある階層に着いた。


 月明かりが俺たちを照らしている。


 うん……?

 ちょっと待って、ダンジョン内に月……?


「どうかなさいましたか、ミデン様?」


 ディオンが不思議そうな顔で縦ロールの髪先をくるくると触りながら俺の顔を覗き込んでいた。


「いや、あの月は誰がやったんだ?」


 5人は顔を見合わせ、エナ以外の4人がエナを指差した。

 なるほど、あれはエナの魔法で作り出した『月を再現したもの』というわけか。

 ふっ、さすがは我が義妹だ。陰の組織の拠点がどういう場所にあるべきかを理解しているようだ。


 周りは暗闇。

 その中心に建つ拠点に月明かりを照らす。

 カッコいいに決まっているじゃないか。


 それに、この階層には組織のメンバー以外が立ち入れないように魔法がかけられているようだった。さすがの腕前だ。

 メンバー以外の人が簡単に足を踏み入れることが出来たら陰の組織の拠点感がなくなっちゃうもんね。


「よくやったエナ。あの月はよくできている」

「ありがとうございます、ミデン様」


 最初は俺たちが兄妹であることをサラッと他の4人に言ってしまうのではないかと心配していたが、全く問題ないようだ。

 今はちゃんと組織の主とメンバーという立場で話せている。


 他の4人も気づいてはいないだろう。


「ね、ミデン様」

「っ……! な、なんだ?」


 突然ペティが耳元で囁いてきた。

 思わず変な声が出そうになった。組織の主としてカッコよく振舞わなくては。

 …………いい匂いがした。


「ここからはアタシが案内するよ」

「「「ずるい!!!」」」


 ペティは小さな声で話していたが、他の4人に聞こえていたようで猛反発を食らっていた。


「ええ~、いいじゃん」

「「「ダメ!!!」」」


 うーん、このままだと一向に拠点の中に入らせてもらえないな。

 ここは平等に決めてもらおう。


「ジャンケンで決めたらどうだ」

「「「たしかに」」」


 全員、俺の提案を即受け入れてくれた。


「ジャーンケーン……」


 女同士の真剣な戦い(ジャンケン)の結果は一度で決まった。


「ほーら、やっぱアタシがミデン様を案内するのに相応しいってことだよね~」

「「「くっ……」」」


 勝者はペティだった。

 つまり、結局はペティが案内することになった訳である。

 他の4人は悔しそうに自分の手を睨みつけていた。


「それじゃ、行こっミデン様♪」


 ペティは俺の腕にギュッと抱きついた。


 ♢


「ここがアタシたちの拠点!」


 拠点の前に辿り着いた。

 さすがに圧倒されそうになる。

 まるで城だ。


 まあ、メンバーが約50人もいるのならこのくらいの大きさがあった方が良いのかもな。


「まずは訓練場~」


 一番最初に案内されたのは、訓練場だった。

 色々な種類の訓練器具が置かれている。


「いつもここで訓練を?」

「ここで訓練だったり模擬戦だったりすることもあれば、ダンジョン内の魔物と戦ったりすることもあるよ」

「なるほど。いいなここ」

「これからはミデン様も使っていいからね~」

「それは助かる」


 俺は魔物との戦闘ばかりしてきたからな。こういう魔物と戦う以外の訓練もたまにはいいかもしれないな。


「次は、ダイニングルーム!」

 

 次に案内されたのはダイニングルームだったのだが……。


 これが……ダイニング……?

 俺が知っているダイニングの広さじゃない。広すぎるんだけど。

 まあ、よく考えれば当たり前ではあるか。


 50人が一緒に食事をするとなると必然的に広いダイニングになるか。

 でもやっぱ広い。


 50人もいれば毎日の食事もパーティーみたいな感じだろうな。


「みんなで食事は楽しそうだな」

「うん! いつも楽しいよ!」


 ペティはとびっきりの笑顔を見せてくれた。


「次は~、ここ!」

「ここは…………」


 ペティは何故、俺をここに連れてきたのだろう。

 この部屋は俺に案内する必要はないはず……。


「ここは、アタシとミデン様の寝室♡」

「「「ちがぁぁぁあああああああう!!!」」」


 ペティは4人から一斉に頭を叩かれた。

 さすがギャル。何を言い出すかわかったもんじゃないな。

 危うくペティの言葉を信じかけるところだった。

 ふぅ、アブナイアブナイ。


 あれはペティの冗談……だよな?


 そう思いつつも少しだけ、冗談じゃなくて本当だったらいいのにと思う俺もいた。

 だけど、エナが真顔で俺をジーっと見つめてくるので口には出さなかった。


 俺はその後も色々な部屋を案内され、ついに最後の部屋に来た。


「それじゃ、最後の部屋、リビングルームオープン!」


 そう言うと、ペティは勢いよくリビングルームのドアを開けた。


 すると、そこには大勢の組織のメンバーだと思われる少女たちがいた。

 今までほとんど気配を感じなかったな。

 幹部以外のメンバーでもこれほどまでに上手く気配を消せるのか。


 ここは主として、カッコよく決めなくては。


「我こそが新たな主、ミデンである。これから、お前らと共に闇に満ちた世界を突き進みし者だ!」


 俺がそう言い放つと、皆が一斉に俺のほうへと駆け寄ってきた。


「ついに私たちの主が見つかったのですね!」

「一生ついて行きますミデン様!」

「あぁ~、カッコいい~!」


 普通だったら中二病だと馬鹿にされる場面だが、さすがはこの組織のメンバーだ。

 貶すどころか歓声を上げている。

 やはり、ここにいる者は皆、我が同志ということだな。


「みんな気持ちは分かるけど静かに~」


 そう言ってその場を収めたのは、エナだった。

 皆もその声を聞いて、騒ぐのをやめた。


「ミデン様より直々にご挨拶があった通り、ミデン様が私たちの新たな主です。これからは共に行動することも多くなるでしょう。ですが、ミデン様にご迷惑をお掛けしないように!」

「「「承知いたしました!」」」


 その後は俺と彼女たちはリビングルームにいることもあり、テレビゲームなどをして親睦を深めていった。

 まあ、ゲームでも主としての格を落とさないために全勝しておいた。




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