プロローグ第7/8話「夜桜、拡散される - 逃亡劇のカメラワーク」
✅ 逃亡〜撮影開始
——逃げろ。今はそれしかない。
夜桜は地面を蹴り、木々の間を縫うように走った。
背後からは、さっきのクモとは違う不穏な足音。何かが確実にこっちを追ってきている——。
「チッ、いつになったら落ち着けるんだよ……」
一瞬、背後を振り向く。だが、その時だった——。
——ピコーン!
《実況開始》
「逃げる夜桜! その行方は!? 追跡者は何者なのか!?」
「……おい、マジかよ……」
夜桜が叫ぶより先に、実況AI・響のハイテンションな声が響き渡った。
視界の端では、宙に浮くカメラドローンが夜桜をロックオンしている。
「いやいや、録るなよ!? 今この状況、隠密行動中だぞ!?」
だが、実況は止まらない。
むしろ、盛り上げる気満々で「動画配信モード」に移行し始めた。
《動画自動投稿予約中》
《タグ:「夜桜」「逃亡」「異世界事件」「伝説の管理人」》
「予約してんじゃねぇぇぇ!!!」
✅ 監督・蕾 vs 逃げる夜桜
「——クソ、今度は何だ!?」
夜桜が森を駆け抜ける中、地面が揺れた。
瞬間、**巨大なタランチュラ、さっきのやつより大きい**が木々をなぎ倒して現れる。
「また蜘蛛かよ?更にデカい、親か!? 速い!? 口から糸出しそう!?」
その時だった。
(蕾が監督指揮を取り、撮影チームが完璧に動く)
「各員、配置につきなさい。チャンス到来!全員、全力でいくわよ!」
「おーー!!!」
撮影チームが一斉に叫ぶ。その統率の取れた動きは、まるでプロフェッショナルの映画クルー。
監督:蕾
→ すべての撮影演出を指示
「夜桜、最初のカットは**《ダイブ&回避》**よ。スローモーション入れるから、かっこよく避けて。」
カメラ担当:杏
→ 映像アングル&カメラワークを調整
「カメラOK! 今の木の破片が舞うシーン、最高! 夜桜、もうちょい左!」
戦況分析:千景
→ 蠍の動きをリアルタイム分析し、夜桜に指示
「夜桜、カメラのために無駄に動かないで。右に3メートルダッシュ、その後《スライディング回避》」
音響効果:悠
→ 効果音&BGMをつける
「緊迫感MAXの音楽用意した! 『ドォォォン!!』『ババババン!』」
実況:響
→ 全力で実況
「さあ! ついに夜桜の**《死の逃亡劇》**が始まったぁぁぁ!! 強敵な蠍に追い詰められた彼は、この危機をどう切り抜けるのか!? 乞うご期待!!!」
「待て待て待てぇぇぇぇぇ!!! 俺の命がかかってんだぞ!?」
✅ 逃亡劇スタート!
地形アクション①:崖を駆け登る!
「くそっ……!! こんな地形で逃げられるかよ!!」
蠍の巨大なハサミが、夜桜の足元を切り裂く。
だが、そこに蕾の指示が飛ぶ——。
「夜桜、今すぐ崖を駆け上がって! シルエット撮影いくわ!」
「いや、俺はカメラ映えのために逃げてんじゃねぇぇ!!」
だが、逃げなきゃ死ぬ。
夜桜は猛ダッシュで崖を駆け登った!
「おおおおお!! 夜桜、まるで忍者のように壁を駆け上がる!!!」(実況・響)
地形アクション②:空中回転回避!
崖を登りきった夜桜。だが、その先には空中へ伸びる枝しかない。
「夜桜、カメラのために空中回転回避お願い!」(監督・蕾)
「そんな高度なアクションできるかぁぁぁ!!」
だが、蜘蛛がすぐ背後に迫る。糸を吹き出してくる。
「くっそぉぉぉぉ!!!」
夜桜は勢いよくジャンプし、枝を蹴って空中回転!!
「きたああああああ!!! これこそまさにハリウッド級!!!」(実況・響)
地形アクション③:巨大湖を超えて最終決戦へ!
目の前に広がる巨大な湖。
「夜桜、ここで最終カットいくわ!」(監督・蕾)
「だからぁぁぁぁ!!!」
夜桜は湖へとダイブ!
その直後、蠍が毒液を発射!!!
水面が毒で染まり、夜桜はギリギリで水中を潜る。
「水中撮影カット最高!!!」(カメラ担当・杏)
映像についての会議が開かれていた。
「音響もここで**『ブクブク……ズゥゥン!!』** って感じで追加しよう!」(音響・悠)
「おい、俺が溺れてる間に何やってんだぁぁぁ!!!?」
✅ 動画拡散、夜桜の伝説始動!
撮影は大成功。夜桜の命がけの逃亡劇は、即座に樹介掲示板8chに投稿された。
最初は、誰も気にしていなかった。だが——。
《謎の映像が流出》
「なんだこれwww」
「逃げるヤツ、実況するヤツ、カオスw」
「ってか、この映像、どこから撮ってんの?」
スレッドは瞬く間に伸びていく。
そして——
《夜桜=樹介8ch管理人説》
「これ、もしかしてあの伝説の管理人の映像じゃね?」
「ガチならやべぇ」
「このスレ、夜桜が見てる可能性あるぞwww」
夜桜は掲示板を見つめながら、静かに呟いた。
「……これは、とんでもないものを生み出してしまったんじゃねぇか?」
——《樹介掲示板8ch》に、新たな時代が始まる。
次回、プロローグ第8/8話幕間「管理者って何だった?」