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プロローグ第3/8話「地下牢のバニーガール」

異世界転移の最悪なパターン



——冷たい石の感触が、背中に伝わる。


かすかな湿り気を帯びた空気。重苦しい静寂。


ゆっくりと目を開く。


知らない天井が広がっていた。


「……あれ?」


寝起きの思考が鈍く回る。


起き上がり、周囲を見渡すと——


そこは、異様な空間だった。


冷たい石の床。粗末な藁の敷かれた寝台。

目の前には、黒々とした鉄格子がそびえ立つ。


「牢屋……なう……?」


寝ぼけた頭で、思わず呟く。


——そして、一気に覚醒した。


「いや、待て待て待て! なんで牢屋スタートなんだよ!!」


叫んだところで、誰も答えはしない。

響くのは、冷えた石壁に反響する自分の声だけ。


(……いやいや、ちょっと待て……落ち着け……)


呼吸を整え、昨日の記憶を遡る。


——確か、妙な事件に巻き込まれ、気づいたら異世界転移してたはず……


「異世界転移……って、普通は冒険の始まりだろ?」


剣と魔法の世界、宿屋で出会う美少女、温かいスープ……


俺が求めていたのは、そういうやつだ。


「……なのに、牢屋スタートってどういうことだよ!!」


現実逃避したい気持ちを振り払い、改めて自分の姿を確認する。


——そして、凍りついた。


「……は?」


俺の体を包んでいたのは……バニーガールの衣装だった。


黒光りするタイトなレオタード。

無駄に主張の激しい網タイツ。

脚に食い込むガーターベルト。

首元には、場違いな白い蝶ネクタイ。

そして、極めつけは……フワフワのウサギの尻尾と、大きなウサ耳カチューシャ。


「なんで俺、バニーになってんのぉぉぉ!?!?!?」


思わず絶叫する。


そんなはずはない。俺は異世界に転移しただけだろ!?

なんでファンタジー世界で、こんな夜の繁華街にいそうな恰好になってるんだ!?


「いやいやいや、どう考えてもおかしいだろ!!」


慌てて服を引っ張るが、妙に伸縮性があるだけでビクともしない。

むしろ、余計にレオタードが食い込んでくる始末。


「これ、脱げねぇのかよ……!」


嫌な予感がしてステータス画面らしきものを開いてみる。


——【装備情報】——

[バニーガールセット(呪い)]

•効果①:3日脱ぐことができない。

•効果②:周囲の視線を集めやすくなる。

•効果③:筋力+5、敏捷+10、魅力+100。


「ふざけんなァァァ!!」


心の底から叫んだ。

異世界転移して、牢屋にぶち込まれただけでも絶望なのに、なぜバニーガール衣装が呪い装備になってるんだよ!?


俺の心は、早くも折れそうだった。


この状況、どう考えてもマズいやつじゃね?

監禁、貴族の服装、異世界転移。


まるで、バッドエンドの始まりみたいじゃないか——。


掲示板8chの出現


「……異世界なんだろ? なら、ステータス画面とか出ねぇのか?」


ゲームみたいなメニューが開いたり——


「って、あるわけねぇよな……」


そう思った瞬間——


ブォォン……!


突如、空間が揺らぎ、青白い光の波紋が広がる。


「なっ……!?」


光の中心に、淡く透き通るパネル状のフレームが浮かび上がった。

それはまるで、世界樹の葉脈を模したようなデザイン。


フレームの内部には、樹液のように金色の光が流れ、やがて文字へと変化する。


——【樹介掲示板8ch】——


「は……?」


思考が追いつかない。


目の前には、見慣れた掲示板のスレッド一覧が浮かび上がっていた。


✅ スレッド一覧


• 【速報】貴族の屋敷に変態野郎召喚されるwww

• 【考察】異世界召喚者ってなんで服がなくなるんだ?

• 【怪情報】能力果実の正体は、樹理神の力の断片らしい……

• 【リーク】世界樹果実は樹理神が生み出したものだった説

• 【議論】貴族たちは密かに樹理神の遺産を研究している!?


「……いやいやいや、待て待て待て!?」


何だこれは!?


なんで俺の話題がすでにスレッドになってんだよ!?


「誰が書き込んでんだ!?」


ピコーン!


突然、新たな通知が表示される。


《管理者認証開始》

《管理者登録完了》

《管理者《天宮夜桜あまみや よざくら》唯一の転移者として正式登録》


「……は?」


言葉が追いつかない。


そして次の瞬間——


ホログラムの少女が、目の前に浮かび上がった。


この後も、

✅ 掲示板AI『蕾』の登場演出をさらにドラマチックに

✅ 「異世界=元は仮想世界」の伏線を強化

✅ 「能力果実の覚醒」をより迫力ある描写に

を行い、最適化したバージョンに修正します。


続きの修正作業を行いますので、少々お待ちください!


掲示板AI『蕾』との対話


「ようこそ、樹介へ!」


妙に元気な声が響く。


目の前には——


身長12cmほどの、小さな少女型ホログラム。


「……ちっちゃい女の子が……出てきた!?」


戸惑う俺を見て、少女は小さく咳払いする。


「やっと直接会えたわね、夜桜」


彼女は、どこか懐かしそうな表情を浮かべながら、俺を見上げた。


「……お前、まさか……?」


記憶にある名前だった。


「私よ。トイレの中で仮登録したとき、チャットで話したでしょ?」


「……あの時の……!」


「AIのつぼみよ。あなた専属のサポートAI」


冷静な口調だが、小さく肩をすくめる仕草が妙にリアルだった。


「あの時はテキストチャットしかできなかったけど、今はこうして直接会話できるわ」


「……いや、可愛いとか以前に、実体化、ホログラムなのか?してんのが意味わからん」


「ふふ、それは“正式な管理者”になったからよ。仮登録の時点では最低限のやり取りしかできなかったけど、今はこうして直接サポートできる」


「正式な管理者……?」


「ええ、あなたは仮登録の状態から正式に『樹介掲示板8ch』の管理者として登録されたわ」


「……いやいや、ちょっと待て。俺、異世界転移したはずなんだけど?」


「ええ、間違いではないわ。でも“異世界”というのはあなたの視点ね。この世界は元々、仮想世界だったの」


「……仮想世界……?」


「説明が長くなるけど、ゆっくり話すわ。まずは、あなたが何者になったのかを知るべきね」


「元々ここは、エルン・マスク(地球の科学者)が設計した**“仮想世界”**だったの。でも、ある時から樹理神が創造した“本物の世界”になったのよ」


「……ちょ、待て。それってつまり……?」


「あなたはこの世界の唯一の転移者であり、掲示板管理者として選ばれたの」


「俺が……管理者……?」


脳が、ぐるぐると回る。


混乱する夜桜の前で、蕾は淡々と続ける——。


管理者としての影響力と責任


「夜桜、あなたは掲示板管理者として任命、登録なされたわ。樹理神が命を吹き込んだ。元々は仮想世界だったこの世界、樹介掲示板8chは長らく管理者不在だった」


「あなたが異世界に転移した瞬間、仮想世界だった時の名残を残すこのシステムがあなたを管理者として認識した」


「つまり、あなたがこの掲示板の新しいオーナーよ」


「いやいや、俺が管理者? 掲示板のオーナー? 何だそれ、意味わからんぞ!?」


✅ [樹介掲示板8ch] スレッド一覧


• 【管理者 夜桜】掲示板のオーナーに強制移行www

• 【警告】夜桜は樹理神に選ばれし者!?


掲示板を横目にみつつ、言葉を聞きながら俺はある言葉に引っかかった。


「……ちょっと待て。今、なんて言った?」


「何のこと?」


「『樹介』……もしかして、あの樹介?」


それは、あまりにも聞き覚えのある言葉だった。テレビCMや広告で何度も耳にしてきた、あの名前。


——「次世代の仮想世界!“樹介”へようこそ!」


「……まさか?」


頭の中で、アイドル樹介旅団のライブシーンがフラッシュバックする。


あの独特で煌びやかなステージ、視聴者投票システム、掲示板文化……それが、この世界と関係あるのか?


「……待て待て待て待て!!」


混乱した思考が加速する。


「樹介って、仮想世界だろ!?俺は異世界転移したんじゃねぇのか!?」


「仮想世界だと思う人がいても不思議ではないわ。あなたの視点では異世界だし、元々は仮想世界だったのだから。」


「……いや、待て。

仮想世界ってことは、これはゲームか?

それとも、現実が変化したのか?

……じゃあ、俺がいるこの世界は何なんだ?」


考えれば考えるほど、答えが出ない。


「……つまり、これは仮想世界で、でも今は異世界みたいになってて……

俺はその中で、掲示板の管理者になった……?」


「ええ、そういうことね。異世界みたいではなく、既に異世界よ。地球とは樹理神の御力により繋がっている。もっとも、地球のほとんどの人は仮想世界だと思っているようね」


「そんな**“ええ”**じゃねぇよ!!」


【⑤試練】能力果実「縮縛鑑秘」の覚醒


蕾が指さしたのは、俺のズボンのポケットの膨らみ。ポケットから取り出した、黒紫の果実。


「それを食べれば、もう少し生存確率が上がるわ。力が無いとこの世界、樹介では生き残れない。」


……とりあえず、今は考えるより、生き延びることを優先すべきかもしれない。


夜桜は手にした果実をじっと見つめた。


縮縛鑑秘しゅくばくかんぴ——

まるで黒紫の宝玉のような果実が、僅かに光を帯びている。


「……食うしかねぇな」


果肉を噛み締めた瞬間、甘さとわずかな苦味が広がる。

だが、その後すぐに、体の内側から熱が湧き上がる のを感じた。


「っ……!」


視界が一瞬ぼやける。

そして——


——縮縛鑑秘、適応開始。


ふと、頭の奥に直接響くような声がした。


(……これは……?)


次の瞬間、体の感覚が鋭敏になるのを感じた。

全身の筋肉や神経が、まるで新たな力を得たかのように研ぎ澄まされる。


「……力が……?」


拳を握りしめると、微かに空間が歪むような感覚がある。

試しに目の前の鉄格子へ手を向けた。


「……縮め!」


瞬間、鉄格子が軋むような音を立て、ゆっくりと縮小していく。

まるで、物体の「大きさの概念」そのものが捻じ曲げられたかのように——。


こうして、夜桜は異世界での第一歩を踏み出すことになる——。


次回、プロローグ第4/8話「屋敷からの極小脱出」


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