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プロローグ第2/8話「トイレの神様」

プロローグ第2/8話「トイレの神様」


トイレの中の異変


「俺、終わったな……」


薄暗い取調室の中で、夜桜はぼんやりと天井を見上げていた。

目の前には、鬼のような形相の婦人警官、丸藤巡査。


「おい、お前、何か言うことあるか?」


氷のような視線が突き刺さる。


(何も……ねえよ……)


やってない。

それなのに、証拠があると言われ、逮捕され、こうして取り調べを受けている。


「弁護士、呼べますか?」


一縷の望みをかけて言ったが、丸藤巡査は鼻で笑った。


「お前にそんなもん必要ない、クズめ」


完全に詰んでいた。


(マジで……終わったな……)


心が折れかけたそのとき——


夜桜の腹がギュルルルッと鳴った。


「……」


「……トイレ、行かせてください」


【承】第一転換:トイレの中での管理者認定


夜桜は、個室の便座に座り、虚無の表情でスマホを眺めていた。


トイレの空間はやけに狭く、壁は冷たく、

監視のためにドアが完全には閉められない仕様だった。


(最悪だ……)


なんとなくスマホをいじると、画面に奇妙な通知が表示された。


《あなたの適正を判定中……》


「……ん?」


(いや、待てよ。出勤前の管理者モード……まだ解除されてなかったっけ?)


《適正テストの継続を開始します》


「いやいやいや、またかよ!? つーか、トイレの中でやめろ!!」


しかし、スマホは勝手に動き始める。

画面が暗転し、青白い光のシルエットが浮かび上がった。


《ようこそ、管理者候補 夜桜》


「は!? いや、待てって!!!」


夜桜は小声で叫んだ。

だって今、トイレの中である。


《あなたの管理者適正が確認されました。


「ちょ、待て待て!! なんでこんな重要そうな話がトイレなんだよ!!!」


コンコン!


外からノックの音がした。


「……あの、すみません、早くしてもらえますか?」


「いや、俺だって早くしたいわ!!!」


(どうしろってんだよ、これ!?)


仮登録試験:掲示板管理者の適性確認


《管理画面に強制ログイン》


次の瞬間、スマホの画面が暗転し、奇妙なメッセージが表示される。


《あなたの適正を判定中……》

《仮管理者試験を開始します》


(仮? まだ正式じゃないのか……?)


画面にいくつかの選択肢が表示されたが、1番最初の選択肢が気になり、そこで目が止まる。


選択肢


① 何もせず様子を見る

•「これ、放置しても大丈夫じゃね?」

•スマホは明滅を繰り返すが、特に異常はない。

•しかし、しばらくすると新たなメッセージが表示される。


《あなたの対応を評価中……》

《管理者としての最適解は “何もしない” である可能性を確認》


•結果:「慎重な管理姿勢」として評価される。

•教訓:「管理者は介入しすぎず、時には静観することも大切。」


《管理者仮登録適正試験合格》


絶望と覚醒:新たな管理人の誕生


《おめでとうございます。「樹介掲示板8ch」の管理者に認定されたので正式に仮登録なされました》


「……え?いやいや!! 仮登録なされたって、適切試験てのはもう終わりなのかよ!!?」


《正式な管理者 夜桜。あなたには「管理局バンガード隊」のサポートがつきます。》


「……管理局バンガード隊?」


《まずは自己紹介をどうぞ》


「……って、今!? トイレの中で!?」


最終決着:管理者としての第一歩


《管理局バンガード隊のメンバーが接続しました》


夜桜が震える指で「OK」をタップすると——

画面に、新たなユーザーが次々とログインしてきた。


つぼみ「やっと直接話せるわね! あなたが新しい管理者ね!」


千景ちかげ「初仕事、お疲れさまです。……ところで、今どこにいます?」


ひびき「さあ、世界を揺るがす新管理者の誕生だあああ!!!」


「えっと……俺、トイレにいるんだけど……」


杏「え、管理者の初仕事って……トイレの中だったの?」


「うるせぇぇ!

ほっといてくれぇぇぇ!!!!!!」


——こうして、夜桜は「樹介掲示板8ch」の正式な管理者となり仮登録が完了した。


だが、この選択が、後に世界を揺るがす事件へと繋がることを、彼はまだ知らない。


管理者とやら?になった夜桜。便器に座ったまま、訳わからず呆然としていた。今度はアプリが明滅し、画面いっぱいに緑色の光が広がる。


「掲示板の管理者とか意味わからん。とにかく、ん?え、なにこれ……やばっ……!」


スマホが熱を帯び、指先が吸い込まれそうになる。


次の瞬間——


ズボッ……!


便座の下が消えた。


「……え?」


浮遊感。

視界が緑色の光に包まれる。


「ちょっ、待て、なんかヤバい!!」


ズルッ!!


足元が滑る。

ズボンを下ろしたまま、夜桜は宙に放り出された。


「いやいやいや! ズボン!! ズボン戻して!!!」


——だが、光の圧力でズボンとパンツが完全に剥ぎ取られた。


「は? はあああああ!?!?!? 俺のズボン!? パンツ!!?」


ズボンとパンツだけトイレに残り、夜桜は完全に下半身裸で異世界へと、ノーパンデビューを果たすべく、飛ばされていく。


異世界に下半身裸で到着


ドスン!!


柔らかい草むらに着地する。

頭がクラクラする。


(なんだ……今の……?)


冷たい風が吹き、肌に心地よい——


「……さ、寒い。下半身、さぶい」


ふと見下ろす。


ズボン、ない。

パンツ、ない。


「ええええええええええええ!?!?!?!?!??」


全身の毛穴が一気に開き、寒さと羞恥心が同時に襲いかかる。


「嘘だろ!? なんで!? ここどこ!? 俺のズボンとパンツ!!?」


風が吹き抜け、下半身に直撃。


「うわああああ!! やべぇぇぇ!!! これヤバい!! ヤバい!!!お巡りさ〜ん、ここです!って、俺捕まる!今度は冤罪じゃねえ!」


とりあえず、近くにある木からもぎ取り、大きな葉っぱで前を隠そうとするが——


「……チクチクするぅぅぅぅっ!!!」


「女神」との遭遇


「ようこそ」


静かな声がした。


夜桜が顔を上げると——そこには、一人の美しい女性が立っていた。


黒髪、透き通るような緑の瞳。

翡翠のような輝きを宿し、どこか神秘的な雰囲気を纏っている。


「……え?」


彼女は静かに微笑み、夜桜をじっと見つめていた。


(やばい、めちゃくちゃ美人……でも、どこかで見かけたような?)


しかし、考えるよりも先に、ある言葉が口から出てしまった。


「ち、違う!これには、深いわけが!……え、待てよ。もしかして。ト、トイレの神様?」


彼女の瞳が、一瞬だけ困惑したように揺れた。

しかし、すぐに微笑みを崩さなかった。


「ふふっ……面白い子ね」


夜桜、心の声:

(え、笑われた!? ていうか、今、ちらっと下見て微笑んだよな!? これ、何? 俺の姿が面白いってことか!? それとも……いやいやいや、余計なこと考えるな!!)


女神は少し顔を上げ、夜桜をじっと見つめた。

「あなたは、この世界で試される存在。だからこそ——」


彼女は夜桜に向かって小さな光の果実を差し出した。


「この特別な能力果実を授ける。食べると良い」


夜桜が受け取る前に、彼女の姿はゆっくりと霧のように薄れ消えていった、微笑みながら。


(ちょっ……なんか言いたいこと言って消えたぞ!? っていうか、最後にまたチラッと下見たよな!? やっぱアレか、笑われてたのか!?)


と、余計なことを考えている間に、再び強制召喚——


貴族の屋敷へ召喚 → 服を求める(切実)


——召喚された瞬間、異様な沈黙が屋敷内を支配した。


夜桜:

「……え?」


目の前には、装飾の施された豪華な大広間。

そこに集うのは、優雅な衣装に身を包んだ貴族たち。


しかし——


彼らの視線は、一斉に夜桜の“ある一点”に向けられていた。


(……って、俺、下半身丸出しじゃねえかぁぁぁ!!!)


沈黙を破ったのは、貴族たちの反応だった。


✅貴族たちのリアクション


・ 貴族の主(ワナワナ震える)

「ぬ、ぬおおおおおおお!? 何だ、この……!? これは召喚の大いなるミスではないのか!?!?」

—— 額に青筋が浮かび、ワナワナ震えている。怒りなのか、呆れなのか、困惑なのか、自分でも分かっていない。


・ ある友人貴族(冷静)

「フム……これは興味深い……」

—— 顎に手を当て、じっくり観察。まるで芸術作品を品評しているかのよう。


・ イケイケ系ご婦人(策士)

「あら〜大胆ですわね! 召喚されて早々、そのような姿でお披露目とは……♡」

—— ファン扇をパタパタしながら微笑みつつ、一歩前へ出る。

「ですが皆様、この方は単に無作法な変態というわけではございません。異文化の表現という可能性もあるのでは?」

—— 「なるほど」と頷く者も出る。

「ああ、たしかに……古代の戦士たちは、布一枚すら身につけず戦場を駆けたと聞きますわ」

—— 「ふむ、戦士の誇りか……」と妙な納得が広がり始める。

(おい待て、何かの文化に仕立て上げられそうになってるぞ!?)


・ 狩人系ご婦人(獲物を狙う)

「…………」

—— 目がギラギラしている。まるで獲物を狙う猛禽類のような目つき。

「なるほど……これは実に興味深い個体ですわ」

「試しに、どこまでの動きが可能か、戦わせてみるのはどうでしょう?」

「素晴らしい提案ですわね。まさか、ただの観賞用ではございませんでしょうし……」

—— おい、何か別の方向に議論が進んでないか!?


・ 貴族の主(爆発)

「変態野郎! こんなハズレ、地下牢へぶち込め!!!」


(ちょ、待て待て待て!! 俺、何もしてねえからな!?)


夜桜の抗議も虚しく、衛兵たちが躊躇しながらも彼を確保し、地下牢へと引きずっていった。


地下牢での絶望 → 服を求める(ご婦人たちの画策)


衛兵たち:

「いやぁ、こんな召喚初めてだな……」

「服くらい用意してから呼び出してやれよ……」


(いやほんと、それな!!!!)


夜桜は、寒さと羞恥心に震えながら、必死に訴えた。


「すみません!! 服ください!!!」


牢の外にいる貴族たちは、ヒソヒソと話し合う。


「服がほしいそうだぞ」

「おやおや、変態のくせに?」

「では、“彼にふさわしい服”を用意するべきでは?」


ご婦人たちは、にこやかに微笑んだ。


・ イケイケ系ご婦人(策士)

「ええ、服を着せるべきですわ。でも、何を着せるかが問題ですわね?」

—— 「異文化戦士説」を流布しながら、何かしらの変な衣装を着せる方向へ誘導。


・ 狩人系ご婦人(獲物を狙う)

「では、彼にふさわしいものを選びましょう……もちろん、我々の美的センスに従って」

—— 明らかに楽しそうな顔をしている。獲物を品定めする目つき。


・ 貴族の主(疲れ気味)

「もう好きにしろ……」


ご婦人たち、意気投合


「ならば、こういうのはどうかしら?」

「いっそ、王族の正式な衣装を着せるのは?」

「まあ! でもそれは格式が高すぎますわ」

「では、舞踏会の衣装にするのはどうかしら?」

「いや、いっそ華やかなドレスを……!」


(ちょ、待て、そっちの方向はやめろ!!!!)


しばらくして——


衛兵が牢の扉を開け、差し出したのは……


**「異常に派手なフリル付きの衣装」**だった。


夜桜は、それを見た瞬間、魂が抜けそうになった。


「……ふざけんなぁぁぁああ!!!!!」


次回、プロローグ3/8話「地下牢のコスプレイヤー」

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