表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/28

8 闇属性

「う、動けない……」


私の足とライリーの足が絡まり、さらにジュリアンの足がライリーに絡まって、完全に身動きが取れなくなった。


そんな私たちを、呆然と見つめるルーカスは、すぐさま魔法で起こしてくれた。


「皆さん、いったい何をしているのですか? それに、ライラまで……」

「父上! あのチビが喋ったんですよ! こんな不思議なことがあるでしょうか!」


ライリー、その手をやめなさい。

当のおチビちゃんは、「なんのこと?」とでも言うように目を逸らしている。


「ラジュリー! 僕の目は誤魔化せないぞ!」


ジュリアンの言葉に、ルーカスは「ラジュリー?」と不思議そうに首を傾げた。

……そういえば、ルーカスにはまだ名前を付けたことを話していませんでしたね。


おチビちゃんは、名前を呼ばれたのが嬉しいのか、自慢げに飛び回っている。


「それは、三人で考えた名前ですか?」


私たちは揃って頷く。

まさか、自分たちの名前から取ったとは思うまい。


「皆さん、体に異変は?」

「父上、異変とは?」


異変? 確かに私は頭痛と吐き気で倒れたけれど、ただの体調不良かもしれないですし……。


「……皆さんには話しておいたほうがいいでしょう。今から言うことは、必ず他言しないこと、いいですね?」


二人に合わせて私も頷く。

そんなに重大な話なのだろうか。


おチビちゃんは相変わらず何食わぬ顔で飛び回っているけれど。


「この動物は、ただの動物ではなく、姿を変えた魔族です」


は? 魔族? この可愛らしいおチビちゃんが? 信じられない。

魔族といえば、悪魔的な存在のあれでしょう?


でも、魔族だろうが何だろうが、おチビちゃんはおチビちゃんよ。

むしろ、このままでいてくれないと困る。


「ま、魔族だって!? じゃあ、僕たちは魔族に名前を付けてしまったということ?」

「魔族に名を授けるということは、魔力を分け与えるということ。つまり、あなたたち三人は魔力持ちで、それぞれ魔法が使えることになります」


――待って、嘘でしょう?


魔法が使えるのはいいけれど、私の場合、嫌な予感しかしないのだけど? 闇魔法だけは嫌です。

どうか、それ以外でお願いします、神様。


「僕たちが、魔法を……?」

「父上……それは誠ですか?」

「ええ。ライラが体調不良で倒れたとなると、あの魔族に名を授けた代償かと思いましたが……ライラは別の理由でした」


別の理由ってなんですか。


私はてっきり、「捨てられたい」と願ったことで天罰が下されたとばかり思っていたのですが。


「ルーカスおじさん、それはどういうことですか?」

「ライラは、どうやら光の魔法が苦手な体質のようです」


この世界は、私に優しくないようです。


だって、これはもう私が闇属性だと分かった瞬間ではないですか。

神様、私が何をしたというのですか? 確かに、捨てられることへの快感を覚えてしまったけれど、それは仕方がないことではなくて? 闇属性なんて、皆に嫌われる未来しか見えないのだけれど。

でも、誰もいない場所に逃げられるなら、それはそれで本望かも。

とはいえ……ルーカスは世界の果てだろうと、私を捕まえに来るだろうけれど。


はあ、泣きたいです。


おチビちゃん、どうしてそんな顔をしながら私を見ているの? 泣きたいのはこっちなんですが。


おチビちゃんは、私に向かって飛びつき、私はそれを受け止める。


『キュ……』

「……そんな顔で見ないでください」


それでも、私はおチビちゃんを強く抱きしめてしまうのだから、相当、精神的に来ているんでしょう。


というかおチビちゃん、あなた、普通に喋れるでしょう……?


「……あくまで、そういう体質なだけで、ライラが闇属性だというわけではありませんよ」


――この男、私の心を読んだな?


おチビちゃんは、何故かルーカスを睨みつけているけれど、あなたはいったい何がしたいのです?


「父上、ライラが闇属性だなんてありえません!」

「ライリー。ライラが闇属性なわけないだろ。むしろ光……」


ジュリアン、いつも私を見るたびに言葉を濁さないでください。


もういいです、私が闇であろうと死ななければいいのだから。


『全く、ライラ様は闇属性に決まっているだろう?』


――あ、喋った。


「……だそうですよ。ルーカス」

「……! ライラ、騙されてはいけません」

『何を騙すって? 俺は本当のことを言ったまでだ。これほどにも闇の力が強く、ましてやあの消えたはずの『闇属性』だ。これほどにも嬉しいことはないよ』

「ラ、ラジュリー! さすがに嘘だよね?」


やはり、闇となると皆これほどにも否定したがるのですね。

でも、たとえ私が闇属性であろうと、魔法を使わなければいい話でしょう。

死ななければいいのだから。

もう、闇属性も捨てられる運命と同じなのだとしたら、受け入れるしかないですね。


『俺は嘘はつかないよ、ジュリアン殿。ライラ様は正真正銘、闇属性だ』


私に様付けをするのはなんなのです?


「チビ! それ以上言ったらここから追い出すぞ」


え、追い出す? それなら、おチビちゃんを追い出すついでに私も追い出してください!


『ライリー殿。俺を追い出すのなら、ライラ様もここから出ていくことになるが?』


――私は構いませんよ。


おチビちゃんは、私と同類みたいなものですし、一緒にいようがどうでもいいです。


すると、突然、壁が粉々に砕け散る音が響いた。


「ライラは魔族の手に渡らせない」


低く、抑えた声が聞こえる。


視線を向けると、ルーカスが壁に拳を叩きつけ、砕けた破片が床に散らばっていた。

おチビちゃんを睨みつけるその目は、殺意に満ちている。


……これが本性ですね?


ライリーとジュリアンは明らかに引いている。

彼らにとっては恐怖だろうけれど、私は精神年齢が十八の成人女性です。

これは、子どもにはトラウマ級の光景でしょうね。


『魔族の手? ははは! 面白いことを言う。ライラ様は確かに我々魔族にとって偉大な存在だが、それは所詮争いの種となる』

「争いの種?」


ルーカスは、怖がるライリーとジュリアンに気が付いたのか、すぐさま壁から拳を抜き、手に付いた断片を振り払いながら、おチビちゃんを見ていた。


『ライラ様は、この世界でたった一人の闇属性だ。それに、直視できないほどの強力な魔力をも持っている。そのような存在を手にしようとする不届き者がいたら、やがてライラ様を巡る戦争となるに違いないのだからな』


……それ、聞きたくなかった。


そもそも、魔族という存在は闇の世界に生きているから、そのほとんどが闇属性ではないの? だとしたら、おかしすぎる世界ですね。


「……ジュリアン、ライリー、そしてライラ。しばらく席を外してもらえますか?」


――また、追い出されるんですか?


おチビちゃんは、ルーカスを蔑む目で見ている。

私に視線を向けると、すり寄ってきた。


可愛子ぶっても無駄だと言いたいけれど、ここは大人しく席を外すことにしよう。


「ライリー、ジュリアン行きましょう」


そう言って、おチビちゃんを下ろすと慌てた様子で私の周りを歩き回った。


『ライラ様? あんな奴のことなんて聞かなくても――』

「それでは」


もう面倒くさいので、言われた通りに退室しましょう。


「ルーカスおじさん! 早く終わらせてください。一応、ライラは病み上がりなんですから」

「父上、それとチビ。ライラのためにも少しは気を使ってください」


ジュリアンとライリーは私の手を掴み、部屋の外へと連れ出した。


その背中が、大人のように頼もしく思えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ