10 光と闇
※こちらはルーカス寄りの三人称視点となっています。
ライラとジュリアン、そしてライリーが部屋を出た後、そこには異様な空気が漂っていた。
ルーカスは静かに視線を向ける。
ライラのベッドの上には、小さなドラゴンのような姿をした魔族が、腕を組んで座っていた。
「……ライラに何をした?」
問い詰めるルーカスに、魔族は肩をすくめ、鼻で笑う。
『何をって、何もしてないさ。ライラ様は生まれた時から膨大な闇の力を持っている。そんなこと、お前が一番よく知っているんじゃないのか? 境界の門番さんよ』
「……僕は確かにライラのことは語り尽くせないほど知っています。ですが、僕が見たライラは、闇の力など持っていなかった」
ライラがいた世界では、そもそも魔法という概念が存在しなかった。
当然、魔力を持つ者もいない。
それも、ライラを含めて。
神ですら恐れる闇の力。
それが世界を脅かす元凶だとされてからというもの、自ら命を絶つ者もいれば、魔族と呼ばれ追われる者もいた。
闇の力を持つ者は、例外なく悲惨な末路をたどってきた。
もしライラにそんな力が備わっているのなら――
なおさら取り除かなければならない。
そんなルーカスの思考を見透かすように、魔族はくすくすと笑った。
『持っていなかった? 馬鹿なことを言うな。お前はそれを信じたくなかっただけだろ?』
「……」
『お前のせいで、ライラ様は命を落としかけたんだぞ?』
「勝手なことを言わないでください」
ルーカスの反論を、魔族は面白がるように聞き流す。
『ライラ様を子どもにしてまで傍に置くのが、お前のやり方なのか?』
その言葉に、ルーカスの瞳が鋭く光った。
手のひらに光の力を集め、それを鞭へと変える。
「……っ!」
鋭い一閃が魔族へと振り下ろされた。
しかし、魔族は口角を上げながら軽やかに飛び上がる。
『おいおい、無駄な戦闘はやめよう。ここはライラ様の部屋だぞ? お前が短気なのは分かるが、俺はまだお前を殺す気はない』
「……殺すのは僕の方ですが。とはいえ、ライラのためにも保留にしておきます」
『寛大なご対応、どうもありがとう』
この魔族をライラの傍に置くのは、あまりにも危険すぎる。
それは、ライラだけでなく、ジュリアンやライリーにとっても同じだ。
だが――
彼らはこの魔族を可愛がり、慕っている。
それを無理に引き離せば、ライラはきっと怒る。
それがライラにとって、どれほど嫌いであるかを知っているから。
ルーカスは眉間に皺を寄せた。
『というわけだから、そろそろライラ様たちを部屋に戻してくれ』
「……いいでしょう」
『よし』
満足げに頷くと、魔族は窓を開け、外へと飛び去っていった。
ルーカスも窓辺に歩み寄り、外を見下ろす。
木の下では、ライリーとジュリアンが何かをしている。
そして――
ライラは木にもたれかかり、静かに目を閉じていた。
短くてすみません。
次回は少しだけ長いかもです。




