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1 捨てられた少女

人生は捨てられてからこそ始まる。


捨てられた理由が分からなくても、捨てた相手が一度でも不快に思ったのなら、それが理由。

捨てられる者が悪い、全て自分のせい。

そんな言葉を数多く聞いてきた。

それも、同情というものを被りながら言うものだからおかしくてたまらなかった。

捨てられても何も感じなかったというのに。


『可哀想に……。捨てられてしまったのね』


とある雨の日、無駄に広かった家がさらに広くなっていた。

静まり返る中、聞こえてくるのは私の鼓動と雨の音。

この時、普通の人ならば状況が把握できずに頭を抱えることでしょう。

けれど、私は不思議と何も思わなかった。


いや、あの時に初めて『快感』というものを得た。

あれほどにも、気分の良いことはなかった。

気分が良く、外に出て空気を感じていると、近所の人が何を思ったのか私が泣いているのかと思われたようだった。


『やっぱり、おかしいと思ったのよ。あの子だけ、いつも一人だったから』


私は彼らから常に見張られていた。

それも怖いほどに。

近所関係というのは、これほどにも恐ろしいものなのかと、外で意味もなく空を眺めていては思った。

そして、私には兄と弟がいる。

兄と弟はとても優しく喧嘩をしたことは一度もありません。


なら、何も問題はないだろうと思ったのではないでしょうか。

そう、兄弟間では問題はなかった。

けれど、そんな仲は続くはずもなく父によって壊されてしまった。

喧嘩もなければ、憎しみ合っているわけでもないまま引き離されてしまったのです。


それによって、私は常に一人になってしまった。

食べる時も、起きた時も、学校へ行くときも。

だからだろう、近所の人には常に同情な目で見られていた。

しかし、私は自分自身が持つ長い黒髪と母の目を継いだ水色の瞳のおかげか、学校ではハーフの人と勘違いされたまま好かれ、平和に過ごしている。

これは全て母に感謝しなければ。


それと、あの父のゴミを見るかのような目は、いつしか私は殺されてしまうのでは、と思ってしまうほどに滑稽だった。

けれど昔の父は、幸せな家庭にいる父親のような人だった。

それなのに、よくある話で母が病気で亡くなってしまってから性格は変わってしまった。

母親が亡くなったことで、父親にゴミのような目で見られるようになってしまう子どもは可哀想です。

それも、一番近くにいたからという理由で。


けれど、十八歳まで育ててくれたのなら感謝をするべきですね。

むしろ、私のことが嫌いだったくせに十八歳まで良く育ててくれたものだと感心したくなります。



それにしても、人生は不思議です。

捨てられて、誰にも頼る人がいないからひとまず普通に生活をしたが、まさかこれほどにも順調に行ってしまうとは思わなかった。

いつものように平然と学校へ行き、近所の人に同情な目で見られ、そして帰宅する。

何もかも順調すぎて、何かを疑ったがその何かが、私の人生を大きく変えてしまった。


そして私は、突然現れた穴に落ち、意識を失ってしまう。




まどろみの中、私は暖かな温もりを感じながら目が覚めた。

手から感じる感触が、どう考えても人間の身体であったため視線を動かすと、私は長い髪をした金髪の貴族らしき男に抱きかかえられていた。

私はしばらく、その男の腕の中で彼を凝視した。

どこぞの彫像が動き出したかのように、美形だった。


やがて、森の中だったのが木々が周りからなくなり、目を凝らすと一つの大きな建物が視界に移る。

この時、私は察した。

察したくなかったことを察してしまった。


「……拾われた?」


そう、状況を理解するにつれて私は拾われてしまったのだと。

しかも、よく小説とかに描かれている異世界とやらに運悪く拾われてしまった。

この時にもっと早く気が付けば良かった。

そうであれば、私は『孤児院』などといった場所には行かなかったというのに。


私の声に気が付いたのか、金髪の男は微笑むだけで特に何も言わなかった。


そして、ふと私はこの時とある違和感を感じた。

私の身体がいつもより軽く、そして手足が小さくなっていることに。

私は、金髪の男に抱きかかえられたまま真顔になるしかなかった。


子どもになった、と。

そして、私の目に映る髪の色が黒髪から水色の髪に変わっていた。


私は鼻で笑うしかなく、徐々に近付く『孤児院』を遠い目で見るしかなかった。

もう、深く考える気がしない。

やがて、抱きかかえられる私の存在に気が付いたのか『孤児院』の中からぞろぞろと人が出てきた。


その中で異様に目立ったのが、高い位置に結ばれた赤髪を持つ勇敢そうな少女と、短く切り揃えられた桃色の髪を持つ素直じゃなさそうな少年だった。

彼らは、初めて海を見たかのように驚いた顔で私を見つめていた。


そして、抱きかかえていた金髪の男は私を地面に降ろし、こう口にした。


「この子は、先ほど拾った新たな家族です。皆さん、仲良くしましょうね」


その言葉に私は膝から崩れ落ち、絶望することとなる。




私の名前は青峰(あおみね) しぐれ。

そして、ライラになった。


どうか、私を拾わないで。

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