第三章 設定 + おまけ
第三章 設定 + おまけ
●キャラクター
『矢川京太』
LV:26 種族:人間・覚醒者
筋力:58 (成長性:A)
耐久:58 (成長性:A)
敏捷:61 (成長性:A)
魔力:61 (成長性:A)
スキル
『精霊眼』
『魔力変換・風』
『概念干渉』
固有スキル
『賢者の心核』
備考
今作主人公。『量産型ラノベ主人公顔』という事もあり、女装が似合う。
コミュ力が低いうえに覚醒者という事でクラスでは浮いており、教室に友人と呼べる相手がいない。
一応、『仕事』と割り切った状態ならある程度他者と会話可能。
実はあと少し氾濫が遅かった場合、一部のクラスメイトに虐められそれを理由に不登校になっていた。
いつの間にか英国の息がかかった秘密結社、『インビジブルニンジャーズ』の構成員として政府から認識されている。
その事を本人が知る事になるかどうかは不明。
『林崎エリナ』
LV:20 種族:人間・覚醒者
筋力:39 (成長性:C)
耐久:39 (成長性:C)
敏捷:52 (成長性:A)
魔力:45 (成長性:B)
スキル
『透明化』
『五感強化』
『空間魔法』
備考
今作のヒロイン?金髪ツインテ巨乳美少女。イギリス人クオーター。
明るくハキハキと喋る影響でコミュ力が高い様に見えるが、実際は光のコミュ障。
クラスの皆と友達になれたと本人は思っているが、『毒島』と『大山』の2人以外からは単に怖がられているだけ。
今章にて『大車輪丸』という武装を手に入れた事で、攻撃力がかなり上昇した。
実は学校にある七不思議の内5つが彼女の行動が原因だったりする。
政府から祖母の関係で『イギリスの工作員』と疑われているが、まだ本人は知らない。
『有栖川アイラ』
LV:1 種族:ハーフエルフ・覚醒者
※ステータス、スキルに変動がない為割愛。第一章設定を参照。
備考
今作のヒロイン?銀髪エルフ耳な巨乳美女。見た目はとても知的でクール。エリナとは従姉妹。
身内と自分がマウントを取れる相手以外にはかなりのコミュ障。
そういった精神面と、貧弱な体力以外は『容姿端麗』『家が金持ち』『学業優秀』と意外なほどハイスペック。
趣味は飲酒とオンラインゲーム。
今の所『インビジブルニンジャーズ』の一員と政府から見られてはいないが、エリナや祖母との繋がりで今後疑われる可能性は十分ある。
『毒島愛花』
LV:10 種族:人間・覚醒者
筋力:25 (成長性:D)
耐久:24 (成長性:D)
敏捷:30 (成長性:B)
魔力:33 (成長性:B)
スキル
『呪毒魔法』
魔力を消費し、対象を呪う。あるいは、毒の液体を作り出し発射する魔法。
条件が揃えば遠隔で他者を呪う事も可能。
備考
エリナの友人でありクラスメイト。黒髪ロングのスレンダー美少女。
父親は中小企業の社長であり、一代で会社をたちあげた所謂『成金』。貧困家庭で育ったコンプレックスからか、彼は愛花を含めた子供たちに対してかなり教育熱心だった。
それもあってか、いつしか家の中はギスギスした空気が基本に。
『覚醒の日』に愛花が覚醒者となり、そのすぐ後に『呪い』が使える事が判明。恨まれていると勝手に思っている両親や、ライバル関係だと見ている兄や姉から恐れられている。
しかし、愛花自身は一応両親を尊敬しているし、兄妹にこれといった悪感情もない。それ故、恐れられる事に少なからずショックを受けた。
どことは言わないが『B』。『A』よりか『C』よりかは恐らく今作最大の謎。
なお、『魔装』が本職の踊り子さんからクレームが来そうなぐらいには痴女。
『大山雫』
LV:7 種族:ドワーフ・覚醒者
筋力:25 (成長性:B)
耐久:23 (成長性:B)
敏捷:22 (成長性:D)
魔力:26 (成長性:D)
スキル
『魔力付与・鉄』
ハンマーで打ち鍛える際に、魔力を流し込む事で鉄自体に魔力を付与可能。
これにより本来以上の強度を与え、レイス系のモンスター相手にも攻撃が通る様になる。
『魔工術』
魔力を含んだ金属は溶かす等の加工で内包する魔力を多少なりとも損なわれるが、それを防ぐスキル。
場合によってはむしろ魔力を増幅させる事もある。
備考
エリナの友人でありクラスメイト。赤毛をショートカットにした三白眼低身長巨乳。
普段から仏頂面とぶっきらぼうな喋り方なので機嫌が悪そうに思えるが、そういう顔なだけで実際は落ち着いた性格。
家が自転車の部品を扱う町工場なのだが、不況の波で傾きかけている。両親は『気にするな』と言うが、雫としては自身のスキルを使い工場のたて直しを考えている。
元々職人気質かつ頑固な為、言動が素でドワーフっぽい。周りの顔面偏差値がやたら高いせいで本人はあまり自覚がないが、十分整った顔立ちをしている。
どことは言わないがサイズは『H』。純粋な大きさはエリナの方が大きいが、身長が低い分サイズは互角。
『ダンジョン庁』
備考
最近の平均睡眠時間は1日3時間。そろそろ気力だけでもたせるのも限界が近付いてきた。エナドリとカップ麺は友達。
部長の赤坂が特に信用が置けると判断した部下達との間で、『インビジブルニンジャーズ』の情報が共有された。丸井陸将を始め自衛隊内でその名が広まり始めている。
京太及びエリナは秘密結社の構成員であり、その裏にはMI6がいると疑っている。
『ウォーカーズ』
備考
山下博とその仲間達が作った冒険者団体。開設当初から『ギルド』を名乗り周囲から『クランではないのか』と疑問視されていたが、『錬金同好会』と同盟を組む事で所属団員が急上昇。現在では誰も『ギルド』という呼称に疑問を抱かないほどになっている。
代わりに、代表の山下兄に対して『全てのクランを傘下にしようとしている野心家』というあらぬ噂がたっている。彼の毛根へのスリップダメージは多い。
今章こそ氾濫に巻き込まれず平和に過ごせたかと思えたが、『非覚醒者による覚醒者への虐め』や『覚醒者至上主義団体』からの接触などで休む暇はなかった。
一部幹部により、代表の山下を先頭にして『覚醒者と非覚醒者の融和路線への開拓』が考えられており……?
『錬金同好会』
備考
規模こそ小さいが、世界中から注目を集める覚醒者集団。初期メンバーは全員『錬金術』のスキル持ちだが、彼らから入会を認められた者達は同好会の資料で勉強し努力で錬金術師になった者もいる。
その目的は『理想のホムンクルス嫁の製造』と『社会全体にホムンクルス嫁をばら撒いて嫁と一緒にいても後ろ指をさされない世界にする事』。
技術と熱意と金がある変態集団。
会長は『警察庁のお偉いさん』で、副会長は『最高裁判所勤務』。色々と世も末である。
様々な組織から接触を求められているが、そういうのは面倒だと『ウォーカーズ』の山下に丸投げしている。
『謎の3人組』
備考
行く先々でトラブルに巻き込まれる謎に包まれた3人の美少女。1人はツーサイドアップの小柄な大剣使い。1人は灰色の髪をした少女。最後の1人はエルフ耳の神官風の少女。
今回こそ平和に過ごしているかと思えば、『子供の覚醒者を狙う通り魔』を成敗したり、『覚醒者至上主義団体』と裏でドンパチしたりと中々に血なまぐさい経験をしていた。
『覚醒者至上主義団体』
備考
組織としての正式名称はまだ作中に出ていない。NPO団体として登録されており、表向きの活動内容は『覚醒者が抱える様々な問題を解決する為のサポート』と、結構ふわっとしていた。
実態は『覚醒者でなければ人間ではない』という過激な思想の集団。覚醒者が貴族となり日本を統治すべきと主張している。
幹部たちは覚醒者としての才能が高く、アイラ基準で『SR』相当が複数いる。トップに至っては京太に迫る才能の持ち主。
●新規登場モンスター
※『Dランク』
『スケルトンナイト』
『鎌鼬』
『餓鬼』
『マスカレード』
※『Cランク』
『レッサーデーモン』
※『ボスモンスター』
『デーモン』
筋力:40
耐久:40
敏捷:50
魔力:50
スキル
『死霊術』
他者の生命エネルギーの吸収。死体に魔力を籠める事で操る等が可能。デーモンの場合、このスキルでレッサーデーモンからエネルギーを奪い魔力砲の燃料にしていた。
『魔力解放』
一点に集中した魔力を放出するスキル。掌に集めての速射砲や、口腔に集めての高出力砲としてデーモンは使っていた。
放出せずに体内を循環させる事で身体能力を引き上げる事も出来るが、かなり無茶な使い方なので自傷は必至。
備考
京太達が通う高校から3キロほど離れた空き家にて発生したダンジョンから出現。
『Cランク』の中でも同格である『レフコース』以上の脅威とダンジョン庁から認定されており、魔力が豊富な時の爆発力は高い。
飛行可能かつ遠距離攻撃も有している為、まず戦いの舞台に立つのが大変な敵。
最後は京太とエリナによる攻撃を魔力障壁で受けた結果、『概念干渉』により突破され討たれた。
●Q&A
Q.氾濫の後の塩って放置して大丈夫?
A.大丈夫ですね。通常時は持ち出すと大惨事な塩ですが、氾濫で溢れたモンスターの塩はただの塩です。
Q.ダンジョンに塩を持ち込んだらどうなるの?
A.『直ちに持って帰る』のなら何も起きませんね。ただし、一定時間経つと『地面に吸われ』ます。
Q.京太って今どのぐらいの強さ?
A.覚醒者番付でたぶん上位10にギリギリ入るか入らないかぐらいかと。学生としては破格の強さです。トップ5は自衛隊の対ドラゴン部隊。他は冒険者1本で生活している、『SSR』級の人達ですね。
Q.過去作にも『覚醒者を貴族に』的な考えなかったっけ?
A.ありましたが、過去作との違いは『覚醒者がやたら多い』『上位の覚醒者でも現代兵器で武装した軍隊より弱い』事ですね。なおかつ、『単独で全てをひっくり返せるヤベー奴』の不在。
Q.現代の軍隊より、トップ勢の覚醒者って弱いの?
A.はい。作中で大暴れしたデーモンも、戦闘ヘリが数機がかりで囲めば犠牲は出ますけど倒せます。あの時それで解決出来なかったのは、戦場が『避難が終わっていない市街地』だったからですね。
Q.じゃあ強い覚醒者を雇うメリットって?
A.『生物学的に人間な事』ですね。
人間だから戦車や戦闘ヘリほどの維持費はいりませんし、大抵は弾薬費もかかりません。治癒魔法や魔法薬が揃っていれば、負傷しても比較的早期の戦線復帰が可能です。
そして当然人並みの知能を持っていますし、人混みに紛れる事も、人間用の輸送手段を使う事も可能。戦車やヘリが入れない所にも歩いて行けます。
ただし、デメリットとして『機械じゃないから逆らう事もあるし、怯えて逃げる事もある』ので覚醒者だけいれば良いという事もないですね。
ぶっちゃけ、『覚醒者を軍人として鍛える』って普通に大変なので……。
Q.覚醒者の才能って遺伝するの?
A.しますね。ただし、個人差はあります。まあ作中で『2年ちょい』しか経っていないので、それが大きな影響を及ぼすのはまだ先ですが。
Q.この世界に転生したら京太みたいな力が手に入る?ゴーレムハーレムしたい。
A.結論から言いますと、ほぼ確定で『SSR』級にはなるかと。ただし、まるっきり同じ能力とはたぶんいきませんね。個人差が出るので。
今作だけでなく、私の作品は『人が死ねば魂は魔力の塊となって世界に溶ける』ので、溶けずに流転する場合は程よく研磨されたり逆に大きさが増して魂が強靭になります。
なので、覚醒者然り異能者然り、『転生者特有の高スペック』は保証されますね。
過去作ですが、剣崎やシュミット君なんか神様転生なのでチート付きですけど、それがなくとも優秀な能力を持って産まれていたと思います。
ただし。
シナリオ部長
「あ、好みかも……♡」
バタフライ伊藤
「君も家族だ」
ヤベーのに目をつけられるリスクは跳ね上がります。
Q.覚醒者ってクマみたいなもんなのに、虐めようと思うものなの?
A.コーラの国で乱射事件散々起きているのに虐めなくなりませんし……。
あと、覚醒者って『かなりピンキリが激しい』ので大人しい覚醒者は大抵弱い方と認識されます。
何より『相手は法律を守るはず』とバイアスがかかっているので、殴り返されないと勝手に認識しちゃうのは覚醒者非覚醒者関係ないという。
作中の表現だと京太は『法律という鎖に繋がれ檻に入れられたクマ』で、常識が通じず善意で空中ダイブさせるエリナさんは『縛る物のない虎』とそれぞれクラスメイトから見られていました。
Q.エリナさんってだいぶヤベー奴なのでは……?
A.はい。
Q.エリナさんの噂って、他のクラスには漏れてなかったの?
A.彼女のクラスメイト達が、『悪評をばら撒いていると思われて報復されたくない』と皆口をつぐんでいたので。結果、彼女のクラスメイト以外からはただの明るい美少女として認識されていますね。
Q.京太、美少女とばかり絡んでクラスで無言ならそりゃ嫌われるよ。
A.はい。彼も一応その辺は自覚していますが、自覚しているからってここから周りに溶け込めるならそもそもここまで拗らせていないという……。
Q.京太ってそんなに女装の似合う顔なの?
A.覚醒前はそうでもなかったのですが、覚醒して肌や髪質が凄く良くなったので。顔の輪郭も結構シュッとしています。
何より、『量産型ラノベ主人公顔』なので。ラノベ主人公と言ったら女装ってぐらいですし。
Q.『大車輪丸』量産したらモンスターなんて恐るるに足らずじゃん!
A.
大山さん
「量産とか無理に決まってんだろ。アタシの腕は2本しかねーんだよ。素材を『叩き込む』のは1晩でいけるが、その前準備にかなりかかるんだよ。全部手作業なんだぞ。スキルだから、機械化もできねぇ」
京太
「まあ、きっと政府がもっと凄い武器量産してんじゃない?民間、というか高校生だけで『大車輪丸』作れたわけだし」
アイラさん
「………そうだと、いいなぁ……」
Q.『錬金同好会』の会長が言う理想のホムンクルス嫁って、龍の玉に出てくるケー●さんみたいな感じの人?
A.
会長
「はー(くそでかため息)。これだから素人は……。身長は3メートル前後で、乳房の形とかわからないぐらいムッキムキじゃないと。妥協しても某王子ですよまったく」
なお、会長の奥さんは身長164センチ体重56キロ。腹筋が割れていて目つきが悪く、プライドも高いようです。
●IFルート
『エリナさんと出会わず、ホムンクルス嫁ハーレムな場合での今章時期』
学校に通わなくなって、もうすぐ1カ月になる。
世間では体育祭の季節だなどと、雨空を見上げながらふと思った。
不登校になった原因は、虐め。そのきっかけは自分の理性のタガが外れてしまった事にある。
『白蓮』……自分のホムンクルス嫁であり、ゴーレムメイド。
性癖全開で『心核』の力まで使い巨乳美少女にしたわけだが、当然夜の方でもお世話になっている。彼女との生活は充実していた。
ただ人間、1回道を逸れたら続けてやらかしてしまうわけで。
ホムンクルス嫁……増やしちゃった。
金髪巨乳美女ゴーレム『ホワイト』とか、銀髪ロリ美少女ゴーレム『ヴァイス』とか。ゆるふわ茶髪爆乳ゴーレム『ブランカ』とか。黒髪褐色巨乳ゴーレム『ベジ』とか。
そんな感じで増やしていき、今や我が家には5体のホムンクルス嫁がいる。メイド服で。
そうすると幾ら人のいない場所に家を持っている──借りていたのを購入した──とは言え、誰かに見られてしまう事もあるわけで。
ベランダで洗濯物を干していたホムンクルス嫁の1体が目撃されてからは、瞬く間に噂が広まった。
最初は同棲だの何だのと疑われ、学校でしつこく質問攻めにあいうっかり『錬金術で作った』と漏らしてしまい、変態のレッテルを貼られた。
あげく、知らない男子生徒から『使わせろ』『貸せ』と脅迫され、拒否したら鞄に見知らぬ女子生徒の下着を入れられてあらぬ疑いをかけられて……と。
その後は机に落書きされるは物がなくなるは。色々あった。両親は学校に抗議してくれたけど、教師たちの対応は……。
やめよう。あれこれ思い出しても、ストレスがたまるだけだ。
今は、目の前の光景に意識を向けよう。
「燃えてるなぁ……」
雨の中、ゴーレムメイドの1体が差す傘の下で呟く。
視線の先では、自分が通っていた高校が燃え盛っていた。
ダンジョンの氾濫である。空を化け物……たしか、『レッサーデーモン』だったか。それが飛び、偶に奴らの手から人間が地面に落とされている。
たしか、あの学校も今日体育祭だったんだっけ?だとしたらご愁傷様なこって。
自分を虐めていた生徒達も殺されたのかな、なんて。少し思うも別に気分が晴れる事もない。……ないと、思いたい。
人が死んで喜ぶ人間にはなりたくないなと、口を『へ』の字にしつつ、右手に持った杖を軽く掲げる。
錬金術を使い作り上げた、自作の魔道具。先端には赤い宝石が取り付けられ、中に『賢者の心核』の力を少し入れている。
これは『送電機器』の様な物だ。ゴーレム達に、自分の魔力を一斉に送る為の。
「全機、戦闘用意」
ズラリと並んだ、『11体』のゴーレム。全員が鎧を纏い、腰には直剣。足元には『投槍』の束が入った革袋が置いてある。
これら全て、『心核』を使い作った戦闘特化のゴーレムだ。白蓮も戦闘用の装備を纏い、自分の隣で護衛についている。
学校の奴らや人の悪評をばら撒く近所のジジババなどどうでも良いが、今家にいる両親には傷1つつけさせない。
事態を聞きつけ大慌てで実家まで移動し、防衛準備を整えた。『たかがCランクモンスター』。ものの数ではない。
未だに増えて行く化け物の群れ。その一部が、進路をこちらに向ける。学校にいた獲物は、狩り尽くしたのか。はたまた殺し易い相手がもういないのか。
何にせよ、寄ってくるのなら殺すまで。
「槍を持て」
戦闘用ゴーレム達が、投槍を握り大きく振りかぶった。
少し、変わった形をこの槍はしている。
柄はごく普通なのだが、穂先が人の腕ほども太い円錐状であり、ドリルの様に螺旋の溝が掘られていた。
更に、穂先の柄側には6つの穴が開いている。
ダンジョン法で冒険者はある程度銃刀法から見逃されるとは言え、ダンジョンで火器を使う事は出来ない。
しかし、投槍なら自由だ。火薬やそれに類する物を使わないのなら、それを改造する事も。
『GYAGYAGYAGYAGYA!!』
『GAAAAAAA!!』
哄笑をあげて迫る、数十の悪魔ども。それを見据えながら、告げる。
「放て」
投じられた槍。その際、『全てのゴーレムから』風を放出。更に槍の穂先からも後ろへ風が噴出し、横回転しながら飛ぶその速度は一瞬でマッハ数歩手前まで到達した。
『魔力変換・風』
本来、覚醒者の身体を素材として扱うにはかなりの手間と時間がかかる。だが、『心核』を使ってしまえばこの通り。
普段は目を付けられない為秘匿しているが、今回ばかりはその一端を出すしかあるまい。
驚愕の声をあげてレッサーデーモンどもが空を逃げ惑うが、槍は猟犬の様に獲物を追いかける。放たれた11本の槍が空に複雑な軌跡を描き、全て貫いた。
自動で戻ってきた投槍を、再びゴーレム達が構える。足元のは『予備』だ。これだけで、レッサーデーモンごときなら十分片付けられる。
入ってくる大量の経験値、消費される魔力。だが、後者は『心核』によって問題ない。
一方的な蹂躙が続く。
近づいた端から悪魔は討たれ、次第に距離を取り始めた。しかし、一度こちらへ近づいたのだ。射程内にいる内は殺すと決めている。
この場所から半径3キロ。死にたくなければそれより遠くに逃げるがいい。
やがて、大きな魔力がこちらに向かってきた。
他の悪魔とは毛色が違う。はて。なんだアレは?
「白蓮。あの悪魔に見覚えは?」
「ダンジョン庁のデータにあった、『デーモン』かと。ボスモンスターです」
「ああ、あれが」
前にダンジョンで見かけた『オークチャンピオン』以外では、初めてのボスモンスター。
内心で警戒心を引き上げながら──しかし、『所詮Cランク』と頭は冷静のまま。
『■■■■■■■……!!』
デーモンの口腔で圧縮された魔力。それが、数秒後に放たれると『精霊眼』が予知。
「全機、迎撃」
発射に合わせて、ゴーレム達が槍を投じる。
放たれる熱線。降りそそぐ雨粒を蒸発させながら迫るそれに、11の投槍が正面からぶつかった。
──ぐにゃり。
熱線が、歪む。
『概念干渉』
穂先に仕込まれた自身の素材。それが持つスキルが、起動する。
わざわざ『心核』を使って作ったのだ。これぐらい、当然出来る。
校舎を丸ごと飲み込むほどの極光は瞬く間に引きちぎられ、槍が纏う衣にされて主の元へと返される。
風だけではなく地獄の業火まで得た投槍に、デーモンは大鎌を構えながら全力の回避行動に移った。
『■■■■■■──ッ!!』
器用に避ける。急上昇からの急降下。捻りを加えながら軌道を変えつつ地面に迫り、そこから再度の急上昇をした。
地面スレスレを飛びアスファルトの地面を溶かしながら、猛追する投槍の群れ。しかし、投げる時に籠めた魔力的にそろそろ限界が近いだろう。
故に。
「放て」
予備を放出する。
デーモンが赤く輝く瞳を見開いたのが、ここからでもわかった。
四方八方から迫る投槍。まるでサメの群れに囲まれた哀れな小魚の様に、あっけなく悪魔は貪られて散っていった。
戻ってくる22本の槍。半分を革袋に戻し、またゴーレム達が射程内のレッサーデーモンどもを落としていく。
ただの作業だ。それでも経験値が入るので、そろそろ『LV:30』も近づいてきたかもしれない。
学校に通わなくなり、代わりにストレス発散も兼ねて頻繁に入りびたる様になったダンジョン。ダンジョン庁が始めた送迎サービスも使い色んな迷宮に行ったおかげで、随分とレベル上げも捗ったものだ。
こんな事なら椅子も用意するのだったと思いつつ、殲滅の様子を眺め……。
「ん?」
こちらに向かってくる影を視認する。
「んん?」
だが怪物ではない。人影だ。それもたくさん。30人から40人ほどか?
「んんん?」
先頭を行く、忍者っぽい恰好の金髪ツインテの美少女。その後ろをジャージ姿な少女を背負った赤毛の小柄な少女が続き、更にその後ろを同年代と思しき生徒達と、これまた両親と同世代の大人達が走っている。
金髪の子が忍者刀を手に屋根やコンクリートブロックを足場にレッサーデーモンを蹴散らしながら、真っすぐこちらに向かって来ていた。
……なるほど。確か、林崎エリナさんだっけ?隣のクラスの覚醒者。
どうやら、生徒達やその保護者を守りつつ学校に立て籠もっていたのが、投槍による蹂躙を見て避難を始めたらしい。校舎、燃えているし。
で、絶賛蹂躙まっ最中な自分の方に、助けを求めてきたと。
うん。
「どどど、どうしよう白蓮!!??」
やっべぇ。あんな沢山の人と話さなきゃなの!?無理だよ!?死ぬよ!?
デーモンの10や20どうとでも料理できるが、人間は無理!殺せない!
「追い返しますか?」
「駄目だよ!あの人達には恨みないもん!」
「では受け入れますか?」
「そ、それしかない……?で、でも対応なんて……」
「私が応対しますか?」
「……いや。それはやめとこう」
こうして悪魔相手に『心核』の投槍を使っているが、こちらはまだ誤魔化せる。
しかし、流暢に会話可能なホムンクルス嫁はまずい。固有スキルがバレるかも……。
「ならば、ご両親に対応を頼むのが良いかと」
「それだ!」
流石白蓮!僕の嫁!
「ゴーレム各機、迎撃を継続!白蓮は周辺を警戒!僕は父さん達呼んでくる!」
「かしこまりました」
「父さーん!母さーん!助けてー!!」
玄関で門番をしている武装したゴーレムメイド、『ホワイト』の横を通り、インターホンを連打する。
中から慌てた様子で両親が飛び出してきた。……ヘルメット被っている母さんは良いとして、なんで父さんは鍋を被っているの……?防具として流石にきついよ?
「どうした京太!?」
「わ、私達も戦うわよ!」
「人間が、人間がたくさんくる!!」
「お、おう?」
「……えっと、自衛隊とか?」
困惑する両親。それに対し、杖を強く握りながら続けた。
「会話するのが恐いから、代わりに対応して!!」
「……はい?」
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