第五十三話 人の煩悩は53万
第五十三話 人の煩悩は53万
大山さんの言う通り、工場の中では忙しそうに作業が行われていた。
何やら鉄パイプ?らしき棒と謎の金属を溶接してる。火がすげぇ。
あっちはヤスリ……で良いのか?機械で動くベルトみたいなのに金属を押し付けて研磨しているらしい。
「壁沿いに歩けよ。危ないから」
「あ、うん」
「ほーい」
工場内を見回すのをやめ、大山さんの後ろを歩く事に集中する。偶に目があった工場の人に会釈すれば、向こうも小さく頷いてくれた。
以前も来た彼女の作業スペースに到着すると、大山さんは自分に振り返り手元のバッグへ視線を向ける。
「そいつが例の『白蓮』か?」
「あ、はい。今組み立てます」
ボストンバッグを床に下ろし、中から胴体と四肢で分けた白蓮を取りだしていく。
超大型とか書いてあったバッグなので、1つに全て入れられるから便利だ。
「……よくそんな大荷物、片手で持ち運べるな」
「レベルが上がれば、たぶん誰でも持てますよ?」
大山さんに答えながら組み上げ、魔力を注ぎ込み自立させる。
直立して待機モードになった白蓮は、我ながら中々の出来栄えだ。
全体的には、特撮の狼怪人に少し似ている。それを所々メカともフィギュアとも取れる様にして、色を黒と紺で塗った感じだ。口元の覆面とガラスのツインアイが、ロボアニメの雰囲気を出している。
エリナさんは忍者っぽいとか言っているが、こいつには騎士甲冑を着せるのだ。それは譲れない。
「……細部が違うが、大まかな所は『木蓮』と同じだな。事前に渡されたデータもあるし、作っておいたやつを少し調整すれば問題ないだろう」
「ありがとうございます」
「それで。わざわざ既存のもんじゃなく『アタシが作った物』を木蓮との交換条件として認めた辺り、こいつの鎧にもお前の髪や爪を素材として使うんだろう?」
「ええ。お願いします」
大山さんの様な生産スキル持ちにいく依頼は、大半が『武器』だ。
既存の武器だとモンスターを倒しても碌に経験値が入ってこないらしいが、魔力を帯びた武器なら別だという。それゆえ、ダンジョン産の金属がよく持ち込まれるとか。
だが、防具は違う。盾や籠手をメインアームに戦う人は普通いない。そういうタイプの『魔装』の人こそ、職人に依頼する。
何より、ダンジョン産の金属を混ぜて使うより、既存の防弾チョッキを使う方が安いし『一部の例外を除いて』頑丈だ。
では、何故自分の様にわざわざ生産スキル持ちの人に防具を注文する奴がいるかと言えば、『スキルを付与する為』か、『装着者のスキルを妨げない為』である。
白蓮の場合、両方だが。
「よし。爪を切るから指を出せ」
「えっ。いや自分で切りますけど……今よこせという事でしたら、そこのコンビニで爪切りを買って来ますが」
「うるせぇ。確実に素材を回収するならアタシがやった方が良いんだよ」
「えぇ……」
大山さんの目が座っている。なんでそこまでして僕の爪に執着するのか。
「お前は自分の価値がわかっていない。いいか、矢川。お前は歩く金山。あるいは銀山だ」
「せめて金の卵を産む鶏とか生命体扱いを……」
「寿命がくるまで鉱脈が潰えない金山だ」
「聞いて?」
「座れ」
「はい……」
このまま押し問答しても終わらなさそうなので、指差された椅子に座る。
そう言えば、普段ならここらで止めに入ってくれそうな人が見えないのだが。
「あの、毒島さんは今日どちらに?」
「アーちゃんなら今日は塾だよー」
「あ、はい」
救いはないらしい。
そうしている間に、大山さんが目の前に机と椅子を持ってきた。
「じゃあ切るから、絶対に動くなよ」
「……やっぱりこの場で自分が」
「黙れ。1ミリたりとも無駄にはしない」
「うっす……」
だから目が恐いよ!?
観念して、右手から差し出す。大山さんはこちらの手首を掴んで、真新しい灰皿の上に誘導してきた。
そして、こちらに指に触れてくる。
ぶっきらぼうな話し方に反して、その手つきは非常に丁寧だった。まるで、割れ物でも扱う様に自分の指を優しく支える。
エリナさんと比べると、少しだけ硬い指先。それでも、彼女の温もりはたしかに伝わってきて……。
「おい」
「は、はい」
「揺れるな。切れねぇ」
「す、すみません……!」
冷静に考えると、同学年の女子に……というか身内でもない異性に爪を切ってもらうって恥ずかしいなぁ!?
仕事モードで張り付けていた仮面が剥がれ落ち、羞恥で耳が熱くなる。
昔テレビで見たアル中もかくやという程に指が震えてしまい、大山さんが舌打ちした。
「ご、ごめんなさいすみません!!」
「いいって事よぉ!」
なんでエリナさんが返事するんだよ。
「やりづれぇ。こうなったら力づくだ」
「ほえ?」
え、まさか爪を丸ごと引っぺがすとか、机に杭で掌を固定するとかしないよね!?いくら再生すると言っても、痛覚は普通にあるんですけど!?
反射的に腕を引っ込めようとしたが、『精霊眼』が彼女の動きを捉え思わず動きを止めてしまう。
───むにゅぅ……。
「よし、これなら切れる」
わきに、うでが、こてい、された。
こちらに背を向けてきたかと思えば、右前腕を大山さんが脇に挟んできたのである。その状態で指を掴み、空いている左手で爪を切る算段の様だ。
つまり、身長が低いのにでかい乳房の側面が、横乳が、自分の腕に思いっきり押し付けられている。
やっっっっわ!?あ、でも適度な反発も……。
いや何してんだこの人!?
「エリナ。どうせ暇だろ。矢川の肩押さえとけ」
「あいあいさー!」
そう言って、エリナさんは友の奇行を止めるどころか参戦。こちらの肩を後ろからガッチリと掴んでくる。
自分が椅子に座っている関係上、彼女の巨乳が後頭部に当たるか当たらないかの距離に!?
「お客さーん、肩こって……ないねー。京ちゃんストレッチとかしてるー?」
「い、いや、特には……じゃなくて、何を!?」
「いいね京ちゃん!忍者に身体の柔軟さは必須だよ!」
「忍者じゃねぇ。って、そ、それより!2人とも、近い!特に大山さん!」
「私、肩に手を置いているだけだよー?」
「後ろで大声だすな、鬱陶しい」
「お、大山さんにいたっては、む、胸が当たって……!」
「あ?……ああ。気にするな。アタシは気にしない」
「無理だよぉ!?」
後頭部の髪の毛の先が、エリナさんの胸に少しだけ当たっている気がする。当然それだけで感触なんてわからないのだが、『すぐ近くにある』という存在感だけで脳が変になりそうだ。
そして、それ以上のインパクトを叩き込んでくる大山さんの横乳。ガッチリと固定されている分、かなりハッキリとを押し付けられている。
あーいけません!これはいけませんお嬢さん方!もっと自分を大事にしてください!
なお、『彼女らを振りほどいて脱出できないのか』というご質問は現在受け付けておりません。諸事情により、私が動く事は不可能です。椅子から立ち上がるなど論外な事を、どうかご理解ください。
謎の返答文を思い浮かべるも、現実は変わらず。パチン、パチンという音と共に爪が切られていく。
そして乳の感触と気配に挟まれている。これが一番重要だ。なんならそれ以上に優先すべき情報があるか?いやない。
「……やっぱり爪まで頑丈だな。特製の爪切りだってのに、かなり力がいる。お前、普段はどうやって切ってんだよ」
「ひゃ、ひゃい……あの、風を纏わせた市販の爪切りで、強引に……」
「さては爪切り幾つも駄目にしてんな?つうか、やっぱりか。そんな方法じゃ、切った爪がきちんと全て回収できているか怪しいぞ」
「ごめんなさい」
自分でも何を喋っているのかわからない。脳のリソースが後頭部と右前腕に集中する。
「シーちゃん、耳赤いけど大丈夫?」
「……問題ないから、黙ってろ」
「ほーい」
さては大山さんも恥ずかしいな?じゃあやめましょうよこんな事!
聞こえないのか!?この理性がゴリゴリと電動ヤスリで削られる音が!!
聞こえませんよね!僕の脳内の事だもん!!
「よし。右手は終わった。次左手な」
「……はぃ」
解放された右手で顔を押さえ、やや前傾になりながら左手を差し出した。
少しだけ近づいた大山さんの頭から、シャンプーの良い香りがする。
……いざとなったら、自分で自分の顎を殴ろう。それしか対策が浮かばない。
『魔装』を展開し、籠手による打撃なら最近やたら頑丈なこの身でも一撃でノックアウトが狙えるはずだ。顎には防具がない。
社会的な死を避けるため、密かに自傷の覚悟を決める。
……いややっぱ無理では?自分自身にフルスイングは怖すぎんのよ。
「暇だし肩揉んだげるねー。全然凝ってないけど」
「ん……エリナ、矢川を揺らすな」
「ごめーん」
天国なのか、地獄なのか。生殺しという点を含めると、ギリ地獄だろう。
でも解放されてもまた来たくなってしまうタイプの地獄なので、蟻地獄の亜種かもしれない。
やめて……!このままだと僕、大山さんの事好きになっちゃう……!
* * *
遂に左手の爪切りも終わった様で、拘束を解かれた両手で顔を覆いながら体を折り曲げる。
羞恥で真っ赤な顔を隠したいのもあるが、とある生理現象により今は背筋を伸ばせない。
「矢川。足の爪も」
「それだけは……それだけは後生だから勘弁してください……!!」
今この試練をもうワンセットとなったら、きっと取り返しのつかない事になる。
脳内で悪魔が『やってもらえよ☆』とか、天使が『産めよ増やせよ☆』と言っているが、僕の理性はオリハルコンだ!
……天使も敵なの!?
「……わかった。でも、あんまり伸びている様なら言えよ」
「あの……自分で切るので、大山さん特製の爪切りとやらを売っていただく事は」
「駄目だ。お前の爪はアタシが切る。そして保存する。素材として使う場合は報酬も払うぞ。出世払いになるが」
「もう、好きにして……!」
報酬ならもうこれで十分とは、セクハラになりそうだからどうにか堪えた。
「京ちゃん」
肩を掴み、ギリギリの距離に乳の存在感を放ち続けていたエリナさんが隣にやってくる。
指の隙間から、彼女の方を見た。
「今の京ちゃん、敵に捕まったエッチなくノ一みたいだよ!」
「やかましいわっ……!」
なにサムズアップ決めてんねん。いっぺんマジで頭かち割ってやろうか。
でも出来ない。くそ、この人相変わらず顔が良い……!
「あとシーちゃんのママさんがずっとそこにいるんだけど、どうしたのかな」
「 」
思わず白目むくも、気合で黒目を引き戻す。直視しなくちゃ、現実を。
エリナさんの指摘に、40代ぐらいの女性がおぼん片手に苦笑しながら入って来る。
「いやぁ、悪いね。お父さんが『変な事をしていないか見て来てくれ』って言うもんだから、お菓子届けに来たのよ」
「何言ってんだ親父……」
ジト目を工場のどこかに向ける大山さん。
変な事はしていたと思うの。主に貴女が。
「久しぶりだね、エリナちゃん。そんで、こっちの彼が噂の矢川君?」
「お久しぶりですママさん!!」
「ど、どうも……」
元気よく挨拶するエリナさんの横で、ゆっくり立ち上がりながら頭をさげる。
……よし。流石にマイサンも空気を読んでくれた。
それはそうと『噂の』ってなに?
「お茶とお菓子ここに置いておくから、ゆっくりしていってね。いやぁ、それにしても雫ったら本当大胆ねぇ。エリナちゃんも、中学まで女子校だったんだって?あんまり男の子をからかっちゃ駄目よ?」
「わっつ?私、京ちゃんをからかってないよ?」
「アタシは必要だからやっただけだ」
「あー……」
大山さんのお母さんが、こちらに哀れみの目を向けてくる。
わかって、いただけましたか。
「何というか、頑張りなさいね?学生で妊娠は大変だよ?あたしの昔の友達に、やらかした子がいてねぇ……」
「お袋!?」
「 」
わかって、いただけてないな?
硬直する自分をよそに、流石に顔を赤くした大山さんがお母さんの背を押して作業スペースから押し出そうとする。
「変な事言わないでくれ。アタシと矢川はそういうんじゃない!エリナは知らんが、あいつはアレだからたぶん違う」
「アレ。そう、忍者だね!」
「黙ってろ」
「くぅん……」
押し出すと言ってもあまり力は込めていないようで、彼女のお母さんは苦笑を浮かべる。
「はいはい。あとは若い子だけでね。お父さんには適当に言っとくから」
「うっさい!お茶と菓子はありがとうだけど、これ以上余計な事言うな!」
「じゃ、ごゆっくり~」
カーテンから押し出されたお母さんを見送り、大山さんが肩で息をする。
「ほんと……ほんと何言ってんだ……!」
「でもシーちゃん」
「なんだよ」
「かなり大胆な事していた自覚はあるんじゃないの?お顔赤かったし」
「……っ!」
わぁ。髪の毛と同じぐらいに真っ赤っか。
そういう風にされると、こちらも顔がまた熱くなるのだが。
「……座れ、矢川。髪を梳いてやる」
「は、はあ……」
若干涙目でこちらを睨みつけてきた大山さんに、反論もできず着席する。
「エリナ。この前お前の手裏剣が置いてあった所に鎧があるから、持って来てくれ」
「はーい!」
エリナさんが歩いて行った後、こちらの背後に回った大山さんが髪に櫛を通していく。
「……腹立つぐらいサラサラだな」
「ど、どうも……?」
異性に髪を梳いてもらうなんて、昔母親にやってもらって以来か。
最近は全身が頑丈になったせいで、この前床屋さんに行っても髪を切ってもらえなかったのを思い出す。
結局、『魔装』のナイフを使い自分で適当に切ってしまったが。
「……あちこち雑だな。さては自分で切っただろう」
「そういうのも、わかるんですか?後日、素材として使える様に取っておいてはありますが……」
「おう。アタシでもこれぐらいわかるっての。いくら色気がなくってもな」
「……?」
色気がない?誰が?まさか、文脈的に大山さん自身の事を言っているのだろうか。
「さっきはすまなかったな。あんまり、いい気分じゃなかっただろ」
「いえ、気持ちよか……何でもないです」
やべぇ。セクハラ発言しかけた。
「……まあ、でかい方だとは思うが。アタシはガサツだし、あんまりモテるタイプじゃない自覚はあるぞ。エリナみたいにキラキラしていないし、愛花みたいにお淑やかでもない」
「いや、それはタイプの違いというか……大山さんも、十分魅力的な女性だと思いますよ?」
どうにか仕事モードに戻りながら、本音を伝える。
「というか、そういう自嘲は多くの敵を作るのでやめた方がいいかと。クラスの大半の女子が、鉈を片手に襲い掛かってきますから」
「お前の中で女子ってどういう存在なの?」
「……修羅?」
流石に鉈は言い過ぎたが、なんか、こう……殺伐としているイメージがある。
男子間でも出る杭は打たれるし陰湿な虐めはあったりするけど、女子のソレはもっとえげつない……的な。
偏見かもしれないが、個人的にはそう思っている。
「まあ……。目が肥えているだろうお前が言うのなら、信じてやらんでもない」
「……確かに、最近目が肥えているかもしれませんが。それを大山さんが言いますか……」
エリナさんにアイラさん、三好さんに、毒島さんと大山さん。
最近知り合った異性が、やたら顔面偏差値が良い。覚醒者は美形が多いと言うが、それにしても基準が狂いそうである。
これでテレビを見るとアイラさん級の美女エルフがちょいちょいいるのだから、今の日本って凄い。
……大山さんの自己評価が低いの、その辺が原因では?
「口説いてんのか?」
「ち、違います!」
「知ってるよ。短い付き合いだが、お前にそんな度胸はない」
「……うっす」
事実ではあるが、そうもハッキリ言われると悲しいものがある。
ゆっくりとした櫛の感触に、つい瞼が重くなってきた。
「なあ、矢川」
「はぁ……」
「愛花の事を、どう思う?」
「は?」
なぜ、突然毒島さんの話に?眠気で何か聞き逃したか?
背後にいる大山さんの表情はわからないが、その声は静かだけど妙に真剣みをおびている。
「お前が、あいつを恐がっていない事は知っている。いや、女子というカテゴリーで警戒しているっぽいが。個人としては別にそうでもないんだろう?」
「それは、まあ……はい」
「今後も、そうしてくれ」
「……はい」
どうにも要領を得ない。何が言いたいのか。
「あいつは、家族に恐がられている」
かと思ったら、突然ぶっこんできた。
「覚醒者になって、呪いの力を知って。愛花の家族はあいつを化け物呼ばわりしたんだとさ。非覚醒者から見たら、呪いっていうのは恐ろしい魔法だからな」
「……そうかも、しれませんね」
噂だが、覚醒者なら多少身体が重くなる程度の呪詛でも、非覚醒者が受ければ致命傷になると聞いた事がある。
ただの中二病かと思っていたが、家族となると……ちゃんと、理由のある中二病だったのか。
「今も、家族とは距離を置いているらしい。一緒の家には暮らしているけど、碌に顔も会わせないそうだ」
「……それ、かえって疑心暗鬼になるやつでは?」
「かもな」
背後から、吐き捨てる様な笑いがもれる。
「あいつは、理由もなく人を傷つける奴じゃない。なのに、勝手に理由を作って、勝手に怯えてやがる。はた迷惑な奴らだよ」
「……でも、気持ちは少しだけわかります」
「……かもな」
もしも自分が非覚醒者だったら、毒島さんを恐がっていたかもしれない。
こうして彼女の家族に対して良くない感情を抱くのも、自分が安全だとわかっているからだ。
彼女の呪いで死ぬ事はない身体だから、冷静に人格で判断出来ている……と、思う。
「とにかく、それだけだ。ああ見えて不器用な奴だから、今後もいつも通り接してやれ」
「……お涙ちょうだいな話は、お嫌いだったのでは?」
「うっせぇ」
ぐりぐりと、櫛で頭頂部を突かれる。痛みはないが、くすぐったい。
「お待たせー!持ってきたよー」
「おう。すまんな」
元気よく戻ってきたエリナさんも交えて、白蓮に装着する鎧に関して話をした後今日は解散となった。
自称忍者とバス停に歩きながら、少しだけ今日の事を振り返る。
マタンゴのダンジョンが枯渇したかもしれない事。押し付けられたオッパイの事。後頭部ギリギリにあったオッパイの事。エリナさんは女子校の出だという事。毒島さんは理由のある中二病だという事。前腕に押し付けられたオッパイの事。後頭部の髪の毛に触れそうだったオッパイの事。大山さんは自分の顔とオッパイを過小評価している事。オッパイは柔らかい。
……うん。
オッパイの記憶に他の記憶が弾き出されそう。柔らかくも心地よい反発。この感触だけは、絶対に忘れない。
「どったの京ちゃん。空を見上げて」
「いや、少し精神統一を」
「?」
煩悩ってヤバい。改めてそう思った。
今からでも除夜の鐘鳴らしてくれねぇかな。でもアレ、効果ある気がしないんだよなぁ。
そもそも人間の欲が108とは思えない。絶対53万はある。
読んでいただきありがとうございます。
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Q.大山さんの家って何の工場?
A.自転車の部品工場をイメージしていますが、作者が工場エアプなので間違っている可能性はあります。