第百七十九話 夜の中の太陽
第百七十九話 夜の中の太陽
「エリナさん、ミーアさん」
「おっけー!」
「……まさかとは思いますが」
剣を腰だめに構え、膝を曲げる。
同時に、12人の戦士達もその瞳を輝かせ───。
「半分、頼みます」
「任されたぁ!」
吶喊。
12の鋼が振り下ろされ、1振りの鋼が舞い上がった。
槍の様に長い矢を剣で払いのけ、突き出された槍をバレルロールで回避。横薙ぎの剣を刀身で受け止める。
即座に挟み込む様に迫る斧を上に避け、後頭部狙いのメイスを裏拳で弾いた。刹那、迫りくるシールドバッシュ。
暴走トラックじみた体当たりに、両足を合わせる。衝撃を膝で吸収し、反発。蹴りつけて大きく距離をとる。
一時的に敵の上をとり、片手半剣を両手で振りかぶった。
「燃えろぉ!」
集束から放出まで、およそコンマ1秒。威力よりも速さを優先したが、それでも鉄程度なら溶かして潰せる。
風と炎の鉄槌に、戦士達は。
───ゴゥッ!
矢の一撃でもって、答えた。
「っ!」
眉間へ迫るそれを仰け反る様に回避し、風圧でバランスを崩しながらも反転。背を向けて更に距離をとった。
背後を一瞥すれば、自分がぶつからなかった側。残り6体と、『ブラン』や『右近・左近』が交戦している。
追いかけてくる5体。メイス使いは、運よく炎が直撃し燃えてくれたか。そして、向こう側で戦っていた6体も視線をこちらに向けている。
「本当にっ」
だが、ゴーレム達の後ろ側にて。
「無茶ばかりですね、君は!」
穏やかな川の水が、大蛇となって鎌首をあげた。
爆発でも起きたように舞い上がる水飛沫。流動する蛇はその身をくねらせ、ゴーレム達と斬り結ぶ戦士達を囲った。
ありがたい。更には周囲の石で出来た建物群まで形を変え、石造りの兵士となって参戦していく。
さて、こちらは……っ!
「とぉ!?」
背中を射抜かれかけ、右側へ転がる様に飛行。フリューゲルをかすめた矢が、偽りの空に消えていく。
追いかけてくる5体の戦士達。その4つ目に明確な殺意の炎を燃やし、羽もないのに自分と変わらぬ速度で飛んでいた。
回避した事で僅かに速度が緩んだところへ、容赦なく人外どもの得物が振り上げられる。
尋常ではない速度のランスチャージを、身を捻って回避。真上からの斧を剣で受け止め、衝撃に逆らわず降下する。
落下先に待ち構えていた剣士の刃を籠手で受け、その反動も使い地面スレスレを飛行。お返しとばかりにナイフを投擲するが、盾使いに阻まれた。
左右を似た様な作りの建物が並んでいる。宮殿の一部を切り取ってきたかのような、豪奢な外観のアパートらしき構造。無人のそれらの間にある道路で、時代錯誤な武器を使う者達のドッグファイトが始まった。
撃ちおろされる矢を予知頼りに回避すれば、その度に白い石畳が粉砕される。戦車砲と変わらない破壊力のそれらを掻い潜れば、いつの間に回り込んだのか。前方の十字路から槍使いが飛び出してくる。
振るわれた横薙ぎの穂先を、剣で打ち落とす。反動で上下逆転した体勢から、横回転し裏拳を顔面に叩き込んだ。
硬い。骨に響く感触はしたが、この程度で怪物は止まらない。
案の定、怒りの声をあげ槍使いが石突を繰り出してくる。鍔で受け、減速せずに後退。上から降って来た剣士の刃を籠手で受け流せば、追撃の槍が眼前に迫っていた。
兜をかすめ、火花が散る。衝撃で視界が揺れた瞬間、近くのアパートの壁を砕いてタワーシールドが突っ込んできた。
高度を僅かに上げて避ければ、盾使いの後ろに控えていた斧持ちが飛翔。大振りな一撃に回避が間に合わず、刀身で防ぐ。
衝撃に耐えられず、屋根より高い位置に押し上げられた。瞬間、横合いから紫色の雷を纏った矢が飛んでくる。
「づぅ!」
精霊眼の予知に従い、どうにか刀身を合わせた。
重い。先ほどまでが戦車砲なら、これは戦艦の主砲だ。
両腕から激痛がのぼってくるより先に、刀身を軋ませながら受け流す。軌道が逸れた矢はアパートの壁を撃ち抜き、そのまま数棟を貫通していった。
轟音が遅れて響く中、瓦礫を避けて飛行。背後から4つの魔力が追いすがり、その少し後ろを1つの魔力がついてくる。
碁盤の様に直線と直角が続く道路を、ひたすら矢から逃げながら飛行。槍使いが高度を落とし、飛翔の加速を使ったまま石畳を踏み砕いて疾走してくるのを感じ取った。
あいつが一番速い。道路を走っていたかと思えば壁に飛び移り、地面に肩を向けながら駆けてくる。
アパートの切れ目で建物から跳躍し、横合いから突きを放ってきた。
腰を捩じり、どうにか回避。すれ違い様に槍使いは柄を回転させ、石突をこちらの側頭部目掛けて振るってきた。
寸での所で左腕を差し込み防御。すぐさま反撃の斬撃をと剣を振りかぶれば、追い付いてきた剣士のロングソードに止められる。
瞬間的に両手が塞がれた所へ、斧使いが突撃。袈裟懸けの一撃を、左右の腕から風と炎を最大出力で放出する事で強引に後退し避けた。
3体とも無理矢理距離を取らせた瞬間、大きな影が差す。見ずとも、視えた。身の丈程もある盾が、上から降ってくる。
「くっ!」
回避すれば次の瞬間射抜かれる。選択の余地なく、剣を掲げ左手で刀身を握った。
ハーフソードにて受けるも、止められない。石畳へと叩き落され、五体がバラバラになった様な衝撃が襲ってくる。
「かっ……!?」
バウンドし、開けた視界。周囲を瓦礫が舞い、直下には巨大なクレーターがあった。
そして、横合いから繰り出された槍の穂先。思考するより先に籠手で受けるも、高速で繰り出された2発目、3発目は防げず兜と胸甲に直撃した。
強い衝撃が襲い、脳が揺さぶられ肋骨がへし折れる。地面と平行に吹き飛ばされながら、砕かれた兜の破片が置き去りになる光景を見た。
頭が軽くなり、右胸に違和感。兜が全損し、胸甲に穴が開いたのだと半瞬遅れて理解した。
兜との間にあった布も解け、どこかへ飛んでいく。それに構っている余裕もなく、『S』字を描く様に後退。自分が先ほどまでいた位置を、紫色の雷を纏った矢が通過した。
頭部と右胸。次これらの位置に攻撃を受ければ、自分は死ぬ。額から流れてきた血が、鼻の横を通り過ぎ口端を濡らした。
剣を片手に握り、背を向けて飛んでいく。追撃の矢を予知頼りに避けながら、小さく深呼吸をした。
3人と3機がかりで討ち取った融合体。その『羽化したて』ではない5体を相手に、自分は勝てるのか?
───勝てる。
速度を1段階上げる。細かい制御を放り捨て、最大加速。道を進んだ先には、この大都市の中でも一際巨大な時計塔がある。
見る者全てが圧倒される様な、絢爛かつ荘厳な姿。だが、それに見惚れる暇はない。
一気に高度を上げる。時計塔の針の下を目指し、加速し続けた。
真っ直ぐに飛ぶ自分は、さぞや狙い易いだろう。膨大な魔力を感じ取り、音を置き去りにした一矢が放たれたのを察知した。
考えてから避けるのでは遅い。目の奥を駆け巡った予知を視た瞬間、バレルロール。
胸甲をかすめて、紫電の矢が通り過ぎる。時計塔を貫通して余りある破壊がもたらされ、僅かに遅れて轟音がフロアを包み込んだ。
「ぐぅぅ……!」
風圧で吹き飛ばされそうになるのを堪え、軌道を維持。今しがた出来上がった大穴を目指す。
土煙がもうもうと広がる中へ飛び込み、構わず直進した。
時計塔を通り抜けた直後、足を折り畳みながら縦回転。風を踏みつけ反転し、肩から時計盤に体当たりをする。
「おおぉぉぉ……!」
低く唸り声を上げながら、魔力を最大出力で解放。バキバキ、ミシミシという音が、通り抜けた大穴を起点に広がっていった。
自分の背後を飛んでいた5体の戦士。それ目掛けて時計塔の上部を押し倒す。
耐久力の限界を超えれば、後は重力もあって凄まじい速度で大質量の物体が奴ら目掛けて倒れ込んだ。
咄嗟に左右へ回避したのは、槍使いと剣士。盾持ちと斧使いは位置的に避けるのが遅れる。
それでも、盾持ちは受け止めて見せた。この、何トンあるのかも考えるのが馬鹿らしくなる大質量を、盾1つで防いだのだ。
一瞬だけ静止する、時計塔の上部。すぐに盾との接触面以外が自重で崩壊する中、間髪入れずに左腕を振り上げた。
最大出力……を、超え。魔道具の許容範囲を上回る魔力を送り込む。
腕輪が赤熱し、掌に膨大な熱量の塊が生み出された。
「おぉらあああああ!」
それを、眼下のデカブツへと振り下ろす。
爆散する時計塔の上部。吹き飛んだ瓦礫が挟撃を狙う槍使いと剣士を妨害し、自身は粉塵の中へと降下する。
視界が塞がれようが、魔力の位置はわかっていた。斧使いとの間に盾使いを挟む様な軌道で急接近。奴がタワーシールドをこちらに向けるより、速く……!
盾使いの4つ目と視線がぶつかった瞬間、剣を振るう。
一閃。丸太の様に太い首を、燃え盛る剣が切り落とした。
勢いそのまま急降下し、牽制の矢を置き去りにする。地面スレスレで上体を起こし、足裏から石畳に。
ブーツの裏で地面に2本線を引きながら石礫をまき散らして、横へ跳んだ。
次々押し寄せるGに視界がぐらつくも、耐えられない程ではない。『心核』の再生力を信じ、全身を振り回していく。
アパートの中は、何もない。外観だけ綺麗なだけで、内側はただの箱だ。壁で部屋ごとに仕切ってはあっても、扉すら嵌められていない。
奴らはこちらの動きを学習している。自分だけではなく、この地に踏み込んだ全ての者達の戦い方を。
だが、生憎と成長するのはこちらも同じ。竜のすぐ傍というのも重畳。出し惜しみ無しで、戦える。
何より───自分はまだ、『市街戦』のやり方は見せていない。
東京事変の戦いを思い出しながら、床を踏み砕いて飛翔。左腕を頭上に掲げ、屋根をぶち抜いていく。
遅れて、部屋に突入してきた槍使いと剣士。そして、斧使い。それらを置き去りに、建物の上へ。
偽りの夜空で、紫電の輝きを見た。巨大な弓を引き絞り、星々を背にした弓兵。その4つ目の見開きっぷりからして、どうやら上から出てくるのは予想外だったらしい。
すぐさま弓を構え直し、鏃を自分に向けてくる。そこへ、正面から突撃。下の3体が追い付いてくる時間は、与えない。
放たれた紫色の雷。音を置き去りにしたそれへと、大上段から剣を振り下ろす。
両腕に伝わってくる衝撃。両断などという、器用な真似は出来ない。だが、叩き落すだけなら……!
「はああああああっ!」
巨大なワイヤーでも弾けた様な音が周囲に響き、紫電は鏃と共に四散した。
減速せずにつき進む自分に、弓兵は弓を捨てて矢を握り振りかぶる。殴り掛かる様に鏃を振りかぶる戦士へ、容赦なく剣を振るった。
鋼の刀身が、その首を刎ねる。これで、3つ。
弧を描くようにそのまま飛行すれば、猛追してくる3体の怪物ども。その4つ目を星々の下で輝かせ、月光を纏いながら自分へと迫っていた。
こちらの背後にピッタリと付き、距離を詰めようとしてくる。速度差で槍使いが僅かに飛び出してきた。
そのタイミングで、急角度で上を目指す。風を蹴りつけ、足から伝わる激痛に涙が出そうになりながら耐えて、跳んだ。
脚力と風でほぼ直角に急上昇した自分に、槍使いが同じ軌道で続く。斧使いと剣士は、坂でも上る様な軌道で迫っていた。
真下を飛ぶ槍使いの位置を魔力で把握し、右手の、いつへし折れてもおかしくない剣を手放した。
急上昇したばかりの槍使いが、自分から刀身へと顔面を差し出す。
『GA……!?』
短い断末魔の声をあげ、その頭蓋が割れる。直後、刃に残された魔力が破裂して爆炎が包み込んだ。
残り、2つ。
月を目指す様に飛ぶ自分へ、剣士と斧使いは速度を緩めず追いかけてきていた。剣もナイフも失い、無手となったこの身を斬殺しようとしている。
追い付かれれば、死ぬだろう。
だったら、こちらから行ってやれば良い。
上体を仰け反らせ、全身で風圧を受け止めた。視界が赤く染まり、意識が少し遠のく。
だが、自分が切り殺される予知が叩き起こしてくれた。両足を折り畳みながら、体を捻る。
魔力の風を踏みつけ、急停止。骨が折れる音と感触が押し寄せるが、幸いな事に脳内麻薬が誤魔化してくれた。
両足の力を解放し、追いすがる2体へと降下。同時に、左手へと魔力を回す。
月光を背にした状態。陽光と違い、奴らの目を眩ませるには足りないだろう。
だが、この偽りの夜に慣れた目にこの輝きはどうだ?
掌に生み出した、炎の塊。『炎馬の腕輪』が悲鳴をあげ、表面を溶かしながらも魔力を変換し人の頭ほどもある火球を生成した。
引き絞る様に構えた事で、自分の背後に出現した極光。それが、4つ目の怪物どもを鈍らせた。
迎撃が遅れる。その好機を逃さず、剣士の顔面へと火球を叩き込んだ。
熱線が解き放たれ、怪物の首から上を塵芥へと変える。衝撃で四散するその体の中で、鋼の輝きへと右手を伸ばした。
斧使いが、既に得物を振りかぶっている。それがこちらに届くより先に、五指が柄を捕らえた。
塩に変わるまでの、刹那。長剣を振るい、斧の柄へとぶつける。
衝突し、刀身が軋みをあげた。崩壊が始まる刃は脆く、瞬く間に斧を通過させるだろう。
それより早く、くるり、と。剣を回した。
斧の柄を上に乗せたまま、刀身が反転する。下からの斬撃へと変わる刃。『バインド』。
切っ先が斧使いの顔面を縦に割り、斧に加えられていた力が僅かに緩んだ。
『GAAAAAAAAA!』
だが、すぐさま奴は雄叫びと共に柄を握り直し、刃を振り下ろす。
塩へと変わった剣を手放し、半身となってその一撃を回避。同時に、再度『炎馬の腕輪』へと魔力を流し込んだ。
───ヒヒィィィィィンンンンッ!!
馬の嘶きの様な音と共に荒れ狂う紅蓮の炎。集束させていないそれを、斧使いの横っ面に叩きつけた。
密着状態で、風と混ぜる。相手が斧を横薙ぎに振るうより先に、熱線が耳の穴から入り込んで脳を蹂躙していった。
騎兵の様な形をした炎が、怪物の頭を突き破って飛んでいく。脳の一欠けも残さない。
完全に頭部を焼き尽くされた異形の戦士は、地面へと真っ逆さまに落ちて行った。
石畳に、同質量の塩がぶつかる。
「ふぅぅぅ……」
吐き出した息が、熱い。喉が渇く。眼球まで茹だってしまいそうだ。
休む間もなく、『魔装』を再構築。ボロボロのブーツも、脛当ても、罅と穴の出来た胸甲と籠手も、砕け散った兜までも元通りに。
そして、腰の鞘から剣を抜く。フリューゲルをなびかせ、エリナさん達の元へと向かった。
ちらり、と。腕輪に視線を向ける。そこには、元々あった流麗な金色の装飾はなくなり、溶けた後のある表面が晒されていた。
雫さん曰く、芯の部分が無事ならこの状態でも数回の戦闘は耐える。であれば、問題ない。
エリナさん達の姿が見えてくると、轟音が出迎えた。
近くの建物にぶつかり、瓦礫にぐったりと倒れる4つ目の戦士。その胸には、人の胴が入りそうな風穴が空いていた。
そして、石畳に広がる他5つの塩の山。ゴーレム達は満身創痍ながら、かすり傷程度のエリナさんとミーアさんが立っている。
こちらの姿を向こうも捉え、杖を支えにしたミーアさんが呆れ顔を見せてきた。
「本当に……無茶苦茶ですよ、この珍獣」
「でも上手くいきましたよ」
「だね!ハーッハッハッハ!」
「もう、この2人は……」
腕輪以外は万全となった自分に、頭を抱えるミーアさん。そして、腰に手を当てて高笑いをするエリナさん。
彼女らも、まだ戦えそうだ。ゴーレム達も後1回か2回の戦いなら耐えられるだろう。
視線を、仲間達から外し。
この空間で、否。この迷宮で、何よりもその存在感を放つ魔力へと目を向ける。
──────GUOOOOOOOOOOOO……ッッ!!
咆哮が、轟いた。
この世ならざる雄叫びに街が震え、魔力が渦巻き、偽りの空に罅が入る。
だが、今更この程度で腰が引けるはずもない。既に、自分達はこれを浴びている。
……うん。
「やっぱこぇぇ……」
見栄を張った。超怖い。
もう帰って良いかな……仕事は十分に果たした気がするんだよ。超がんばったよ、僕ら。
あ、ダメだわ。出口のゲート、奴の向こうじゃん。
「へーい、京ちゃん!」
「っと」
背中を強く叩かれ、思わずつんのめる。
視線を隣に向ければ、太陽の様な笑みがあった。
「いけるかい?」
「───当たり前でしょう」
もう1度、見栄を張った。
男と言う生き物は、つくづくバカな存在で。
気になる相手の前だと、こうも格好つけてしまうのだと実感する。
どのみちあのクソトカゲの脳天をかち割ってやらねば、腹の虫が治まらぬと。こうしてやって来たのだ。
最後まで、走り切ってやる。
「もう少し、無茶をしなくちゃですね」
エリナさんの反対側に、ミーアさんが立つ。
「『インビジブルニンジャーズ』の底力、見せてやりませんとな!!」
いつものふざけた雰囲気で、エリナさんが笑う。
「……まあ、全員。命は大事に」
自分も、普段通りに。ため息交じりに剣を担ぐ。
この大都市の中央。中世ヨーロッパじみた街並みの中にあるとは思えない、高層建築の中。
白い竜が、首を上げる。
ここまでのは、ただの『いびき』の様なもの。奴の目が、ゆっくりと開かれる。
その瞳が、確かにこちらを捉えた。
───GGGYYYYAAAOOOOOOOOOッッ!!
白い竜。移動迷宮。環境侵略型モンスター……『グイベル』。
その威容を見上げながら、自分達は前へと踏み出した。
まだ、遠い。でも、あと少し。
この冒険の、終着点を目指して。
読んでいただきありがとうございます。
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