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【書籍化決定】コミュ障高校生、ダンジョンに行く【本編完結済み】  作者: たろっぺ
最終章 コミュ障たち、現代ダンジョンに行く
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第百六十四話 大いなる蛇

第百六十四話 大いなる蛇




『シャアアッ!』


「らぁああっ!」


 迫りくる毒針の軌道上に、鉄槌の様に振るう柄頭を『置く』。


『精霊眼』の予知通りの軌道で突き出されたムシュフシュの尾と柄頭が衝突し、轟音を上げて薄茶色の外骨格が飛び散った。


 苦悶の声をあげながらも前足の爪を閃かせ、こちらへ飛びかかってくる最古の竜種。その脳天目掛けて、風と炎で加速した剣を振り下ろす。


 ライフル弾すら通さない鱗を、鋼の柄頭が打ち砕いた。その下の頭蓋骨を割り、脳を潰しながら床に叩きつける。


 粉塵が舞う中を突っ切り、次の敵へ。


 ピット器官か、はたまた別の手段か。相手は視覚に頼らずこちらの位置を把握している。見えないはずの自分目掛けて迎撃に動いた尾を、こちらもまた魔力の流れでもって認識。


 左膝を床につけ、折敷めいた姿勢で毒針の下を潜り抜けながら柄を振り上げる。


「じぃぃぇぇえあああああ!!」


 柄頭が袈裟斬りの角度でムシュフシュの首に直撃し、そのまま風と炎の加速で強引に床へと叩き伏せた。


 尾を含めれば馬やクマすら超える巨体が床を砕き、そのままバウンドして数メートル先の壁に激突。動かなくなった。


 振り抜いた姿勢から、止まる事なく勢いをつけて立ち上がりながら反転。別の敵へと視線を向けるが。


『ジィ……!?』


 強靭な尾は氷と刺又で封じられ、毒霧を吐かんと開けた大口には『ブラン』の戦斧が振るわれる瞬間だった。


 風を纏った肉厚の刃が牙をへし折り、減速する事なく上顎から眦にかけてを切り飛ばす。


 戦斧を振り抜いた姿勢のブランが、背後から飛んできたワイヤーで引っ張られた。直後、頭部の上半分を失った状態でムシュフシュがその前足で床を叩き割る。


 そのまま2歩、3歩と歩いた後横転し、塩へと変わり始めた怪物。視界内の敵が全て白くなっていくのを確認し、武器を構えたまま視線をエリナさんへ。


「今ので、この辺は最後だね!皆お疲れ様!」


 その言葉を聞いて肩から力を抜き、剣を持ち直して鞘へと納める。


「うん、お疲れ様」


「お疲れ様です。一旦、休憩にしましょうか」


「さんせーい!」


「はい」


 ミーアさんの言葉に頷き、エリナさんの隣で壁に背中を預けた。


 両掌を見下ろし、グーパーと開閉し状態を確認する。


『お疲れ諸君。だが京ちゃん君、大丈夫かね。殺撃?とかいう技、指が痛そうだが』


「まあ、少し。籠手のおかげで指が切れる事はありませんが、炎と風を使う分けっこう食い込むので」


 イヤリング越しに、苦笑を浮かべる。


 もしも防具なしでやっていたら、今頃指が千切れていたのは間違いない。モードシュラッグやハーフソードの構えは、基本的にガントレット装着を前提とした型である。


 それでも痛いものは痛いのだが。幸い、『心核』の治癒で残留する痛み以外は万全である。


「戦闘に支障はありません。このままいきます」


「回転だよ京ちゃん!打撃は遠心力を上手く使うのが大事だからね!ぐるんぐるんだよ!」


「うっす」


「偶に思うのですが……エリナさんと京太君は戦闘スタイルがまったく違うのに、先輩後輩みたいなやり取りをしますよね」


「私が先輩か!よし、肩を揉め後輩!」


「昭和かよ。たしかに戦い方は全然違いますが、純粋な技術は圧倒的にエリナさんが上です。術理は違えど、結果的に『近づいて相手を倒す』のは同じですから。基礎の部分で参考になります。あと、この人幅広く色んな戦い方知っているので」


「どや!」


 エリナさんがドヤ顔で胸を張り、ミーアさんが『なるほど』と頷く。


「そんな後輩にこれを上げよう!焼きそばパンもいる?」


「あ、どうも。パンは結構です」


「おっす!」


「いつの間にか先輩後輩が交代している……」


 エリナさんから受け取った水筒で水分補給し、小さく息を吐いた。


「それで、アイラさん。今ダンジョンのどの辺りでしょうか」


『うむ。かなり奥の方に来ているね。もうそろそろボスの部屋だろう』


「了解」


 探索開始から、約1時間。


 道中で出口付近にマーキングを済ませ、ボスが出現する場所に向かっている。


 ケルベロス同様、このダンジョンの主も基本的に大きく移動はしない。新しくボスモンスターが『生産』されたら、押し出される様に徘徊を始めるが。


 自衛隊の話から、現在は迷宮に1体のみ生息している。戦いを挑むのなら、今が好機だ。


『……しかし、本当に戦うのかね。ムシュフシュ達だけでも、レベル上げは出来そうだが』


「そうかもしれません。ですが、出来るだけハイペースでいきたい。学校もあるので、ずっとダンジョンに籠るわけにもいきませんから」


『正直、じゃあ学校やめたらと思うのだが。日本がどうにかなったら、学歴も何もないだろうし』


「いやあるでしょ。今後なにかあって海外にトンずらした時とか。そうでなくとも、いつか自衛隊がダンジョン攻略で一気に躍進して冒険者が廃業になったりとか。滅茶苦茶必要じゃないですか、学歴」


『夢のない話だなぁ』


「現実ですからね」


 こんな世の中だ。何が起こるか、わかったものではない。『覚醒の日』から、『流石に起きないだろう』って事がよく起きる。それこそ、夢の様に。悪夢かそうでないかの比率は、微妙な所だが。


 何にせよ、備えは大事である。最低でも高校ぐらいは出ていないと、将来が不安過ぎてゲロ吐きそうだ。


「私は良いと思いますよ。それに、京太君やエリナさんとキャンパスライフとか楽しそうですし!」


『は~ん?2人は私の後輩になるのだがぁ?大学生活における癒し兼避難所になってくれるのだがぁ?』


「いや。ミーアさんはともかく、アイラさんはその頃とっくに卒業でしょう」


『院に行くのでセーフ!』


「院生が新入生を避難所にするな。むしろ助けろ」


『ほら、院生は色々忙しいから。たぶん』


「たぶんて」


「はい!パイセンの大学に忍者学部ってありますか!?」


「あってたまるか」


『ギリギリ、ないねぇ……!』


「ギリギリではねぇよ。絶対だよ」


「惜しい!」


「もうそれでええわ」


 ため息を吐き、水筒の蓋をしめる。


「エリナさん、お願い」


「応!京ちゃん、一緒に忍者学部で頑張ろうね!」


「1人でいけ」


「!?」


 何やら裏切られたとでも言いたげな顔の自称忍者を背に、軽く肩をまわす。


「そろそろ、探索を再開しますか」


「そうですね」


『右近』もとっくにドロップ品を回収し、ブラン達と見張りをしてくれていた。


 深呼吸を1回。ルーティーンを挟んで、意識を切り替える。


「エリナさんは、どう?」


「もちのろんだよ!やーってやるぜぇ!」


 いつもの元気な返事に頷き、イヤリングへと意識を向ける。


「それでは、行きます」


『ああ。くれぐれも注意してくれたまえ』


「おっすパイセン!派手なのかましてやるからね!楽しみにしててよ!」


 無駄にキレのあるシャドーボクシングするエリナさんに苦笑した後、ゴーレム達に声をかけて再びダンジョンを歩き始めた。


 それから、10分。1回戦闘があったものの、難なく突破。


 長い緩やかな階段に突き当り、それをゆっくりと下っていく。


 5分ほどして、石畳に足をつけた。壁にある燭台では照らしきれないが、80メートルはあろう高さの天井にある巨大な光球によって全体を見渡す事ができる。


 この場所を言葉で表現するのだとしたら、枯れた超巨大なプールか、あるいは朽ち果てた港か。


 どちらにしろ、かつては水が大量にあったのだろう空間。自分達が立っているのは、船着き場に似ている。


 数メートルはある段差を跳び下り、ごつごつとした岩肌が露出した地面に着地。更に進んでいく。


 階段から随分と離れた頃。ついにその時はやってきた。


「くるよ!正面、下から!」


「了解!」


 エリナさんの声に合わせ、全員が一斉に後ろへ飛び退く。


 次の瞬間、数十メートル先の地面が爆発した。


 違う。巨大な何かが、硬い岩の地面を突き破ってきたのだ。


 ずるり、と。地面に空いた大穴から姿を現す大蛇。胴の直径は5メートルを超え、長さに至ってはその10倍はあるだろう。


 巨大すぎる体躯を瞬く間に地上へと……かつて水に溢れていた場所に這い出した怪物。蛇に酷似しているが、胴体と同じ太さをした腕の様な前足で岩の大地を踏みしめた。


 新緑の鱗に、口端から漏れ出る紫色の霧。黄金の様に輝く両の瞳。その牙は人間数人分の長さと太さがあり、それに劣らぬ威容を放つ2本角が後ろに向かって伸びている。


 明らかに、人の身で、それも剣で挑む様な体格ではない。



『バシュム』



 ティアマト神が産みだした11の怪物が1つにして、この世の毒蛇全てを具現化したモノ。


 動物も人も飲み込んで、神格であっても討伐は難しいと篭絡を選んだ大いなる蛇。海の支配者。


 それと同じ名をつけられた眼前のモンスターは、あまりにも大きすぎる。


 身じろぎ1つで大気が震え、巨岩が潰れた。吐き出す息は烈風となり、地響きの様な音をたてる。


 巻き起こった土煙は未だおさまらず、その威容を際立たせる様に舞ったままだ。戦車すら飲み込める怪物は、縦に長い瞳孔でこちらを睨みつけている。


 ムシュフシュと比べても、あまりにも濃密で殺意に満ち溢れた魔力。


 それに、ただ静かに剣を構えた。柄を握り、切っ先を大いなる蛇に向ける。


 怖い。だが……。



 あの時の、白い竜ほどではない。



『───オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ!!』



 咆哮が地割れを作る中、跳躍。そのままフリューゲルを使い飛翔し、一直線にバシュムの顔面へと斬りかかる。


 黄金の瞳は正確にこちらの動きを捉え、左の前足を掲げた。


 速い。巨体に見合わぬ機敏さで盾代わりに上げられた前足に構わず剣を振り下ろすが、炎と風を纏った上で鱗1枚を裂くにとどまる。


 そのまま力任せに振り払われるが、無理に逆らわず後ろへ飛んだ。


 予想はしていたが、これは殺撃でもまともにダメージが入る気がしない。ムシュフシュの尾よりも頑丈とは。


 弾き飛ばされた自分に、バシュムは蛇行しながら接近。盛大に土煙を上げながら間合いを詰め、その右前足を振りかぶる。


 だが、地面からせり上がった巨大な岩の杭が遮った。柱の様な杭を構わずひき潰した怪物だが、僅かにバランスを崩し右前足は空を切る。


 それだけで、暴風が吹き荒れた。フリューゲルを全開に稼働させ、どうにか押し流されるのは堪える。


 弧を描く様な軌道で再突撃する自分に、バシュムは全身の鱗を発光させた。


「っ!」


『精霊眼』の予知に従い、上体を起こして減速。同時に上方向へと逃れる。


 ほぼ同時に、怪物を中心に全方位へ紫色の光線が放たれた。1つ1つが人間を飲み込むほどに太く、数百メートル先まで抉り飛ばす熱線。船着き場も一瞬で消し飛び、階段も崩れ去る。


 ジグザクの軌道をとって回避しながら、地上の仲間達を一瞥。右近と左近がミーアさんの壁となり、更にその前に立ったブランが戦斧で光線を打ち払っていた。


 そして、エリナさんは単独で地上を走り回り攻撃とそれによって発生した石礫を避けきっている。


 あちらは問題ない。ならば、自分は自分の役割をこなすだけだ。


 ハリネズミの様に光線をまき散らし、天上まで削るバシュム。その上を取り、一気に急降下を仕掛ける。


 螺旋を描くように光の槍を回避し、接近。風と炎を纏った剣を振りかぶって右目へと斬りかかった。


『ガア゛ア゛ッ!』


 バシュムが首を捻り、自分目掛けて角を振るう。それと剣が衝突し、僅かな切れ込みだけを入れて弾かれた。


 上下が2、3度入れ替わりながら、しかし視線は怪物から離さない。そんな自分へ、巨大な顎が向けられる。


 溜め動作なしで放たれた、呪毒のブレス。


 この世のありとあらゆる毒どころか、『この世にない毒』までも内包する死の霧。高位覚醒者であっても、2秒で死ぬ空間が自分を包み込んだ。


 だが、関係ない。


 風を纏ったまま、突撃。肌に触れる前に毒は押しのけられ、吸い込む空気は『心核』が浄化する。


 不意をついたはずの攻撃は、しかし今度は交差された両の前足に防がれた。


 最大加速での突撃が衝突し、拮抗。衝撃で一瞬意識が飛びかけるも、歯を食いしばって耐える。


 数枚の鱗が割れるも、その下の肉には届かない。それどころか、砕けた鱗が見る間に再生していく。


 炎と風を最大放出するが、押し切れない。怪物の雄叫びと共に弾き飛ばされた。


「ぐぅ……!」


 自分が離れた直後、四方八方から氷の柱がミサイルの様にバシュムの巨体へと殺到する。


 純粋な質量でも凄まじいそれらの攻撃は、その鋭さと回転も合わさって同じサイズの砲弾に等しい。


 バシュムが現れた時以上の轟音と揺れがダンジョンを襲う。もはや視界が揺れているのか、空間そのものが揺れているのかもわからない。


 だが。


『ゴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッッ!!』


 健在。氷の破片と鱗を散らしながら、大いなる蛇は下手人へと視線を向ける。


 ミーアさんを標的に、バシュムが蛇行。ゴーレム達が立ちはだかるが、あの質量での突進を止めるのは難しい。


 だが、この場にはもう1人いる。


 バサリ、と。彼女が纏う『黒いマント』が翻った。


「忍法」


 雫さん作。エリナさんのスキルを練り込んだ黒鉄の外套。フリューゲル同様、布と見紛う鋼の防具。


 その真価は『透明化』。彼女が普段から使うスキルを、何故道具に頼ったのか。


 それは偏に。



「『冥轟大筒(めいごうおおづつ)』!!」



 スキルでは隠せぬ、彼女の『魔装』ではない物を敵から見えなくする為だ。


 先の氷撃を上回る音の暴力が迷宮に響き渡り、それとほぼ同時にバシュムの巨体が『宙を浮く』。


 数秒後、再びの地響き。岩の大地を踏み荒らし、大いなる蛇が転がった。


 その軌跡を赤い血潮が雨となって描き、川となる。


「どぉでぇい!」


 エリナさんが抱える、彼女の身長とほぼ同じサイズの大砲。


 黒と青で彩られたそれは、砲身が3つ束ねられていた。左手で砲身近くのグリップを支え、右手で箱型の後部パーツの側面にあるレバーを引く。


 それにより砲身が回転し、先ほど撃ったのとは別の砲身と入れ替わった。


 ケルベロスのドロップ品。3連大砲、名は冥轟大筒。もっとも、名前は自称忍者が勝手につけたものだが。


 砲弾は『魔装』と同じ素材。事前に火薬代わりの魔力を注いでおく必要があり、装填には1時間近くかかる。


 ライフリングもなければ、砲弾の形状は球体であるため距離が離れると威力が大きく減衰し、狙いも碌に定められない。反動も並の覚醒者では腕が吹き飛ぶ。しかも外部からの魔力がトリガーになる為、機械越しどころか通常のゴーレムでも使えない。


 だが。こと至近距離で放てば。


『ガ、ア゛ア゛ア゛……!!』


 その破壊力は、ケルベロスの放つ獄炎に匹敵する。


 腹から大量の血を流すバシュムへと、休む間も与えず突撃。だが奴は傷口が広がるのも厭わず、長い尾を地面に叩きつけて()()した。


 重さにして500トンを超える巨体が宙を舞い、上へ。奴は天井近くで全身から魔力を放出しながら、両の前足を掲げた。


 瞬間、怪物の頭上に巨大な水の塊が出現する。バシュムさえ飲み込む膨大な水量が、音速1歩手前で地上へと打ち出された。


 咄嗟に回避するも、風圧で僅かに押しやられる。岩の大地に爆音と共に衝突した『海水』が、津波の様に広がった。


「大地よ!」


 ミーアさん達の周りに、岩の壁が出現。押し寄せる波を受け、続けて彼女らの足に魔法が付与され水上歩行を可能にする。


 遅れて、バシュムが海に着水。広がり過ぎて既に人の膝辺りまでしかなく、それもどんどん浅くなっていくが、奴は即座に再び魔力を集中させた。


 文字通り瞬く間に展開された、直径100メートルを超える魔法陣。それが怪物の頭上に広がる中、海水から次々と大蛇が顔を出す。


 人間など容易く丸飲みに出来るこの蛇どもは、バシュムの一部であり眷属。1体1体が、ムシュフシュに匹敵する強敵達。


 だが、生憎と対策は考えてある。


「凍れ!!」


 凛とした声と共に振り下ろされた杖。それが海水に触れた途端、冷たい風が荒れ狂う。


 這い出ようとした蛇どもが一斉に凍り付き、氷像となり果てた。出現する瞬間を狙われては、どれだけ頑強な体も関係ない。


 そして大規模な魔法を行使した直後の、バシュムが見せた明確な隙。そこへ、今度こそ突撃を敢行する。


「しぃ……!」


『オ゛オ゛オ゛……!!』


 奴自身も体表を凍らせ、霜を纏っている。それでなお、黄金の瞳は輝き自分へと爪を振りかぶった。


 先端の速度は、音を置き去りにしている。見てから回避しては間に合わない。故に、『視て』避ける。


 迎撃の横薙ぎをバレルロールでやり過ごし、肉薄。振りかぶった剣を、その眼球へと全力で突き込んだ。


 ずぐり、と。刃は大いなる蛇の目玉を穿ち肘までがその体内へ埋まる。


『──────ギア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!??」


 声にならぬ絶叫が兵器となり、鼓膜が破かれたのを自覚する。


 激痛に顔をしかめながら、しかし攻撃の手は緩めない。奴の前足が、既に背中まで迫っている。


 右の二の腕に左手を添え、魔力を最大出力で流し込んだ。心臓から肩へ、前腕へ、腕輪を通り、右腕から刀身へ。


 どれだけ頑丈な体であろうとも、内側からなら……!



「燃え、ろぉおおおおおお!」


「『冥轟大筒』、てぇええい!」



 目玉から突き入れられた刃が、腹の傷口にねじ込まれた大砲が。


 赤と蒼の炎を吐いて、神代の怪物を焼き尽くした。







読んでいただきありがとうございます。

感想、評価、ブックマーク。励みになっております。どうか今後ともよろしくお願いいたします。


Q.ケルベロスよりあっさりしてない?

A.ケルベロスの経験値とドロップ品のせいで……。あとシンプルに相性とこの『隠し港』が枯れていたせいですね。


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― 新着の感想 ―
もはや立派な魔王討伐の旅に出た勇者パーティーの如き勇姿。 神話の怪物に挑む英雄でも可。 まぁ立て続けの事と言うか毎度の事で麻痺してんだろうけど、命を懸けて常に格上に挑み続けるってもう常人の境地にいない…
忍者が大筒を使うようになったのはいつからなんでしょうね。 現代的な弾頭じゃないのは拘りかな。
 500トン超の大物を浮かせる申し分無い威力! やはりロマン砲は素晴らしい!!  "通常"ゴーレムに積めないのは残念だけど、専用のゴーレムならばいけるのだろうか?  インビジブルニンジャーズ・冥轟大筒…
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