第八章 設定 + おまけ
第八章 設定 + おまけ
●キャラクター
『矢川京太』
LV:70 種族:人間・覚醒者
筋力:124 (成長性:A)
耐久:124 (成長性:A)
敏捷:127 (成長性:A)
魔力:127 (成長性:A)
スキル
『精霊眼』
『魔力変換・風』
『概念干渉』
固有スキル
『賢者の心核』
備考
今作主人公。作中では本名より後ろ姿と女装姿の方が有名。
対モンスター戦においては単独戦力として世界でもトップ5の実力者だが、精神面は普通の高校生。
その為、命を懸けた戦いに対して無自覚なPTSDが発症している。
『白い竜』に対する恐怖からダンジョンから遠ざかっていたが、自分の恋心を自覚する事で奮起。
ただし、その恋心が複数人に向かっている事まで自覚して若干自己嫌悪中。そのハーレム願望は誰かの影響かもしれないが、元からそういう気持ちはあった。
『白蓮』を失い、現在は『ブラン』という新しいゴーレムを連れている。また、固有スキルを利用した自作の脱着式マギバッテリーも装備させた。
なお、女装姿ばかり有名になるのは『有栖川教授』や『赤坂部長』、自衛隊などの大人達が彼にマスコミが殺到する可能性を低くする為火消しに回った結果、何故かこうなった。
『林崎エリナ』
LV:68 種族:人間・覚醒者
筋力:101 (成長性:C)
耐久:101 (成長性:C)
敏捷:124 (成長性:A)
魔力:112 (成長性:B)
スキル
『透明化』
『五感強化』
『空間魔法』
備考
今作のメインヒロイン?今章を経て『?』を外すべきか検討され始めた。
一見するとコミュ強。しかし実際は共感性に乏しく、いわゆる『人の心がわからない』系女子。お嬢様モードでは的確な発言をする事が多いが、それは知識から算出したもの。
その為、善意で相手の心を抉ってしまう事がある。
基本的にハイテンションだが、頭の一部が冷静。痛覚を任意でオンオフ出来る事もあり、ダンジョン探索では無類の頼もしさをもつ。
京太との電話中、珍しく一時的に思考がショートしたが、本人以外その事に気づいていない。
『有栖川アイラ』
※ステータス、スキル共に変化なしの為割愛。
備考
今作のヒロイン?その2にして、残念女子大生その1。
見た目は銀髪ロングの巨乳ハーフエルフな美女で、クールビューティー。だが中身は重度のコミュ障。最近は少しだけ改善した。
趣味でコスプレ衣装を集めているが、別に着る趣味はない。強いて言うのならコレクター。仲間内で何か祝う時は、このコレクションを解放して余興代わりにする。半分ぐらいは京太への労い。もう半分はそのリアクションを楽しむ為。
現在、京太、雫、そしてサナの協力のもと『ある物』を準備中。護身用として作っているが……。
最近の悩みは種違いの妹の暴走が加速している事。
『三好ミーア』
LV:68 種族:エルフ・覚醒者
筋力:93 (成長性:D)
耐久:93 (成長性:D)
敏捷:121 (成長性:A)
魔力:124 (成長性:A)
スキル
『土木魔法』
『水氷魔法』
『魔力節制』
備考
今作のヒロイン?その3にして、残念女子大生その2。
登場当初の影のある美女だった頃の面影はもはやなく、姉であるアイラとの和解や京太との交流で自信もつきメンタルが回復。結果、反動もあって変態となった。
レズではないが、アイラとエリナは別らしい。恐らく、これまでの『天才へのコンプレックス』が原因。
それはそれとして、珍獣枠としていた京太にも好意と興奮を持っている。
このまま走りぬけば真っ先にゴールイン出来るが、戦闘中以外肝心な所でヘタレるので未だ京太からは『自分は対象外だろう』と思われている。
実は最初に『1人だなんて決められない!私は全員手に入れる!』という結論を出した人。人?たぶん人。
『凸凹コンビ』
備考
もはや設定でもセット扱いされている長身スレンダー美少女こと毒島愛花と、低身長三白眼巨乳こと大山雫。今作のヒロイン?その4と5。
京太に対し『いざという時はヒーロー』という、尊敬とも恋慕ともとれる感情を抱いている。偶に後方古参ファン顔になる。
それはそれとして日常では普通の少年か、あるいは反応が面白いムッツリと認識。彼女らは野郎でギャップ萌えというのを経験した模様。
雫は度々京太の精液を素材として求めるが、いざ正面から作品を褒められると無口なツンデレと化す。ある意味こっちもギャップのある存在。
これには少女漫画好きの愛花もニッコリ。それはそれとして、コンドームを渡そうとするのは全力で止める。友人として。乙女として。
戦闘方面の才能は平均的だが、京太によるパワーレベリングの効果もあって一般冒険者としては強め。画面外できちんとレベル上げを続けているのも大きい。
それでも『Bランク』すら遠いため、道具面でサポートに徹している。
『有栖川エヴァ』
LV:62 種族:エルフ・覚醒者
筋力:107 (成長性:A)
耐久:100 (成長性:B)
敏捷:114 (成長性:A)
魔力:117 (成長性:A)
スキル
『力の赤帯』
『魔法薬学』
『魔力節制』
固有スキル
『時空の魔女』
時と空間を操るスキル。事実上、空間魔法の上位互換と言える。
自分自身や無機物の加速、減速。短距離転移からマーキングした位置への長距離転移。アイテムボックスなど。減速は自分以外の生物にも黄金の鎖を射出しぶつける事が出来れば可能。
過去視、未来視も可能だが、前者は1時間以内。後者はかなり抽象的かつ時系列もバラバラなものしか視えない。
備考
エリナ達の祖母。何故か感想欄でヒロイン化を熱望されている71歳エルフ大学教授。
普段は真面目で温厚。しかし締めるべき時はきっちり締める頼れる大人。子供や孫に危害が及ぶとなれば、自ら武器を手に突撃する家族思いな一面も。
教師としては横暴さや理不尽さはないが、結構なスパルタ。教え上手ではあるので、生徒達からの人気は高い。なにかやらかした生徒には、正論連打でお説教する。
エルフだけあって、見た目年齢は20代中盤から後半に見えるのもあって、性癖を滅茶苦茶にされた生徒は少なくない。
と、理想的な祖母であり教授であるが、孫の婿取りに関しては手段を選ばない。座右の銘は『恋と戦争に手段は選ばない』。彼女にとって孫の婿選びは戦争である。
京太への個人授業で『ハーレムのメリットデメリット』『世界の後宮事情』『はたして現代社会で一夫多妻は悪なのか』などの話が出てきたりしたが、特に他意はないと本人は述べている。
実家が英国貴族なだけあって、交渉は得意。エリナのお嬢様モードは、この人の若い頃に近い。
『山下博と愉快な仲間達』
※スキル、ステータスについては割愛。
備考
いつの間にか世界有数の覚醒者団体となった『ウォーカーズ』の代表、山下と、彼と共に国連へと足を運んだ川島省吾、クリス元大使、そして謎のリス。
世界は既に日本への核ミサイル発射に傾いており、覚醒者に対しても『少数の精鋭以外いらない』状態に愕然とした。
しかし、それでも折れない山下に期待の目を向ける者もちらほらといる。たぶんオッサンキラー。
日本への帰り道で『何故かバスがエンストで停止』したり、乗っていた飛行機が『整備不良で目的地とは別の空港に緊急着陸』。更には『船は謎の爆発で炎上』、『セスナがバードストライクで墜落』等々。数々の不運に遭遇している。
だがどの事故も死者は民間人含め1人も出ておらず、彼らを狙う刺客の姿すら見えない。
なお、事故が起きる前後で謎のリスが行方不明になり、顔を出したと思ったら毎回息を切らしてダウンしているがきっと無関係。赤坂勇音もそうだそうだと言っている。
『ファッジ・ヴァレンタイン大統領』
備考
コンセプトは史上最も過激なアメリカ大統領。かなりの危険人物。
今まで異世界を『フロンティア』と呼んでいたが、実際は異世界もそれに影響されて特殊な力に目覚めた覚醒者も嫌悪していた。
現在は覚醒者の殲滅を考え、とある研究に出資している。
●白い竜と赤い竜
絵に描いた様な西洋のドラゴンといった見た目だが、その実『竜の形をしたダンジョン』。
地脈との接続は任意であり、周辺の環境を己の迷宮へと変える力をもつ。アトランティス帝国によって、敵地に橋頭保を用意するために作り出された。
彼の帝国の技術を盗み出した敵国。あるいは皇帝に反乱を起こした貴族に対抗するため、多種多様な能力をもつ高性能ドラゴン。
だが能力を詰め込み過ぎた結果、一品ものならぬ二品もの。この世に同型機は他に存在しない。この2体を作ってすぐ、帝国が実験の失敗で滅亡したのも理由の1つである。
この2体の目的はただ1つ。アトランティス帝国の帰還のみ。竜達は日本をアトランティス帝国と完全に誤認している。
弱点は『魔力のこもっていない大量破壊兵器』。異世界において、そんな物はなかったのでレーダーと呼べるものがない。
それでも正面からなら迎撃するが、高高度からの爆撃やミサイルならば『1回目』は確実に直撃する。
●登場モンスター
※『Dランクモンスター』
『ジャイアントマンティス』
名前の通り巨大カマキリ。周囲の環境に合わせて数秒かけて体表を変色させる事ができ、保護色によって隠密。通りかかった敵を奇襲する。
大きさは約2メートル。ヒグマなみのパワーとタフネスをもつ。
『ジャイアントビー』
同じく、名前の通り巨大なハチ。時速およそ50キロで飛行。大きさは翅と足を抜いても1メートル前後ある。
尻から生えた子供の腕程もある毒針には猛毒があり、アフリカゾウでも瞬く間に死亡する。
※『Cランクモンスター』
『キリングドール』
遠目には人間に見えるほど精緻に作られた木製の人形。近寄れば、服に覆われていない箇所から球体関節が見える。
日中にのみ活動するタイプと、夜間にのみ活動するタイプの2種類がおり、これはこのモンスター達が働いていた『テーマパーク』によって異なる。
アトランティス帝国時代。彼らは貴族や豪商用の娯楽施設で稼働していた。料金は魔力であるが、レベルが『10』ある覚醒者なら微々たるもの。
警備スタッフや、万が一の事故が起きた時の救助要員でもあったため性能は高い。現場の兵士達からは、金の無駄遣い。前線に寄こせという声もあった模様。
※『Aランク』
『オルトロス』
ギリシャ神話に登場する、双頭の犬に似たモンスター。口からは鉄すら溶かす炎を吐き尻尾として生えている蛇の頭は猛毒の牙をもつ。
片方の頭が潰れても死なない頑丈さと、鋭い嗅覚による索敵能力をもった番犬。身体能力もランク相応に高いオールラウンダー。
この怪物から走って逃げようと思うのなら、最低でも時速150キロは必要。
『ゲーリュオーン』
同じくギリシャ神話に登場する、3人の重装歩兵が融合した巨人に似たモンスター。それぞれが高い技量を持った戦士であり、一心同体の連携攻撃を炸裂させる。
近距離戦でめっぽう強いが、1番の得意技は3連続の投槍。1撃が旧式の戦車砲に匹敵する破壊力をもち、高位の覚醒者でも直撃すればタダではすまない。
常に互いを守る様に盾を動かす為、隙を見つける事が難しい。唯一の弱点は、股の間へは攻撃しづらい事。ただしそこに潜り込んでも、のしかかりがくる可能性がある。
鎧を纏った巨体は、3トン以上の重さ。
※『ボスモンスター』
『イビル・ドラゴンフライ』
筋力:35
耐久:25
敏捷:50
魔力:10
スキル
『千里眼』
『毒耐性』
備考
山の中で巣を作っていた巨大な虫型モンスター。トンボをベースに、カマキリとハチを組み合わせた様な姿をしている。
大きさは約4メートルと、虫とは思えない巨体。高速戦闘を得意とし、ヒットアンドアウェイで敵を攻撃する。
ランクの差もあって本編ではあっさりと燃やされたが、街に出れば甚大な被害を出す事が確実の凶悪なモンスター。
『マジシャン・ドール』
筋力:50
耐久:40
敏捷:50
魔力:60
スキル
『魔力徴収』
魔法陣の上にいる生物から、ゆっくりと魔力を回収する。また、自分の支配下にいるモンスターにも供給可能。
かなり複雑な術な為、現代の人間には解読不可能。
『疑似生命の付与』
本来命のない存在に、一時的に命を与えて操る力。本編中ではメリーゴーランドの馬達やジェットコースターの車両に使い、使役していた。
備考
幾つもの人形を組み合わせた様な、邪悪な風貌の魔女。なお、その実態はテーマパークの管理人兼悪役。
アトランティス帝国時代、このモンスターが引き連れた狼男型の人形達と、マントを羽織った剣士達の戦いが人気なショーだった。
それ以外にも料金である魔力の受け取り。生命を付与した玩具の劇など、かなり多忙な立場だったりする。
観客が来なくなり、パレードの道具すら壊れてしまった頃にようやくこのモンスターは地上に出てきた。
放置された遊園地を根城に、付近の動物たちや人間を観客にし、当時人気だった演目を繰り返し続ける。
『ケルベロス』
筋力:80
耐久:75
敏捷:100
魔力:70
スキル
『地獄の番犬』
自身の縄張りにいる限り、全ステータスに大幅な補正が入る。特に京太達が戦った空間では、全ての数値に『+50』の強化が入っていた。
『業火の担い手』
命あるモノ全てを焼き尽くす蒼い炎を操る。ただ放出するだけでも強力だが、自身に纏う事で接近戦能力を高める事も可能。ただし、その間自分自身も炎で少しずつ焼かれていく。
『魔力節制』
既に登場済みのスキルであるため、割愛。
備考
今章のボス。説明不要の3つ首の番犬。
ひたすらに自己強化で相手を噛み殺すストロングスタイル。とにかく力が強く、速く、タフ。
3つの首どれか1つでも残っていれば戦闘続行が可能であり、尻尾である大蛇を振り回して中距離での戦闘も可能。
ダンジョンで出現する位置は固定。次の個体が生み出される頃になると、持ち場を離れてダンジョン内を散歩しだす。その場合、1つ目のスキル効果は半減。ダンジョン外に出ると、完全に効果を失う。
また、ダンジョン内だとモンスターは飲食・睡眠が不要だが、外に出ると甘い小麦菓子や美しい音楽で簡単に注意を逸らせてしまう。結構残念なモンスター。
しかし、この番犬の背後にある空間。崩落により立ち入る事は出来ないが、そこには財宝などありはしない。
あるのは、帰国する事も出来ず亡くなったとある貴人の墓があるのみ。
ケルベロスのいる部屋以外どこにも繋がっていない部屋を封鎖したのは、恐らく最初の番犬であろう。
●Q&A
Q.例のドラゴンって、核ミサイルで倒せるの?
A.はい。アトランティス帝国というか、当時の異世界にそういった兵器はないので。1回目なら確実に当たるし威力も十分ですので倒せます。ただし、1回外すともう通用しなくなります。
Q.Aランク冒険者の待遇、微妙じゃない?
A.作中の日本、マジで金がないので……。あと、非覚醒者と覚醒者の溝を考えると、比較的共存が上手くいっている日本ですら下手な優遇は対立の切っ掛けになったり。
Q.あのリスの正体は?
A.赤坂勇音さんが『ただの可愛いリスさんです!』と言っているので、きっとただのリスです。
Q.大統領が素手で机をへこませていたけど。
A.きっとトレーニングの成果ですね。
Q.クリス元大使は砂漠でどこと連絡をとっていたの?
A.大使になる前働いていた所の上司さんですね。
Q.どうして英国首相は山下さんにわざわざ忠告に?『トゥロホース』の件とかもあったのに。
A.作中のあの国、基本的に『どっちに転んでも美味しい所をもっていける』ポジを維持し続けているので……たぶん、『トゥロホース』関連の事は『知らない』としか言わないかと。
忠告に関しては、半分ぐらいマジの善意だったと思います。というか哀れみ?
ただ、子猫だったと思っていた相手が子獅子だったので首相がテンション爆上がりタピオカしてしまいました。山下さんはおじさんキラー。
●おまけ
『もしもあの時、同好会に全てのページを読ませていたら』
『覚醒の日』
世界におとぎ話の中の存在だと思っていた、魔法やモンスターが溢れた日。
その日から、今日で50年になった。
「よっと……」
釣り竿をケースにしまい、クーラーボックスを肩から下げ歩き出す。
もう60を過ぎているのだが、肉体は未だ10代のまま。固有スキルの影響らしいそれに、こういう時は感謝する。
朝の、人が少ない時間にこうしてのんびり歩くのが最近の趣味だ。走って帰ればすぐだし、車を使っても良いのだが。偶に、こうして足を動かしたくなる。
そうして帰る道中、店頭に並ぶテレビにふと視線が吸い寄せられた。
『来週で世界から戦争がなくなり、20年が経過します!この歴史上類を見ない奇跡に───』
元気溌剌といった様子で、見目麗しい女性アナウンサーが原稿を読み上げていく。
黄金比と言うべき目鼻立ち。スラリとした体つき。そして、特徴的な『鋭角なヘッドホン』の様な耳。
アレは、このアナウンサーが生まれた……いいや。製造された時からついている物だ。
この画面の向こうにいるのは、ゴーレムである。
人間と区別がつかないほど精巧に作られたこれらと、魔力の流れ以外で見分けるのはこれぐらいしないと不可能だ。
今この時間帯に人がいないのは、何も休日だからではない。
人ではなく、ゴーレムなら時折歩いている。どの個体も笑顔で、元気に働いていた。
───有栖川教授と話し合い、同好会に『魔装の本』を見せるとなった時。
自分は、日本が、いいや世界が思った以上に危ないと感じて、もてる全ての知識を開示した。
そうして、あの白い竜が出現した後。ダンジョンが民間に公開される事は二度となかった。
『錬金同好会』が開発した新型ゴーレム。その補助を受けた自衛隊は強力無比であり、赤い竜と白い竜を多数の犠牲こそ出したものの討伐に成功。
そのままの勢いで異世界に到達し、地脈の調整で日本にダンジョンが増える事はなくなった。
それでハッピーエンド……と、いかないのが人類社会というものである。
覚醒者と非覚醒者の壁。異世界利権の奪い合い。ゴーレム技術の戦争利用への危惧。その他諸々。
混迷する世界の中で、あの同好会はとある発表をした。
『マザーゴーレム』……通称『マム』というゴーレムを。
見た目10代前半に見えたそのホムンクルスもどき搭載のゴーレムは、人間の様に喋り、笑い、泣いた。
もはや人間の完全な製造と言って良いそれに、世界中が反発。されど、彼ら彼女らは平和的に対応し続けた。
意外な事に、混乱はすぐに落ち着く事になる。
皆、疲れていたのだ。戦う事に、疑う事に、憎しみを抱く事に。
そこに、マムが作り出した新たなゴーレム達がしみ込んでいった。その結果、10年も経った頃には世界の大半が政治にゴーレムを加える様に。
アメリカなんかは最後まで抵抗していたが、選挙によりゴーレムが当選。マムの製造から20年後、世界中の政治はゴーレムの手に委ねられた。
各地で勃発するテロや反ゴーレム運動に対して、人間の兵士や警官は出動せず全てゴーレムが対応。
更にはどんどん社会で働くのはゴーレムの役目となり、いつの間にか人間が働く事はなくなった。僅かに、人間国宝とされる工匠や作家たちが残る程度。その分野も、どんどんゴーレム達に置き換わっている。
人間はゴーレム達に支配された……と、言えるのかもしれない。
だがゴーレム達は、人間に優しかった。というか、甘やかしまくっている。
マム……というか、『ホムンクルス嫁』は人間の為に産まれ、人間の為に稼働している。
その原理は決して覆らず、人間を尊重し、そのうえで管理と保護を続けていた。生活費は、遊んで暮らせるだけの額が常に口座に入る時代である。
ゴーレムが稼ぎ、作り、それを人間に貢いでいる形だ。
役所に申請すれば1人に1体のゴーレムがつくし、その見た目も自由自在。前にブ■リーみたいなゴーレムや、ほとんど獣のゴーレムを駅で見かけた時には驚いた。
そして……結婚相手も、ゴーレムが普通の時代になっている。
高校卒業してから1年ぐらいで、自分は5人の妻を迎える事になった。いつの間にか、包囲網を敷かれていたらしい。
正直嬉しかったが、大変だった。主に世間からの目が。一夫多妻を許可する法律がタイミングよく出てくれなかったら、もっと冷たい目を向けられていただろう。
そうして産まれた子供達の、そのまた子供達。自分からすれば孫にあたる子達は、半分がゴーレムと結婚した。
しかもそのうちの何人かは、最近テラフォーミングが終わった火星に住むと言っている。正直、心配だ。
今の時代、覚醒者のレベルは『10』でも高い方である。自分も趣味と実益を兼ねた釣りで経験値をためているが、微々たるもの。昔は『60』を超えていたレベルが、今や『12』だ。たぶん、来年の今頃は更に落ちている。
世界は、平和になった。人口も回復している。ゴーレムで人間から回収した精子や、病院でとった卵子をランダムで組み合わせているのだ。
その子供達は場合によっては精子や卵子の元の持ち主に送られる事もあるが、大半はゴーレムの開いた学校で教育を受ける。
そして、ゴーレムと結婚し、ゴーレムが子供を作るのだ。
夜に空を見上げれば、ゴーレム達に開発された月が見える。望遠鏡を使えば、宇宙にある建設中のコロニーも見えるかもしれない。
科学と魔法が融合した、夢の技術。それにより、もはや人類は資源不足にあえぐ必要はない。
そして……成長する必要も、ない。それは、ゴーレム達がしてくれる。
「どうかなさいましたか?」
「……いえ」
立ち止まっていた自分を心配してか、長い黒髪のゴーレムが話しかけてきた。
ポニーテールに纏められた黒髪に、男を魅了するスタイル。そして、機械の耳。
まるで親しい隣人の様に微笑むその個体に、こちらも笑顔で返す。
再び足を動かし、家へと向かった。
このゴーレムによって回る世界の中心は、はたして誰なのだろうか。
読んでいただきありがとうございます。
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