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第八章 エピローグ 下

第八章 エピローグ 下




サイド なし



 東京霞ヶ関。中央合同庁舎の、とあるフロア。


 その隅で、今日もまたダンジョン庁の職員が集まり会議を行っていた。


「以上が、現在報告されている『Aランク候補』達の戦果です」


「そうか……」


 手元の資料を読み終え、赤坂部長が小さく頷く。


「正直言って、予想以上だ」


「ですね。思っていた3倍は候補者達の士気が高いですよ」


「ああ」


 ハッキリ言って、ダンジョン庁は、というより政府は半分ダメもとであの日説明会に挑んだ。


 世界から覚醒者へ向けられる視線は冷たい。以前ほどはそこら中で雇ってくれる、という事はないだろう。


 現在は警備会社や民間軍事会社から解雇や左遷された結果、現地でギャング等と繋がりを持ち問題を起こす者が増えているのも、その風潮を加速させていた。


 だが、それでも需要がないわけではない。


 裏でアメリカが主導して覚醒者の排斥に動いているが、『もしも日本の外にダンジョン被害が出たら』『もしも敵対組織が覚醒者の暗殺者を使ってきたら』という理由から、ごく一部の腕利きには今まで以上の熱烈なラブコールがきている。


 ようは、数を減らす代わりに少数の精鋭を雇う気なのだ。その方が()()の管理もし易い。


 そして、『Aランク候補』はその中でも特筆すべき存在である。もはや、性癖など関係ない。引く手あまたという言葉では、足りない人気である。


 彼らを引き留めるだけの材料を、日本政府は持っていない。


 言葉でどうにかするのも、難易度が高すぎる。赤坂部長でも、ここまでオープンな変態達との交渉はほとんど経験がなかった。


 かつては共にスーツを着て霞ヶ関に通っていた同僚が、半裸の妖精コスプレで現れた時は心が折れかかったものである。


 今回、赤坂部長が交渉を成功させた……というわけではない。


 彼らが、候補者達が自らの意思で武器をとったのである。



『父も祖父も、お国の為に死んだ。しかし、儂は同じように死ぬ事などできん。子供や孫達の方が大切だ。だが、だからこそ……この褌を懸けよう。未来の為に』


『ジャスティス!それこそ、私がこの星条旗に誓った事だ。ここで母の故郷を、友人を、仲間を見捨てる事が正義か?否!日米同盟の力を見せてやる!』


『なぜワタクシが、運命のご主人様でもないトカゲに進む道を亀甲縛りされなくてはならないのかしら。ワタクシの道は、ワタクシ自身とまだ見ぬご主人様が決める事でしてよ!』


『私はお嬢様についていくのみ。そして、いずれは真のご主人様にセットで飼っていただく……その夢を叶えるためなら、どの様な辛苦も受けましょう。あ、ちょっと興奮してきました』


『バブ!バブバブ!バァブ!』


『このビキニアーマーは伊達ではない。鎧とは、守るものだ。この身を、戦えぬ者達の盾としよう。それが戦士というものだ』


『背傷は嫌いでね!正面から戦ってなんぼさ!なぁに。それで死んだら、あたしはそれまでの女だったってだけよ!』


『この作戦が成功したら、その功績で私を幼稚園に入園させてほしい。ダメなら保育園で妥協しよう』


『ドラゴンを鞭でしばいたら楽しそうだなって』


『わん!』


『ここでひいちゃぁ男が廃る!髪の神様にその程度かと笑われちまうぜ!俺達は最期まで、ツッパっていくからよぉ!夜露死苦ぅ!』


『私達は生まれる時代を間違えたと思っていました。でも、違った。この時代に生まれた事を、心から感謝しています』


『正直、逃げたいです。でも、戦う理由を自覚してしまったから。……あの竜の頭蓋、絶対にかち割ってやります』



「……彼らには、感謝しかない」


 彼らの『答え』は2割ほど意味不明であったが、候補者の大半が白い竜、グイベル討伐作戦への参加を表明してくれた。


 今はその心意気に甘える事しか出来ないが、いずれ絶対にこの恩を返すと赤坂部長は胸に誓う。


「それで、2体の竜の様子は」


「どちらも未だ眠っている様に静かな状態です。しかしダンジョンの拡張は僅かですが進んでおり、地図の書き直しが必要との事です」


「そうか。今後も自衛隊との連携を密にする必要がある。些細な事でも、情報の共有は徹底してくれ」


「はい」


「しかし、あの2体はそれぞれが『生物の形をしたダンジョン』だと専門家達は結論付けましたが……本当なんでしょうか?」


 職員の1人が、無精ひげを撫でながら手元の資料を見る。


 それを皮切りに、他の職員達もそれぞれ考えを言葉にし始めた。


「信じるしかないでしょう。既存の物理化学では論ずる事もできない存在だ。占星術師に賭けるしかない。まあ、複数人の術者に聞いて比較はしているが」


「この21世紀に、陰陽師やら占星術師やら頼りとは。今更だが、不安になってくるな」


「そう言うなよ。実際、我々はその力に助けられている。眉に唾を付ける暇はない」


「このままダンジョン内に籠ってくれたら助かるんだが……万が一作戦前に出て来た場合の備えは?」


「最低限の足止めを行う無人兵器と、核ミサイルの被害範囲から住民が逃げる準備を進めている。特に後者は、既にゆっくりと開始済みだ。流石に本当の理由は言えないがな」


「この核の被害範囲予想……下手したらあのドラゴンどもが普通に暴れるより被害がでかいぞ。何発落とす気なんだ」


「遠い島国の事だからって、思い切りの良い事だよ。ちくしょうめ……!」


「それより部長。本当なんですか?『あの2体は復活しない』というのは」


 職員の言葉に、赤坂部長が頷いて答える。


「その可能性が高い。あの2体は通常のモンスターとは『用途』が異なる。様々な機能を搭載した結果、独立したダンジョンとなっている。死亡すれば変化した地脈も時間経過で戻るため、そもそも『生産するダンジョン』がその場からなくなる」


「何でもありのアトランティスにも、不可能はあったと」


「そうだ。アトランティス帝国も神々の国ではなく、あのドラゴン達は所詮人が作り出したものに過ぎない。故に、殺せる。……それを現代の英雄達に任せるのは、心苦しいが」


 一瞬だけ眉間に深い皺を寄せた後、赤坂部長は部下達を見回す。


「だが、だからこそ我々は我々に出来る事をするぞ。全力で自衛隊と、『Aランク候補』達をバックアップするんだ」


「はい!」


 それぞれの役割分担を決めていき、職員達が一斉に動き出す。


 赤坂部長自身もデスクに向かい、作戦当日の候補者達の移動について書類を纏め始めた。


 そこへ、タブレットを抱えた男性職員。佐藤が近づく。彼は部長の耳元に顔を近づけ、冷や汗を垂らしながら小声で話しかけた。


「部長。『幸運のリス』は砂漠で木の実を探すそうです。橋の建設にはもう少し時間がかかると」


 意味不明に思えるこの言葉の意味を知っているのは、ほんの一握り。


 そして、その報告内容が非常に深刻なものだという事を、当然赤坂部長も知っている。


「……わかった。『建築資材』をまわす。港で彼らが受け取れるよう、取り計らってくれ」


「はい。伝えておきます」


 手早くタブレット端末を操作する部下を横目に、赤坂部長は一瞬娘の事を考えた後に小さく首を振った。


 彼も覚悟は決めている。娘が自ら選んで危険な任務についた今、それを己の職責以上に心配する事はない。


 だが……『ダンジョン庁の赤坂部長』として。『ウォーカーズ』の代表と幹部の護衛任務についた小さな協力者の無事を願うぐらいは、きっと許される。


 数秒だけ瞳を閉じた後、彼は再び指を動かし始めた。



*    *    *



「ブラックだぁ!ブラックというかもう暗黒だぁ、このギルド!」


『ウォーカーズ』本部。


 その幹部用の部屋で、山下明美がパソコンの左右に積み上がった書類の山を前に吠える。


「しょうがないよ、明美ちゃん。お兄さんも省吾さんも、今は海の向こうなんだし」


 それに、友人である喜利子がぼそぼそと答える。


「そうなんだけどさー。あー、こんな事なら私が護衛役に立候補すれば良かった……!」


「それはたとえ親友だろうと許されない。男同士の間に入るな」


「人の兄でそういうのは勘弁して」


 明美が頬を引きつらせるが、喜利子は既に自分の世界に入っていた。


「今回はナイスミドルも加わっての3人組……最近苦労人な猫耳男子。その幼馴染のマッチョ。酸いも甘いも知るワールドワイド紳士……これで何もなしなわけがない。絶対に『と☆き☆め☆き』イベントが起きている……!」


「ねぇよ。いや空港行きバスが突然エンストしたり、飛行機がマシントラブルで知らん所に着陸とかはしているけども」


「ここに入る女がいたら、私が殺す。相打ち上等。絶対に彼らのラブロマンスは邪魔させない」


「ねえ。私、妹として喜利子ちゃんを殴る権利があると思うな」


「ごめん」


「許す」


 そう言って、明美がぐいっと腕と背筋を伸ばす。


「ん~……そろそろ休憩終わり。仕事しなきゃ」


「私も自分の部屋に戻る。同好会から依頼された材料、どうにか集めないと」


「まぁじで採算度外視だよね、この依頼。……最悪、私達が直接ダンジョンで集めるしかないかな」


「うん。たぶんそうなる。日程の調整は、秘書さん達にやってもらおう」


「へーい。まさか、この歳で秘書がつくとはねぇ」


「それに関しては、私も予想外」


「ねー。よっし。じゃ、早速この……ん?」


 ひくり、と。明美が猫耳を動かす。


「どうしたの?」


「いや。なんか聞こえた様な……」



「ほう、流石山下君の妹だ」



「っ、誰!」


 瞬時に2人が『魔装』を展開し、背中合わせになって得物を構える。


 彼女らも数々の修羅場を潜ってきた戦士達だ。それが、声が聞こえる距離まで接近を許してしまった。いくら本部にいるとは言え、油断と疲労が原因だろう。


 だが2人はここが本部だからこそ、謎の侵入者への警戒を強めた。この建物には『錬金同好会』の協力もあって、幾重にも結界が張られている。それを、全て素通りしてきたのだ。この侵入者は。


 たらり、と。冷たい汗が頬を伝う。


「ああ、そう警戒しないでくれ。知らない仲ではないだろう」


「へえ……だったら、顔を見せてほしいですねぇ」


「顔は見せられない。だが、姿は現そう」


 そして。


「やぁ」


「うわぁ」


 天井の一部が開き、にゅるぅぅんと黒ずくめの男が降ってきた。


 明美はその臭いに、喜利子は纏う魔力に覚えがある。


「まさか、同好会の副会長さん?」


「うむ。居酒屋以来だな」


「……なんで、そんな所から」


 知り合いとは言え警戒を解かず、喜利子が杖に力を籠める。


 それに対し、副会長が小さく肩をすくめた。


「最近立て込んでいてね。下手に外出時の移動を知られると、命の危険があるのだよ」


「命の危険?」


「ああ。赤坂君に殺される……なんて、冗談が言えれば良いのだが。今週だけで、私と会長は2回誘拐されかけている」


 彼の言葉に、明美が小さく息をのむ。


「元々同好会は様々な所から狙われていたが、最近は特に酷くてね。あ、これお土産と注文書。それと追加でそちらに送るゴーレムの目録だ」


「あ、どうも」


「これはご丁寧に」


 ローブの下から出した紙袋に入ったお菓子と、書類の束を2人が反射的に受け取る。


「君達も気をつけたまえ。今や、重要な書類も手渡しでなければ信用できん」


「……それで、侵入経路については?」


「……自分専用の秘密通路という言葉に、ロマンを感じたりせんかね」


「お前マジふざけんなよ」


 ゲシゲシと、副会長の脛を蹴る明美。そして反対側から杖先で顎をぐりぐりと押す喜利子。


「痛い痛い。やめないか。老人を虐めるのは」


「うるせぇ訴えんぞ」


「ふっ。裁判で私に勝てると思わん事だ。法律の専門家だぞ」


「法治国家の敗北……」


 攻撃が緩んだところで、副会長が再びにゅるぅぅんと天井に戻る。


「ではな、諸君。くれぐれも攫われない様に。特に、最近のアメリカは手段を選ばん節がある。山下君にも、帰ってきたらよろしくと伝えてくれ。今君達が悪意ある銃弾で倒れたら、国内の覚醒者は暴発するぞ」


 それだけ言い残し、副会長の気配は遠のいていった。


 閉じられた天井を見上げながら、明美が呟く。


「……大丈夫かな、兄さん」


「明美ちゃん。凄いよこのお菓子。3時間並ばないと買えないっていう、限定のやつ」


 猫耳の彼女が友人のでかい尻にタイキックを入れたのは、この3秒後の事である。



*     *     *



 アメリカ、ワシントン。


 ホワイトハウスの大統領執務室にて、ファッジ・ヴァレンタイン大統領が机に両肘をつき左右の指を口の前で組んでいる。


「それで、ドク。進捗は?」


「全て順調です、大統領」


 白衣姿の、いかにも科学者然とした老人がニヤニヤと笑いながら答える。


 それを、隣のCIA長官はチラリと一瞥して拳に力をこめた。


「そうか。では今後とも頼むぞ。人類の未来の為に」


「ええ。私にその様な高尚な理想はありませんが……それで実験材料と予算を頂けるのでしたら幾らでも協力いたしましょう。それでは」


 ドクと呼ばれた男が退室した後、CIA長官がすぐさま口を開く。


「大統領。どうかお考え直しを。あのような輩、信用に値しません。確かに能力はありますが、人格が危険すぎる」


「わかっている。だが、それでも必要なのだ」


 大統領はそう答え、指を解いた後己の左腕を軽く撫でる。


「それでも……私は、そして合衆国は罪を償わなければならないのだ」


 綺麗に整えられた口ひげの下。薄い唇が、淡々と言葉をつむぐ。


「異世界とのゲートが出来たのは、完全に偶然だった。意図しないこの結果に、それでも私は最初喜んだ……それは、間違いない」


「大統領……?」


「だが」


 彼の左腕が、重厚な机に叩きつけられる。


 大きな音が執務室に響いた。机に飾られていた写真立てが床に落ち、ガラスが割れる。


「その結果、とんでもない化け物をこの世界に放ってしまったのだ……!これを罪と言わず、なんと言う!」


「……確かにモンスター被害は甚大です。しかし、だからこそここは日本の冒険者を利用して」


「違う」


「……?」


 あまりにも力強い否定に、長官は眉をよせる。


「私が言う怪物は、人の姿をし、人の言葉を喋り、人と見分けがつかず。そして人から変わり果てた、人ならざる者達の事を言っている」


「……まさか」


「ああ」


 ファッジ・ヴァレンタイン大統領が立ち上がり、拳を固く握る。



「覚醒者。あの化け物どもを野放しにはしていられない」



 その言葉に、長官は思わず言葉を失う。


「私は自分自身を騙していた。『フロンティア』と目先の利益に集中するふりをして。己の罪からずっと目を背けていたのだ」


「…………」


「異世界があると知って……私はすぐに恐怖したんだ。いつあの化け物どもがこちらの世界に攻めてくるかわからない。その道を、私達が繋いでしまった。既に日本は汚染されている。その罪に……耐えられなかったのだ」


 大統領の頬を、1筋の雫が伝う。


「だが、悪魔になってなおジョージが私に助言をくれた。もう……逃げたりしない」


 その碧眼を今まで以上に輝かせて、彼は言う。


「これ以上、人が怪物に変わってしまう前に。『感染』を止めなければならない。奴らがこれ以上増えるのは、なんとしても阻止するのだ」


 ───ファッジ・ヴァレンタイン大統領には、ある呼び名がある。


 その恵まれたルックスや、優秀な経歴に関して煌びやかなあだ名をつけられた事はあるが、彼が大統領に就任した直後この様な見出しの記事が出た。


『歴代で最も過激な大統領。ファッジ・ヴァレンタイン』……と。



「この世から、あの侵略的外来種を抹消する。それが、私達の贖罪だ」



 CIA長官が、硬い唾を飲み込む。


「……ダンジョンはどうなさるのですか」


「無論、すぐにあの化け物どもを駆逐できるとは思っていない。少しずつ数を減らしながら、利用するとも。目には目を、だ。あの国の民は、自分にふりかかった不条理に『理由をつける』。そして勝手に納得する。核を落とした後でも、やり方次第では今後も日本でダンジョンに蓋をする事は可能だ。いずれば、向こう側の覚醒者も滅ぼし根絶するがね……」


「そう、上手くいくでしょうか」


「上手くいくかどうかではない。やらねばならないのだよ。世界を守るために。アトランティス帝国は、世界を超える技術を持っていたという。そうである以上、あちら側の世界がこちらの世界に攻めてくる可能性もあるのだ」


「……世界を守るため、ですか」


「ああ」


 大統領が机から離れ、CIA長官の肩を掴む。


「君には期待している。よろしく頼むぞ」


 彼は、一瞬だけ殴りつけられ大きくへこんだ机を見やった後。


「……はい、大統領。この命にかえても、成し遂げましょう」


 キラキラと輝く碧眼を見つめ返し、頷いた。



*    *     *



「まさか……セスナまで墜落するとは」


「もう呪われているってレベルじゃねぇな」


 幼馴染が運転する車で砂漠を爆走しながら、『ウォーカーズ』代表の山下は小さくため息を吐いた。


「どこかしらの刺客が来るとは思っていたけど、こうも狙われるとはなぁ」


「でも、俺達まだまともに敵の姿も見ていないぜ?」


「どうも、勝手に相手が自滅するか、現地の警察に無力化されている様なんだよな……」


「不幸中の幸いって言うには出来過ぎている気もするがね。これも、あの『幸運のリス』様のおかげかぁ?」


「チチッ……」


 山下達が後ろを振り返れば、そこには座席の上でぐったりと大の字になっているリスと……。


「あれ、クリスさん。どこかと連絡中ですか?」


「……ええ。かつての上司……今は、年上の友人と呼ぶべき人物の伝手で、次の行先を決めていました」


 もはや変装の意味もないと、普段の格好にサングラス姿のクリス・マッケンジー元大使が座っている。


 彼の手にはスマートフォンが握られ、難しい顔で画面を眺めていた。


「……映画だったら、実はクリスさんが敵のスパイって展開ですよね」


「ははっ。だったらもっと上手くやりますよ。それに」


 力なく笑った後、クリスはサングラスを指で軽く押し上げる。



「山下さんには絶対に、無事日本へ帰ってもらわないといけない。その理由が、増えましたので」



 砂漠の中を、車が進む。ここから1時間ほどリスが行方不明になるが、ひょっこり姿を現したので座席の隙間に隠れていたのだろうと山下達は疑いながらも表向き納得はした。


 そのリスが死にそうな顔で息を切らし、クリス元大使が必死に労っていたが。それを彼らが知る事はない。





読んでいただきありがとうございます。

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