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第五章 エピローグ 上

第五章 エピローグ 上





 日本初……つまり世界初でもある、『海上のダンジョンゲート』。



 その出現に、世間はこぞって注目───とまでは、いかなかった。


 無論、幾つもの報道機関で大々的に取り上げられているし、海外からの注目度も高い。


 なんせ、今後の貿易に大きく影響するのだ。日本の領海を航行するだけでも、かなりのリスクを背負う事になる。


 しかも内部にいたモンスターは恐らくだが『海上を移動できる』者達だ。


 これまでダンジョンのゲートをコンクリート等で完全に封鎖する事を試しては、少しずれた位置に再出現してしまう事で失敗してきた。その試みの中には、水の堀も含まれている。


 だというのに、あのダンジョンは海上に未だ存在していた。これはつまり、内部のモンスターが外に出て普通に活動できる環境であるのなら、もはや陸地でなくとも良いという事である。


 今回は海で、被害にあったのは船だった。では空は?飛行可能なモンスターが内部にいるのなら、航空機すら被害にあうのではないか?


 この被害にあう対象は、当然覚醒者だけではない。気づかぬ内に氾濫が起き、街が襲われる可能性すらある。


 今日も国会ではコレの対策が議論されているが、結局結論は出なかった。


 それほどの大ニュース。いくら有栖川教授の御実家への配慮があったとしても、マスコミが関わった人間を放っておくはずがない。


 しかし自分達には断れる範囲の取材しか来ていないのには、理由がある。



 別の大事件が、発生していたからだった。



『ご覧ください!こちら、埼玉県の山間にある……いいえ。()()()、『トゥロホース』の本部跡地です!!』


 そう言って、ダークエルフの女性アナウンサーが興奮した様子で示す先。そこには、元は城だったのだろう廃墟があった。


 万全であった頃の写真が、比較する為かテロップに表示されている。そこには荘厳かつ美麗な城壁と西洋風の城が建っており、この1枚だけなら観光地の光景と呼べるものだった。


 だが、今あのアナウンサーが示す先にあるのは、焼け焦げた壁が残るだけの残骸である。



『『トゥロホース』から自力で脱出した68人の方々は、無理矢理かけ子や受け子をやらされ、そうして集められたお金が『トゥロホース』の活動予算になっていたという事ですか?』


『ええ。どうやら魔法の契約書……信じがたい事ですが、反故すれば対象を呪殺する契約書に縛られ、無理矢理犯罪行為に手を染めさせていた様ですね』


『勇気ある68人の脱出劇!その真相を追う!今回の番組では専門家の皆さんと共に、『トゥロホース事件』の真相を』


『山下代表!『トゥロホース』から脱出した68人を『ウォーカーズ』で匿っていたというのは本当ですか!?』


『はい。とある情報筋からの連絡で、彼らの窮状を知りました。覚醒者が起こした悲劇を止める為にも、何より1人の人間として、彼らを見捨てる事は出来ませんでした』


『そのとある情報筋とは!警官隊が本部に到着する直前、城を破壊した4人組との関係は!』


『情報提供者に関しては、お答えできません。それと、本部を襲撃した4人組に関しても私から話せる事はありません。……本当に、何も知らなかったんです』


『『トゥロホース』の本部跡地には偽札を作ろうとした痕跡もあり、今後も調査が』


『本部跡地の地下から、ダンジョンのゲートが発見されました!彼らは資金源かつレベル上げにこのプライベートダンジョンを活用していた可能性があり、余罪が』


『『トゥロホース』の代表であった矢車氏が、連行される際ア●ルに折れた槍が刺さっていた事で警察による不当な暴力があったと一部SNSで噂になっていますが、元捜査一課の名宮院(めいきゅういん)さんはどう思われますか?』


『その噂は何の根拠もないでたらめですね。彼は警察が逮捕した時には、既にア●ルを破壊されていた。しかしその犯人はさっぱり見当がつきません。迷宮入りです』


『本当なんだ!あの蛮族4人組のうち3人は、あの噂になっていた謎の3人の少女達だったんだって!』


『矢車氏への暴行に関して、囚われていた女性達からの報復という噂も上がっており未だ捜査が』


『速報です!謎の襲撃者達の1人が、矢車氏と交戦している姿が映された写真が入手できました!これは、大剣が割れて大砲が現れている……?謎の襲撃者達の正体が明らかになる日も近いかもしれません!』



 と。あの覚醒者至上主義団体、『トゥロホース』壊滅のニュースが『海上ダンジョン』に匹敵する大事件として取り上げられているのである。


 何なら、追加情報が次々出るものだから、国内ではどちらかと言うとこちらの方が話題になっていた。


 事が起こったのは、自分達がちょうどミノタウロスのダンジョンに飲み込まれた頃。


『ウォーカーズ』のギルマスである山下さんが、行方不明になっていたはずの68名を連れて警察署に向かったのが発端らしい。


 この68名は自力で『トゥロホース』が実質管理する集落から抜け出し、森を彷徨っていた。それを『とある情報筋』から連絡を受けた彼が保護したのだと言う。


 すぐに警察へ連絡しなかったのは、彼らから警察関係者も『トゥロホース』の本部に出入りしていたと聞いたためだとか。


 それでもこれは自分達だけで対処できる問題ではないと、SNSを使い大々的に公表した上で警察署に『ウォーカーズ』の戦闘班と共に68名を連れて行進。警察所属の覚醒者部隊に、民衆の前で彼らの保護を依頼した。


 同時刻。衛星写真から謎の集団が『トゥロホース』の本部を襲撃している事が発覚。


 すぐに警官隊が向かうも、到着する頃には城は崩壊。中にいたクランメンバーは全員拘束されており、監禁されていた被害者達は傷を魔法で治療されていたという。


 その際助け出された人の証言から、謎の4人組は『物資輸送班』……ここ最近発生していた、ダンジョン内トラブルで手に入れたドロップ品や盗まれた冒険者の所持品が運び込まれるタイミングを狙った事が判明。


 しかし、4人組の接近を察知した『トゥロホース』は物資輸送班を外側に放置し、城門を閉め防御を固めた。


 前回の襲撃同様城壁の内側は無傷に終わる……と、思われたのだが。


 4人組は輸送班を制圧後、強奪したトラックを縄や石でハンドルとペダルを固定し城門にぶつけたのだ。


 それだけなら、多数の魔法で護られている城門には傷一つつかない。


 だというのに、城壁がまるごと崩壊した。門だけではない。丸ごとである。


 はたして何が起きたのか。それについてテレビでは評論家さん達が色々と議論しているものの、自分は『概念干渉』のスキルが関わっていると思っている。


 というか、積み荷に『あの槍』が入っていたんじゃ……。


 その時の映像はないものの、テレビで聞いた感じトラックは時速100キロ以上で城門にぶつかったらしい。『運悪く』武器ケース等に入れられず剥き出しの状態であの槍が城門に接触した場合は……。


 ……城壁の崩落で槍は壊れただろうし、死人もいないからヨシ!そもそも僕らのせいじゃないし。


 なお、矢車代表に行われたリンチは捕らえられ辛い日々を送っていた女性達の報復説が有力である。彼女らは彼のメイドにされ、いつ『ゾンビ』に変えられるか恐怖の日々を過ごしていたそうな。


 ただし、リンチの証拠は未だ出ていない。今後も出るかは不明である。


 今回の事件。覚醒者が盛大にやらかした事で『反覚醒者団体』が一時声を大きくしたものの、『解決に貢献したのも覚醒者』という事ですぐに普段と変わらないまでに落ち着いた。


 覚醒者間で自浄作用が働いており、なおかつ山下さんが……覚醒者最大手の『ギルド』が警察と連携する姿勢を見せている。


 無論、火種にはなるだろう。確実に。だが、今すぐに導火線へ火がつけられる事はなかった。


 そんなわけで。今の世の中、話題には事欠かない。


 国内では『トゥロホース』関連が取りざたされる事が増え、『海上ダンジョン』が改めてテレビの主役になるのはもう少し先の事だろう。


 もっとも、国外では後者の方がずっと報道されているが。自分達に害が来ない事を祈るばかりである。




*    *     *



 そんな感じで、世間が色々と大変な中。


 有栖川邸にて。


「お、終わった……」


「うむ。お疲れ様」


 古文の宿題を前に、ぐったりと背もたれに身体を預ける。


 約束通り、アイラさんに夏休みの宿題を見てもらっていたわけだ。『いかん女教師』姿で。


「それにしても君。古文が本当に苦手らしいね。上達したいのなら、昔の文章を楽しく読めるようになる所から始めた方が良い」


「いや。昔の本とか読んでいてもあんまり楽しめないというか……というか、古文なんて覚えても何の意味が……」


「ほう。君はババ様と私に喧嘩を売る気かね」


「すみませんごめんなさい他意はないんです」


 教鞭で頬をぐりぐりとされ、慌てて謝罪する。うん。今のは自分が悪い。


 それはそうと。


「あと……その格好で隣にいられて、集中できるわけが……」


 アイラさんの格好が、すごかった。


 夜会巻にされた長い銀髪に、細いフレームの眼鏡。首から下はスーツ姿ながら、ワイシャツのボタンがかなり外されて深い谷間が見えてしまっている。


 タイトスカートもかなり丈が短く、黒いガーターベルトが露出していた。白い太腿とのコントラストが強力である。


 なお、室内なのに何故かヒール付きの靴を履いていた。本人曰く、新しく出した物だから床の上でも問題ないとの事。フローリングに傷とかつかないのだろうか……。


 こちらの言葉に、アイラさんは度の入っていない眼鏡を小さく上げながら妖艶に微笑む。机に片手をついて前のめりになりこちらの顔を覗き込むものだから、がっつりと胸元が見えてしまっていた。


 ……レース付きの黒!!


「おやおや。君はこの格好が嫌いだったかな?」


「いいえ!大好きです!!」


「素直でよろしい」


 くっくっと笑いながら、背筋を伸ばしてしまうアイラさん。


 パシパシと教鞭を掌で弄び、彼女は視線を時計に向けた。


「さて。出来の悪い生徒が宿題を終えた様だし、そろそろパーティーにするとしよう。君も着替えてきたまえ」


「は、はい!」


「ああ、それと」


 コツコツと靴を鳴らして歩き出した彼女が、こちらを振り返る。


 くっ、短いタイトスカートに覆われたデカ尻と太腿を背後からガン見していたのがバレたか!?


「少々刺激の強い『仮装』が多いが、獣になってくれるなよ?」


「 」


 妖艶な流し目をして、扉を閉じるアイラさん。


 や、やべぇ……!今日のあの人は、いつもと違う……!


 バクバクと高鳴る胸を、両手で押さえる。


『あ、ババ様。この靴?いやまだ外で使っていないし汚れは……床に傷がつく?……どんま、あ、ちょ、アイアンクロウはらめえええええ!?』


 いつものアイラさんだったわ。


 扉の向こうから聞こえる声に、そっと両手を合わせる。安らかに眠ってくれ。残念女子大生。


 何はともあれ、自分も着替えなくては。


 今回、こちらにも『秘策』がある。それをお披露目するとしよう。



*    *     *



 有栖川邸のリビングに、色んな料理やお菓子が並ぶ中。


「では。無事ミノタウロスのダンジョンからの帰還を祝して……乾杯」


「乾杯!」


 有栖川教授の音頭に合わせて、グラスを掲げる。


「乾杯と言っても、アルコールがないのが不満だがね」


 そう言うアイラさんは女教師ルックから着替え、チア衣装になっていた。


 スケベである。とてもスケベである。


 長い髪はふわりとしたツインテールに結われ、肩出しのトップスはお胸様のサイズ故にお臍がチラリと覗いていた。


 かなりミニのスカートからは時折アンダースコートが見えており、パンツではないと理性でわかっていても、ついそのチラリズムに心が動かされる。


「しょ、しょうがないですよ姉さん!姉さんとお婆様以外、お酒を飲めない年齢なんですから!」


「自宅でぐらい好きに飲ませてもらいたいものだよ」


「そ、それにお酒で理性が飛んで、何か問題を起こしてしまう可能性もありますから!」


 と、理性が飛んで問題を起こしそうな目をして言うミーアさん。


 こちらもスケベである。やはりドスケベ一族である。


 黒いうさ耳カチューシャに、赤いボウタイ。剥き出しの白く細い肩に、メートル級バストが今にもこぼれてしまいそうな胸元。


 なんだあのお胸様は……大玉スイカが2つ並んでおられるのか?


 上乳も横乳も見えてしまっている。それほどのお胸様を支えるには細い腰と、逆にでっっっかなお尻。


 際どい鼠径部に、『太いから太腿って言うんだよぉ!』とばかりのむっちりした太腿は白いフリルのついた網ニーハイで覆われ、膝から下が長く細いエロ漫画みたいな足を晒している。


 え、この人この後この格好で縄跳びするの?マジで?


 アイラさん。僕は貴女に一生ついていきます。


 なお、そんなドスケベ一族代表はねっっ……とりとした目でアイラさんやエリナさんの肢体を眺めていた。


 ……もしかして僕は、傍から見るとああなのだろうか?いや、『精霊眼』のチラ見力はスケベ界にて最強。


 自分のスキルを、信じろ……!その為の力のはずだ!


「……最初に衣装を渡された時は、『こんな恥ずかしい格好を!?』と思いましたが……他の人を見ていると、普通に思えてきました」


「そりゃあお前。『魔装』であんだけ痴女やってればな」


「しーずーくーさーん?」


 笑顔に青筋を浮かべる毒島さんと、彼女に背後から頬を弄ばれる大山さん。


 毒島さんは何故かスク水の上からセーラー服の上着を着ていた。スク水と言っても最近導入された物ではない、いわゆる『旧スク』である。生で初めて見た。白磁の様にきめ細かい生足が眩しい。


 大山さんの方はまさかの虎柄ビキニである。海から帰ってきたはずなのに、2人とも水着姿とは。だが彼女の赤毛と虎柄は妙にマッチしている。


 何よりお胸様が素晴らしい。低い身長に反して自己主張の強いロケットなお胸様である。さらに、腰つきもしっかりと女性的なのも個人的に大変グッドであった。


「それにしても、前回に続き何故お祝い事となるとコスプレする事になるんでしょうか」


「喜ぶ奴がいるからじゃねぇの。具体的にいうとアレとアレ」


 そう言って大山さんが呆れた様な目で自分とミーアさんを見てくる。


 言い訳をさせてもらうのなら、毎回言い出しっぺはアイラさんだ。自分は悪くない。


 やっぱり一生ついていきます……!アイラさん……!


「ねえねえ京ちゃん!」


「ん?」


「その格好可愛いね!猫さん?」


 は?『おまかわ』だよこの自称忍者。


 エリナさんは今回、メイド服である。しかしメイド原理主義者が見れば改宗か発狂かの二択と言って良い、改造メイド服だ。


 全体的には普通のミニスカメイド。しかし、北半球が見える様に胸元が開いている、エロゲ仕様のメイド服である。


 半端ねぇな、このスケベ一族。


 無邪気な笑顔でこちらの『着ぐるみ』を指でつつくエリナさんの胸元から、視線を外す事が出来ない。


 なんという絶景か。この白い渓谷になら、ノーロープバンジーをしたい者が続出するだろう。


 渓谷を中一の頃『いんこく』と読んでしまった事があるが、その頃の自分にこう伝えたい。


 淫谷(いんこく)は、あったよ……!


「一応、猫じゃなくって犬だよ」


「あ、そうなんだ!」


 ちなみに、自分は顔出し着ぐるみを着ている。


 何を隠そう、これこそが我が秘策。何故なら───これなら、生理現象が発生しても周りからわからない!


 胴体部分にまでクッションがぎっしりであり、膝辺りまでダボッとした形状をしている。非常に歩きづらいし暑苦しいが、そこはそれ。何のためのレベルとステータスか。


 ダンジョン探索や氾濫で生き残る為じゃないのかって?今だけは忘れた。


 これにより、自分は常に前かがみの姿勢を強要されなくなったのである!


「でもそれだと食べづらくない?お箸持てる?」


「スプーンとフォークなら持てるので、それで」


「えー!お寿司もあるのにそれじゃダメだよ!邪道だよ邪道!」


 エリナさんが日本生まれ日本育ちというのは知っているが、見た目西洋色の強い彼女がそう言うと凄い違和感である。


 まあ、確かに自分もフォークでお寿司を食べた事はないが。それでもたぶん問題はないだろう。


 そう思っていたのだが、何やら思いついたのかエリナさんが笑顔で手を叩いた。


「そうだ!私達で食べさせてあげる!」


「は?」


「おーい!シーちゃんアーちゃん!こっち来て手伝ってー!」


「何をしたいのかは聞こえていたけど、マジかよお前」


「そ、それは流石に恥ずかしいですが……でも、まあ、うーん」


 ジト目を向けてくる大山さんと、顔を赤くして視線を逸らす毒島さん。


 え、まさかとは思うが、エリナさんがやろうとしているのは。


「でも餌付けみたいで楽しそうだよ?はい、あーん!」


 あーん……だとぉ……!?


 笑顔のまま、お箸でいくらの軍艦巻きを差し出してくるエリナさん。無邪気な顔の下に見える、凶悪な谷間。


 際限がないのか、このドスケベ一族……!


「あれ、食べないの?いくら嫌いだった?」


「大好きです!」


「よかったー。あーん」


「あ、あーん……」


 ……うん。味がわからねぇや。味覚にいくべきリソースが、視覚に回されているのだろう。誰だってそうなる。お寿司屋さんごめんなさい。


 でも幸せな味だという事はわかる。ありがとう、お寿司屋さん……!


「おーおー。ダンジョンとは違ってだらしない顔してんな、こいつ。まあ見ている分には面白いか」


「確かに楽しそう……かも?」


 そう言ってお箸を手に取る大山さんと毒島さん。


 なるほど……ここは天国らしい。


 椅子に座った状態で、綺麗に背筋を伸ばす。顔が真っ赤だと自覚しているが、これは着ぐるみの暑さのせいだ。そういう事にしてほしい。


「アイラ。若いうちに多少はめを外すのは構いませんが、無理強いはいけません」


「おやババ様。私はきちんと全員から許可を取っているよ?」


「……私まで巻き込まれるとは、思っていませんでしたけどね」


 そう言って、視界の端でアイラさんに抗議する有栖川教授。


 孫が3人もいるのだが、エルフになった事で20代の美女にしか見えない。そんな彼女が身に着けているのは、まさかのブルマである。


 白い半袖の体操着に、赤いブルマ。昭和の一時期なら普通だったかもしれないが、今になって着るのはかなり恥ずかしいらしい。


 珍しく教授が顔を真っ赤にして、裾を引っ張り前を隠そうとしている。


 ……そうすると後ろから綺麗な小尻と美脚が丸見えなのだが、何も言うまい。


「だがねババ様。この中で1人だけワイシャツにジーンズとかだと、絶対に浮くぞ?周りも楽しみづらいじゃないか」


「……否定はしません。そもそも、私とサナは参加しないつもりでしたが」


「はぁん?この場にいる者は全員あのダンジョンを踏破するのに尽力した仲間じゃないか!それを不参加にさせるなんて、不義理にもほどがある。なーサナ君!」


「この子は本当にああ言えばこう言うのだから、もう……!」


 机の一角に置かれた鳥かごに笑いかけるアイラさん。その中にはサナが入っている。


 通常魔力しか食べない彼女だが、今は教授が焼いたクッキーをポリポリと食べていた。


 軽いリラックス作用のある魔法薬を混ぜ込む事で、精霊でも食べられる様にしたのである。ただ、教授の魔力では何故か食べてくれなかったので、魔力を籠めたのは自分だが。


 相変わらずアイラさんには見えていない様だが、あの時……ミノタウロスと戦っていた時彼女は確かに自分と同じものが視えていたはず。


 これは、また後で精霊との融合について考えねば。


「はい、あーん!」


「ぁ、ぁーん……」


 ダメだ。今は一切思考が回らん。おっぱい。


「うう、姉さん。本当に私、この格好で縄跳びをするんですか?」


「良いじゃないかミーア。ポロリしても大丈夫な様、ニプレスをつけているだろう?ピンクでハートのやつ」


「ひゃあああ!?めくらないでください!」


 バニーガールの胸元を、ペロリと下げるアイラさん。あらわになる桃色のニプレス。


 アイラさん……貴女の下で働けて、本当に良かった……!


「ほら頑張れ頑張れ。私がこんな頭の緩い陽キャみたいな格好をしたんだ。君も女を見せたまえ」


「姉さんはチアリーディングの人に何か恨みでもあるんですか……。し、仕方ありません。これも約束です」


「うんうん。約束は守らないとな」


「京太君が乳首を出すという約束もありますし」


「え?」


「うんうん。約束は守らないとな」


「ちょっと?」


「おう矢川。あーんだ、あーん」


「はーい、矢川さーん。お口あけてくださーい」


「思いっきり笑ってますよそこの2人!?」


 ニヤニヤと笑う大山さんと毒島さん。くっ、他人事だからって!


 無邪気なエリナさんだけが味方……でもねぇわ。この人絶対『約定を護るのが忍者だからね!』とか言って剥いてくるよ。こっちは頷いた覚えねえのに!


 助けを求め教授に視線を向けるが、ミーアさんが縄跳びをする所にマットを敷き始めている。救いは、ないのか……?


「ええい!僕は脱ぎませんよ!何が悲しくて野郎の乳首なんかですね」


「では、三好ミーア!跳びます!」


 たゆん♡ばるん♡


「京ちゃん君も頷いてくれているな。これは了承と考えて良いだろう」


「どう見ても、胸の動きに合わせて顔が動いているだけに見えますが……教育者として、止めるべきか。いえ、今日はオフだから別に良いですね」


「ここまで分かりやすいと逆に面白いな……」


「襲ってこないという安心感もありますしね」


「うう……!恥ずかし過ぎますよ、姉さん……!」


「先輩、ファイトー!縄跳びで空を飛ぼう!いけるいける!」


 この後、着ぐるみを脱がされそうになったが下だけは死守した。


 乳首はミーアさんに激写されたが、尊厳は守られたのである。


 ……守られたかなぁ!?


 そんな馬鹿笑いの絶えないパーティーを終え、また日常は続いていく。


 ……まあ、何というか。



 生きているって、素晴らしい。





読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
これが尻Assパートか。 呪いの槍はいい仕事をしましたね。
ウォーカーズを矢面にトゥホローズ壊滅のタイミングを操り、キーアイテムを仕込んで流れを掌握しながら話題性をも得ることで、海上ダンジョンから世間の目をそらす。 あまりに鮮やかな智謀、さすがはプロフェッサー…
おかしいなあ、忍者がヒロイン枠だと思ってたのに今のところ一番遠い傍観者だ。
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