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エピローグ ゾンビマスターは『天至の聖塔』を踏破する





 数々の強力なモンスターを倒し凶悪なトラップを乗り越えた先、たどり着いたのは『天到の聖塔』の100階層。


 そこで僕たちを待ち受けていたのは、重々しい威厳を感じさせる老人だった。


「ようやく、来たか……」

「あなたが……」

「うむ、このアリシュテルト神聖皇国の皇帝よ……もう、余にはその力などなく……死を待つだけの存在だがな……」


 言う通り、目の前の男には威厳こそあれど、生命力のようなものは感じられない。


「ダンジョンマスターとしての力で、世の理よりも長く生きてきた。その力が失われれば、こうして余に死が訪れるのも自然なことよな……ようやく解放された、と言えばそうも感じるし……余の力を継いでくれるものが人族から現れなかった、ということに無念を感じないでもないな……」


 そうは言うものの、老人の顔はどちらかというとスッキリしているようにも見える。


「そう、ですか……」


 でも、それを伝えることに意味はないだろう。僕はただ相槌だけを返す。


「お主が、『深淵の腐界』の、ダンジョンマスターよな?」

「はい。アリシュテルト神聖皇国に召喚されたゾンビマスターであり、その後『深淵の腐界』のダンジョンマスターとなりました」

「うむ……良い力を感じる。今のそなたには、余の全盛期であっても……及ばぬであろうな。どうせならば最後はお主と戦って散りたかったものだが、それももはや叶わぬな」


 話すだけでも精一杯なのか、老人の身体からはどんどんと力が失われていく。


「ベルティアナは見誤ったな……ミディラヌ教に重きをおきすぎて、自ら呼び出した英傑を失う。大切なのはミディラヌ教自身ではなく、人族の民の心を失わぬための力であったというにな。お主の力があれば、たとえダンジョンマスターでなかろうとも魔族は抑えられただろう……頭は誰よりも切れたのだが、少々真面目に育てすぎたのだろうな」

「はは、確かにベルティアナは、頭が硬いですね……」

「うぬ……あやつは、ベルティアナは、逝ったのか?」

「いえ……僕が『天到の聖塔』を登り始めたときには皇城にいましたよ。腐族にもなっていません……彼女がこれからどうするのかは、僕にはわかりませんよ」


 老人は小さく頷く。


「うむ、余にも、もう何もしてやれることはないが……ふむ…………」


 何か言いたいことがあったのかもしれないけど、目の前の老人はそれ以上何も言うことはなかった。


「あと僅かばかりの時間が残されているな……何か余に聞きたいことでもあるか?」

「そうですね……あなたが亡くなったあとは、どうなるんですか?」

「うむ……正直なところわからぬが、おそらくはこのダンジョンの力もお主に譲渡されるのではなかろうか。これまでの世界では『灼熱の炎獄』のダンジョンマスターである龍王が一番の力を持っていたわけだが、お主はそれに匹敵する能力を得ることになるのやもしれんな。もっとも、この『天到の聖塔』の力がどのような形でお主に渡るのかはわからぬが……ミディラヌ教の信徒から力を得る、などということにはなるまいよ」

「そうですね……ミディラヌ教の人、いなくなっちゃってますしね……」

「うむ、腐族という存在に合わせた、何かしらの条件が課されることだろう」


 まあ、今のゾンビマスターと『深淵の腐界』のダンジョンマスターの力だけで十分も十分な力があるわけで、あえてそれ以上の力を得る必要もないわけだけど。


 しかし龍族ってのは、いつだか遭遇したあの鱗のついた美少女の種族だろうか?


 彼女のおかげで愛奈を傷つけずに取り戻すことができたんだし、できればいつかは感謝の言葉を伝えにいきたいところだ。


「……人族は魔族と争っていたみたいですが、魔族は僕たち腐族のことも攻めてくると思いますか?」

「わからぬ、な……『天到の聖塔』は人族の数と願い次第で力を与えてくれる存在であり、だからこそ我々人族には領土拡張の意欲があった。それゆえに領土を接している魔族と揉めることも多かったわけだ……主らが魔族領側への浸潤をせぬと約するのであれば、魔族は引くかもしれんな。もっとも……魔王のやつも戦好き。どう動くかは正直なところ余にもわからんよ」

「そう、ですか……魔王って、戦好きなんですね」


 まだ見ぬ魔王……戦うのが好きってことなら、いつか戦う必要があるのかもしれないのかな。


「うぬ……だが、今の魔王とお主なら、お主の方が力は強いだろうな。魔王は馬鹿ではないからの、今の状況で直接戦闘に出てくることは、なかろうよ……ごっ、ゴホっ……」

「……大丈夫ですか?」

「だめ、だなっ……くくっ、そんな顔をするな、単純に時間がきた、というだけのことよ」


 短い時間話ただけでも王としての度量に優れていることが理解できた目の前の老人。


 きっと彼は良い王であったのであろう。


 彼に直接この世界に呼び出されていたのならば、僕のこの異世界転移も全く違ったものになっていたのかもしれない……だけど、今更そんなことを考えても何にもならない。


 目の前の老人は姿勢を崩し、椅子へと寄りかかる。


「人族の最後の王として、死ぬ瞬間は腐族の王たるお主の前ではなく、一人で今は亡き人民へと思いを馳せたい……外してくれるか?」

「はい……色々と教えてくれて、ありがとうございました」

「構わぬよ。勇者よ、そして腐族の王よ……お主の将来、楽しみにしておるぞ……」


 笑う老人に背を向けて、僕は99階層へと降りる。




 数刻の後……




──超S級ダンジョン『天到の聖塔』の踏破を確認しました

──ダンジョン踏破者にユニーク称号【ダンジョンマスター】を与えます

──エラー

──踏破者は【ダンジョンマスター】の称号を既に有しています

──……

──……


 そんな聞き慣れたメッセージが、僕の脳内を流れていくのだった。





(完)


このお話はここで完結になります。最後までお読みいただきありがとうございました。初めての小説家になろうへの連載作品の投稿でしたが、たくさんのご高覧・ご評価をいただきとても嬉しかったです。『なかなか面白かった』『他の作品も頑張れ』などと思っていただけましたら、↓の☆☆☆☆☆評価やブクマ登録から応援していただけると幸いです。


〜Novpracd


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ダンジョンおじさん2   ”悪役貴族”

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