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4−10 ゾンビマスターは幼馴染と再会する






 残っていた人族の全てを腐族へと落とし、僕たちは皇城を完全制圧した。


 つまり、このアリシュテルト神聖皇国の皇都アリアは、完全に僕たち腐族のものとなったというわけだ。


 他の都市も順調に腐族たちに侵食されていってるようだし、この世界の人族が滅ぶのは時間の問題といったところだろう。


 人族が滅んだ後でも世界には魔族、龍族、妖精族が残っているわけだけど、別に僕には彼らを全部滅ぼして世界を腐族で統一しようなんていう大それた欲望があるわけではない。


 向こうから敵対してくるっていうのなら話は別だけど、この人族の領土とゾンビダンジョンの周りの土地を中心に腐族の世界を発展させていくつもりでいる。


「っていうわけなんだよ、愛奈……」

「うん、秋人くん、いっぱい頑張ったってことだね?」

「そう、だけどさ……愛奈は、ひかないの? 僕、この世界の人族、滅ぼしちゃったんだよ? 直接殺した人も、直接ゾンビに変えた人も、いっぱいいるんだよ?」


 そんな僕の言葉に、愛奈はにっこりと優しい笑顔を返してくる。


「君を全肯定して愛することだけが私の存在意義だよ。たとえ君がこの世界そのものを滅ぼすと決めたって、私は君のことを最後のその瞬間まで愛しているさ」

「そう、そう言ってくれると嬉しいよ……」

「ふふ、それはいいのだがね……」

「ん?」


 そんな彼女の優しい笑顔が妙な形に崩れ、愛奈はもじもじと身体を動かし始める。


「あっ、なんだっ、君が忙しいのはわかっているんだが……久しぶりにこうして秋人くんに会えてるわけで、ちょっと我慢がっ、できそうにないんだよっ。すまないが、身体が疼いてしまってっ、どうしようもないんだっ」


 なんていうことはない。愛奈は発情しているのだ。もっともそれは僕も一緒。

 前世でも唯一身体を交えた愛奈。

 久々に感じる彼女の優しい匂いに包まれていれば、たぎってくるものがあってもしょうがないと思うんだ。


「うん……あとはあの塔を落とせばいいだけだし、そんなに急ぎじゃないし、ほら、こっちにおいで……」

「う、前世の時よりも余裕のある秋人くん……格好良すぎるよっ」


 腕の中に飛び込んでくる愛奈を抱きとめ、彼女の美しい唇に存分に吸い付く。


 前の世界での愛奈との最初で最後の交わりから長い時が流れ、色々僕の在り方も変わってしまった。


 だけど、彼女という幼馴染を想う僕の心には変わりがないよう。


 そんなちょっとしたことに、ホッとしていたりもする。


「秋人くんっ、好きだよっ、私はっ、あっちの世界で君がいなくなってしまって、とても辛かったんだっ。でもっ、こうしてっ、また会えたっ……ぐすっ……」

「愛奈、僕も、愛奈が大好きだよ……この世界には他にも愛してる人たち、っていうかゾンビたちがいるんだけど……それでもよかったら、愛奈とはこっちの世界でも愛し合う関係のままでいたいと思ってる」


 空気を読んだのか、僕たちの部屋の近くにはいない様子のゾンビの仲間たち──ルーナ、マリー、ナーニャ、コーネリア。


 彼女たちのいない人生なんてのはもはや考えられないわけだけど、元の世界の時からの愛奈への気持ちにも変化はない。


「当たり前だよ、秋人くんほどの男だもの。君が私一人で相手できるような男じゃないってことは、前の世界にいた時から思っていたことだからね。前の世界なら第一夫人の座は狙っていたと思うけど、この世界では新入りの若輩者さ。秋人くんとこうして再び交わることが許されるなら、それだけで幸せだよ」

「ええ? 前の世界の時、そんなこと思ってたの?」

「ああ、君は自己肯定感ってやつが低いのだけが玉に瑕で、君と言う存在を目立たないものにしていたけれど……君には隠しきれない運命の力ってやつが見え隠れしていたんだよ。私のような女にはそれが堪らなくてね……正直なところ性に目覚めるような年頃には、君に完膚なきまでに惹きつけられてしまっていたのさ」


 理由もわからないままに僕のことを好きだと言ってくれていた愛奈。


 もちろん彼女が僕を好きだって気持ちを疑ったことなんてなかったんだけど、まさかそこまで僕に惹かれていたとは。


 いずれにせよ……


「愛奈、このまま、いいかな?」

「うん、もちろんだよ」


 どうしようもないほどの愛奈への愛情を感じながら……僕は愛奈と再び一つになったのだった。




 幸せそうに気絶したままの愛菜の黒髪を撫でてから僕は立ち上がる。


「さて、最後の仕上げだけ、しないといけないよな……」


 僕は窓の外に顔を出し、天を貫くように伸びる塔を見つめる。


 以前は神々しくも見えたそのダンジョンは、今では崩壊の時を待つ寂れた塔にしか見えない。


 僕はその最上部で待つであろう人族のダンジョンマスターの元に、向かうことを決めたのだった。





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