4−3 ゾンビマスターのゾンビたち〜謎の4人組フレッシュゾンビたち〜
アリシュテルト神聖皇国第二の都市ミーレル。
普段は賑やかな人並みが途絶えることのない大都市だが、今はその街中は戦場と変わり果てている。
聞こえてくるのは何かの破壊音、絶望したような悲鳴、そしてゾンビの唸り声だけ。
そんな殺伐とした街の1角を、こそこそと動き回るものたちがいた。
「なあ……あいつってさ、やっぱり、あいつだったよな?」
「そ、そうだねっ……なんていうか雰囲気が前と違うっていうか……かなり危なそうな感じだったけどさ」
「そうよねえ、前はもっとなよなよした雰囲気だったと思うんだけどお……さっきのあの子、触れるだけで火傷しちゃいそうな、そんな危うそうな雰囲気だったわねえ」
「うむ」
顔を突き合わせて相談しているのは、女性の4人組だった。
その顔立ちはみな良く整っているが、その顔色は全員揃って青白い。まるでゾンビのような顔色をした女性たちだった。
「で、どうする? 選択肢としては、あいつの言うとおりにする、あいつに逆らってゾンビの方と戦う、もしくはこの街から逃げ出す……ってあたりだろうな」
「ゾンビと戦う……ってのはなしだよね。あいつが危なさそうってのもあるけどさ……僕たちと一緒に召喚されてたの、あれ何?」
まるで震える身体を抑えるように両手で自らの身体を抱きながら、小柄な青髪の美少女が掠れ声をあげる。
彼女が思い出していたのは、召喚された彼女たちの横にいた恐ろしい気配を放つ巨大なカマキリや狼やオーク。
比較的普通の人間に近い体躯を持つ筋肉質なゾンビたちもいたが、それであっても彼女たちが太刀打ちできるわけのない存在だったことは確かだった。
「ああ、やばそうだったよな……こんな風になっちまう前のあたしたちでも、勝てるわけがねえゾンビたちだったな」
「うん……」
「ええ……」
「うむ……」
S級冒険者チーム『アマゾネス』のメンバーとして確かな力を持っていたアマンダ・クリーシュラ・サフィナ・ダリア。
だからこそ、彼女たちは共に召喚されたゾンビたちが持つ異常なまでの力を理解しており、そんなゾンビを召喚することのできるアキトに逆らうなんてことは考えられなかった。
必然、アキトと戦うという選択肢は彼女たちの中から排除されることになる。
「このまま、逃げてもいいんだけどさ……さっきのことを考えるとさ、僕たちって何かのスキルでいつでもあいつに召喚されちゃう、ってことなんだよね?」
「うむ」
「そうなると、あいつの指令、この街の人間をゾンビにしろって思念に全く応えない……ってのもまずいかもしれないよね」
「そうねえ、元々のあの子ならちょっと言うこと聞かなかったからって逆上するようなタイプには見えなかったけど……今のあの子は、いらないと思ったらあっさり切り捨てちゃうようなタイプに見えたわぁ」
魔法使いの衣装に身を包んだ美女が、小さく両手を上げながらそんなことを言う。
「それじゃあ……あいつの言うとおりに……やる、しかないか? どのみちあたしたちはもうゾンビになっちまってるわけだしよ、今更少々手を汚したところで、何も変わりはしないだろ?」
「で、でも……ミディラヌ様が、僕たちのことを見ていらっしゃるかもしれないし……」
「大丈夫だって、ミディラヌ様だってこんなゾンビだらけの世界なんて、ずっとは見ていないはずさ。それに……俺たちって、その、しちゃっただろ? あたしたちってさ、既にミディラヌ教の禁忌を犯しちまってるんだよ」
「そうよねえ……まさか女同士が、こんなに良いだなんて、思ってもいなかったわねえ」
「……うむ」
どこか表情を緩ませ、もぞもぞと内股を擦り合わせながら身体を揺する女たち。
どうやら彼女たちは、ミディラヌ教で禁じられている未婚の女同士で結ばれ合う関係、つまりは肉体関係を持ってしまっているようだった。
「よしっ、もう一回呼び出された時の言い訳ができるように、適当な数の住人をゾンビ化させておく。その騒ぎに合わせて、ミーレルの街を抜け出してあいつに見つからないように潜伏する。もしもう一度呼び出されちまった時には、それなりの数の住人をゾンビ化させておいたってことをアピールして言い訳する……こんなとこでどうだ?」
「うん、僕はそれでいいと思う」
「私もそれでいいわよお」
「うむ」
ミーレルの街に新たな混沌を作り上げる、妙に動きの良い4人組ゾンビが動き出したのだった。








