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3−1 ゾンビを召喚したら美少女だった








 目を開くとそこは小鳥の鳴き声の響く穏やかな森の中だった。


 森の木々の間からはキラキラとした陽光が差し込んでおり、美しい森を更に綺麗に彩ってくれている。


「あー、なんかめちゃくちゃ良く寝れた感じーっ……」


 寝る前に比べて身体がめちゃくちゃ軽くなっている気がするし、頭も霞が晴れたかのようにすっきりと冴え渡っている。


 徹夜での連勤明けに1日ぐっすりと眠り続けた後で身体が完全に復活したときのような……そんな爽快な感覚だった。


 この寝起きなら今日はとても良い1日が過ごせそうだ──


「──って、ここどこっ? ……どこかで見たことがあるような…………って、あ、ゾンビダンジョンの入口のところか。こんなところで寝てて、僕よく無事だったね……」


 ダンジョンの入り口なんてところで寝ていたりしたら、野盗なりモンスターなりに襲われそうなものだけど……運がよかったのか、それとも僕がさっきまで寝ていた気分になっているだけで実際に寝ていたというわけではなかったのか……


「もしかしたら、ダンジョン攻略できて、そのまま外に吐き出されたところだった……ってことなのかな? 他に人は……いないね……」


 キョロキョロとダンジョン入り口の周りを見回してみても人影は見当たらない。

 

 考えてみれば『アマゾネス』のやつらとダンジョンの中を探索してたときにも誰にも会わなかった。


 もともとここは不死系モンスターばかりだからかなり不人気のダンジョンだったっていうし、それも当然のことなのかもしれない。


「さて、ここにいてもしょうがないし……かといってあのダンジョンに戻る意味もないよな……」


 攻略済みのダンジョンの中にまた戻ってもしょうがないので、ダンジョンから伸びる森の小道の方へと足を進めてみることにする。


「この状況でどこに行ったらいいのかなんてわからないんだけど……」


 『アマゾネス』に裏切られてからというもの、ダンジョンの中で結構な時間を過ごしてきた。

 

 きっと『アマゾネス』からは僕が死んだって報告が冒険者ギルド、そしてアリシュテルト神聖皇国にも上がっているはず。


 そうなると、今この瞬間に僕が国から追われているって可能性は低い……と考えて問題はなさそう。


「ってなると、とりあえず人のいるところに行く必要があるよなあ。『アマゾネス』のやつらは、ゾンビダンジョンに入る前に空き家で一泊してて……確かその前は……えっと、小さな村に寄ってたんだよな……?」


 『アマゾネス』のやつらと一泊した小さな宿が一つあっただけののどかな村──あそこは確かロロ村とか言ったっけ?


 お金もないわけだしそのロロ村に行って何をするか、ってのも微妙なところなんだけど……とはいえ僕が野山の中で一人生きていけるわけはない。僕はソロキャン系の技術を鍛えてきた転生者ってわけじゃないのだから。


 この先の生活への道筋をつけるためにも、まずは人里を目指す必要はあるだろう。


「んー、確かこっちの方だったよなあ……」


 僕はあやふやな記憶を頼りに、まずは野営した空き家、そしてその先にロロ村があるはずの方向へ歩き続けていく。


 そんな感じで2時間ほど歩いていると、なんとなく記憶にあるような風景が見えてくる。


「お、おおっ、そうそう、そうだよっ! 確かにこんな感じの風景だったね。このまま後1時間も進めば、例の空き家につくはずだよな……って、うわっ、あれモンスターじゃんっ。んー、なんで僕ってこう運が無いのかなー……」


 ようやく道がわかって安心できたかと思えば、その道を塞ぐようにモンスターが現れる。


 しかもあいつはどっかのダンジョンで見たことがある。


 S級冒険者グループ『アマゾネス』のやつらですら、チームで対応していたほどのかなり強力なモンスターだ。


「なんで街道沿いなんかにそんな強力なモンスターが出てくるんだよ……」


 人族領土の治安維持に力を入れているアリシュテルト神聖皇国では、森の中とはいえ街道の周囲では定期的にモンスターが排除されている。


 こんなに強力なモンスターが街道沿いにまでやってくる……ってのはちょっと異常事態な気がする。まあ、確率的に0とまでは言えないから、極端に運が悪かっただけってことなのかもしれないけど……


「んー……しかもゾンビじゃないってことは、僕はあっさりやられちゃうってことだよね……」


 【ゾンビ・マスター】である僕が無双できるのはゾンビが相手のときだけ。人間や普通のモンスターは僕にとってどうしようもない強敵のままなのだ。


「……って今の僕のステータスってどうなってるんだ? ……《ステータスオープン》」






***********

名前:ヒラヤマ・アキト

種族:異世界人

称号:異世界ブレイブダンジョンマスター・腐界の王

装備:封印の指輪(呪)


LV:1 (固定)

HP:481/481(+20%)

MP:724/729(+20%)

攻撃力: 519(+20%)

防御力: 436(+20%)

魔攻力: 731(+20%)

魔防力: 664(+20%)

素早さ: 432(+20%)


固有職業:

【ゾンビ・マスター】

固有スキル:

《オートトランスレート》

《ステータスアップ・ブレイブダンジョンマスター》(半封)

《パーシャルターンアンデッド》

《ゾンビステータスアナリシス》

《サモンゾンビ》

汎用スキル:

《ステータスオープン》

***********



「……って、あれ? なんか色々変わってるし、ステータスもめっちゃ上がってるっ!? 言われてみれば、起きてから身体がめちゃくちゃ軽いのって、よく寝たからってレベルじゃなかったよな。これだけ歩いてても全然疲れてないし……」


 僕の身体ステータスは異世界勇者のときよりは少し低いもの。これだけのステータスがあれば異世界で普通に生活していく分には問題ないだろうけど……強力なモンスターや力や技を持つ人間と戦えって言われたら不安が残る。


 そう、例えば今ちょうど目の前にいるこのクマ型のモンスターを相手にする場合とか。僕の今のステータスは、こいつに正面から打ち勝てるってほどのものではなさそうに思える。


 となると……一工夫を打つ必要がある。


 効果が期待できるのは……こいつか。


「……《パーシャルターンアンデッド》」


 僕は目の前のモンスターの腕部に向けてゾンビ化の《スキル》を放つ。


 あのモンスターはあのぶっとい豪腕から繰り出す殴り攻撃が中心だったはずだけど、ゾンビ化さえしてしまえば僕の前では無力になるはず……なんだけど……


──《パーシャルターンアンデッド》がレジストされました


「あちゃー、普通のモンスターにはこの《スキル》効かないってことなのかな。もしくは僕が低レベルすぎるのか、あいつが耐性を持ってるかってところなんだろうけど……って、まずっ!」


 《スキル》を使われたことを感知したのか、目の前のモンスターは僕の存在に気づいてしまったようだ。


「グォォォォォォオオオオオッッッッッ」


 身体の芯が震えるような大声で叫びながら突っ込んでくるヒグマサイズのモンスター。


「くぁぁっ! アブねっ! ちょっ!」


 上がったステータスを最大限に利用し、僕は振り回される長い腕をなんとかかわしていく。


 でも、全然余裕はない。ぶんぶんと風を切る音が僕の耳元で鳴り響き続ける。


「こっええっ! ちょっと前のステータスのままだったら、これ既にゲームオーバーだったよっ……」


 ステータスがかなり上がってるおかげでモンスターの攻撃をなんとかかわしきれている。


 だけど、これがいつまで続けられるかはわからない。


 早めに何か手を打つ必要がある。


 改めて自らのステータスボードを思い出していると、以前のステータスからもう一つ変化があったことに気づく。


「今の状況を助けてくれるのはこれかっっ……《サモンゾンビ》!!!!」


 その新しい《スキル》を発言する言霊を唱えた瞬間──頭の中に浮かんだのは見知った美少女の顔だった。


「ルーナっ!!!!!」


 その名前を呼んだ瞬間、目の前が暗い闇へと包まれる。


 その闇を振り払うようにして僕とモンスターの間に現れたのは……


「……ルーナ、来てくれたんだね」

「はっ。アキト様、お呼びいただきありがとうございますっ…………状況を見るに、このモンスターを駆逐すれば?」

「うん、頼むよっ!」

「はっ!!」


 そんな返事を返してくる美少女にむけて、クマモンスターの豪腕がぶんっと振るわれる。


──パンッ


 その太い腕は……ルーナの青白い細腕に静かに受け止められる。


 見た目的にはだいぶおかしな光景だけど……この世界ではステータスの力を覆すのはそう簡単なことではない。


 最強キャラっていいルーナにとっては、クマモンスターの攻撃などそよ風のようなものなのだろう。


「アキト様に害をなそうとする害獣めっ……死になさいっ」

「消えたっっ!?」


 ふっとルーナの身体が消えた──と思った次の瞬間、彼女の身体がクマの頭の横に現れる。


 そのまま放たれる美しい後ろ回し蹴り。


──バスッッ


 っと軽い音をたてて、クマ型モンスターの頭が弾け飛んだのだった。








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