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2−6 異世界最強だって弱い場合もある











──パスンッッ








 大きな目が見開かれ、美しい灰色の瞳が驚愕の色に染まる。


「…………なっっ、なぜですかっ!? 何故普通の人間にこの攻撃が受けられるのですっ!?」

「ふっ、何故だろうかね……」


 そんな風に余裕の顔を見せてるけれど、実際のところ僕の心臓はバクバクと高鳴っていた。


 っていうか普通に死んだかと思ったわ。


 いや、むしろ……なんで僕、死んでないの?


 攻撃力5桁の彼女と防御力1桁の僕。


 普通に考えれば僕なんてチリも残さずに爆散してしかるべきだろう。


 だけど、僕が感じた……いや感じなかった衝撃は、これまでの雑魚ゾンビたちの時と一緒……


 ひんやりと頬に伝わってくる彼女の冷たさだけが、彼女がそこを攻撃したってことを教えてくれている。


「…………いや……もしかしたら僕は思い違いをしていたのか……」

「くっ……私が取るに足らないとでもいいたいのですかっ! 最初のこれはただの様子見ですっ、はぁぁぁっっっ!!」


 僕の言葉を曲解した彼女が、凄まじい速度の連撃を開始する。


 正直に言って彼女の蹴りも突きも全く見えはしないけど、その速度はこれまでに出会ってきたゾンビたちの更に一ランク上のものって感じがする。


 だけど……凄まじい威力を生み出していいはずの彼女の冷たい手足が触れる場所からは、なんの衝撃も伝わってはこない。


 もし、僕がさっき見た彼女のステータスが正しいのだとしたら……


 彼女や、これまでのゾンビ達が弱かったわけじゃなくて……


 何らかの理由で、僕の方が強力なゾンビたちの攻撃を無効化しているってこと。


「それなら……」


 だから……僕はもう恐れはしなかった。


 目の前の彼女が、あからさまに見た目がヤバそうなスキルを準備していたとしても。


「ふふっ、そうでしたかっ……どうやら何かしら物理防御特化の《スキル》でもお持ちのようですねっ。ですが、私を物理攻撃だけの女だと思われるのは心外です…………《ダークフレア》」


 闇色に染まった彼女の手のひらから、漆黒の炎が飛び出す。


 深淵世界の炎がそのまま飛び出してきたかのようなそのスキルは、見た目的には絶対やばい威力のはずなんだけど……


 僕はそれを避けもせずにただ受けいれる。


「……なんも感じないんだよなあ」


 つまりはそういうこと。


 たぶんだけど、このスキルも、これまでのでかいカマキリやらスライムやらから受けてきたスキルも、実はめちゃくちゃ強いスキルだったってことなのかもしれない。


 そんなのを受け続けてきた僕が、なんで無事なのか……?


「ゾンビ系モンスターからの攻撃無効化、おまけにゾンビ系モンスターへの攻撃力極大強化ってところだろうな……」


 おそらくそういった基礎能力が【ゾンビ・マスター】の職業には備えられているのだ。


「くっ、闇属性魔法も効きませんか……つまり貴方はこのダンジョンに特化した能力を揃えている、ということでしょうね……ですが、私をそれだけの女と思われては──」

「あ、1分経ちました」

「えっっ、そ、そうですか……わかりました、ルールはルールです。では、貴方の攻撃の番ですね。私も防御力には自信がありますから、遠慮なく、どーんっと来てください……」


 そう虚勢を張っている彼女だけど、その灰色の目の奥には若干の不安の色が見え隠れし始めている。


 さもありなん、彼女自慢の攻撃がまったく通じなかった相手が僕。


 そんな相手がどんな攻撃をしてくるかなんて、想像することなんてできないだろう。


「そんなに心配しないでも大丈夫ですよ。貴方みたいな美少女を傷つけたりなんてしませんから……」

「なっ……しっ、心配などしていませんっっ!! さあ、どこからでもかかってきなさいっ!」


 大きく手を拡げた彼女にむけて、僕はゆっくりと距離を詰めていったのだった。





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