⭕ トイレで、かくれんぼ 1
今日は終業式。
明日からは待ちに待った夏休み!
終業式が終わって午前に帰れるのが嬉しい♥
電車通学だから家に帰宅出来るのは15時前になっちゃうけど…。
7月中に夏休みの宿題を終わらせちゃおう!
夏休みの宿題が少ない高校で良かった♥
帰りの会の挨拶が終わったから席を立って教室を出ようとしたら────。
「 ツユキ〜〜、ちょっと良いかな? 」
「 な…何?
アライさん…。
私…急いでるんだけど…… 」
「 ちょっちさぁ、ウチ等に付き合ってくんないかなぁ?
人手が足りなくてさぁ 」
「 人手が足りないって……。
そんなに居るのに?
どうして…… 」
アライさんの近くにはイシイさん,タキグチさん,サカモトさん,サトウさん,ニシグチさん,ウメムラさんの6人が居て、アライさんを入れたら7人になる。
十分な人数だと思うし、これで足りないって何するつもりなの??
アライさん達のグループとは関わりたくないのに……。
「 突っ立ってないでさぁ、行くよ! 」
「 あっ──私の鞄!
アライさん、返して! 」
「 返してほしかったら旧校舎まで着いて来なさいよ! 」
「 旧校舎?! 」
冗談じゃない!
旧校舎は老朽だから立ち入りが禁止されていて入っちゃいけないのに!
「 アライさん、何で旧校舎なんかに行くの?
入ったら駄目だって知ってるよね? 」
「 煩いんだよ、黙って歩けよ! 」
「 ツユキぃ、お前もタカツみたいにイジメられたいのかよ? 」
「 アタシ等に逆らうって事はさぁ、タカツからツユキに変わるって事だからね 」
「 そんな…… 」
「 止めなよ〜〜。
ツユキが怖がってんじゃん。
ツユキ、旧校舎に女子トイレがあるのは知ってるよねぇ? 」
「 え……う、うん… 」
「 トイレの数がさぁ、8個なのよ。
でもね、ウチ等は7人しか居ないじゃん? 」
「 …………そ…そうだね… 」
「 1人足りないから、協力してほしいだけなのよねぇ 」
「 協力??
旧校舎のトイレで何をするの? 」
「 かくれんぼ 」
「 えっ?? 」
「 旧校舎の女子トイレには花子さんが居るのは知ってる? 」
「 ………………居るの? 」
「 知らな〜〜〜い 」
「 居るか分からないから、花子さんを呼び出すのよ! 」
「 呼び出すって…… 」
「 旧校舎の女子トイレで花子さんと “ かくれんぼ ” するのよ!
“ かくれんぼ ” するにはルールがあるの。
必ず8人でする事。
“ かくれんぼ ” が終わる迄トイレから出ない事。
ノックの後に8つの個室トイレの何れかのドアが開いて『 み〜つけた 』って声が聞こえたら “ かくれんぼ ” は終わり。
あっ、ドアの鍵は掛けとかないと駄目だからね!
花子さんにノックされると鍵が勝手に解除されてドアが開くんだってさ〜〜 」
「 それ…私もやらないといけないの? 」
「 当たり前でしょ。
人数が足りないと “ かくれんぼ ” が出来ないでしょ! 」
「 着いたよ、旧校舎 」
「 昼になったばっかなのに不気味だね〜〜 」
「 さっさと女子トイレに行こう 」
「 ……此処が女子トイレ… 」
「 何々〜〜ツユキってばビビってんの? 」
「 キャハハハ!
マジでビビってんだ?
ウケるぅ〜〜〜 」
「 ほら、鞄。
返してあげるんだから、“ かくれんぼ ” してよね 」
「 じゃあ、花子さんと “ かくれんぼ ” するよ〜〜 」
「 いい?
アタシが掛け声したら、個室の中に入ってドアの鍵を掛けるの。
アタシが『 もういいか〜〜い 』って5回言うから、5回目に『 もういいよ〜〜 』って返事をするの。
そしたら絶対に個室から出ない事。
音がするけど絶対に鍵を開けてドアを開けたら駄目。
その内、誰かが入ってる個室のドアがノックされるわ。
花子さんに『 みぃつけた〜 』って言われたらゲームオーバー。
1分経ってから鍵を開けて、ドアを開けたら個室から出て、女子トイレを出たら全速力で玄関まで走って旧校舎を出るの!
分かった? 」
「 OK〜〜 」
「 ちょ〜簡単じゃね? 」
「 花子さんに見付かった奴、どうなんのよ〜〜 」
「 キャハハハ!
花子さんに連れ去られるんじゃないの〜〜?
ヤッバ! 」
「 じゃあ、始めるわよ。
花子さん、花子さん、“ かくれんぼ ” しましょう。
花子さん、花子さん、“ かくれんぼ ” しましょう。
──ほら、個室に入って鍵掛けるよ! 」
「 もういいか〜〜〜い。
もういいか〜〜〜い。
もういいか〜〜〜い。
もういいか〜〜〜い。
もういいか〜〜〜い 」
「「「「「「「 もういいよ〜〜〜 」」」」」」」
7人で声を上げて「 もういいよ 」を言った後に何かガタガタとかバタバタとか音がした気がしたけど、私は個室の鍵を掛けたまま壁に凭れていた。
ドアがノックされるのって何時頃なのかな?
「 ねぇねぇ、ツユキだけ置いて来て良かったの? 」
「 ツユキの奴、ドアがノックされる迄ずっと個室の中で待ってるんじゃない? 」
「 キャハハ、いい気味だよね〜〜 」
「 花子さんと “ かくれんぼ ” だっけ?
馬鹿みたいに信じてた♥ 」
「 2学期が始まったら、タカツと一緒にツユキもイジメよ! 」
「 キャハハ!
賛成〜〜〜。
2学期が楽しみぃ〜〜 」
「 ねぇねぇ、何してやろっか? 」
「 夏休み中に考えよ♥
あっ、タカツは夏休み中、ジャンジャン呼び付けてパリるよ〜〜 」
「 ラジャ〜〜♥
タカツって金持ってるから色々貢がせようよ 」
「 それな! 」
「 ランドとパーク行きた〜〜〜い 」
「 全額支払わせてやろうよ 」
「 やっだ、夏休み最高〜〜〜。
どうせならランドの中のホテルに泊まろうよ〜〜 」
「( 馬鹿な人達。
怪奇に憑かれてるのも知らないで暢気に苛めの話をしてるなんてね…。
旧校舎の女子トイレで、花子さんと “ かくれんぼ ” ねぇ。
見えない人って本当に面白い事、考えるよね〜〜 )」
アタシは1人で旧校舎へ向かって歩く。
アライさん達が怪奇によってどんな目に遭わされるかなんて興味ないし、どうでもいい。
彼女達は自らルールを破ったんだからね。
「 此処にツユキさんが居るのか。
アライさん達に騙されて置いてけぼりにされたなんて思ってもないでしょうね… 」
アタシは女子トイレに入ると閉まっている個室のドアをノックした。
個室の中からガタッと音がする。
ツユキさんかな?
「 ツユキさん、居るの?
何時まで個室に入ってるつもり?
待ってても花子さんは出て来ないよ。
アライさん達は旧校舎から出て行ったし、個室から出ても誰も文句言わないよ 」