第3話 エピローグ③
僕はギルドの壁に張り巡らされた、紙を1人で睨んでいた、冒険者には階級と言われるものがあってそれに見合った依頼を受ける事ができる仕組みになっている。
登録したての新米冒険者はブロンズ級、採取や簡単な討伐をこなし続けて初級冒険者と言われるのがシルバー級、そこから更に難易度の高い採取依頼や討伐依頼を受けて中級冒険者と言われるのがゴールド級だ。
そうして続いて、プラチナ、ミスリル、オリハルコンと階級は上がって行き伝説の英雄ジークの階級はオリハルコンの更にその先アダマント級だったと言われている。
もちろんジークは物語上の話で実際にこの世界で存在している最上級の階級を持っている冒険者はオリハルコン級までとなっている。
話は逸れたが、僕は3年間冒険者をしているにも関わらず、未だにブロンズ級だ。
因みに僕に昨日絡んできたシファとイクリマはゴールド級に位置している、僕との階級差を考えるだけで軽く目眩がしそうになるが……
僕は考えるのを止めて、もう一度壁の張り紙を見つめると、一枚の依頼書が目に止まった。
サンドワーム討伐、定員4名か。
これなら、他の冒険者と協力して討伐できるかもしれない、依頼難度もシルバーだ。
僕はその張り紙を手に取り、受付の方へ足を運ぶ。
「おはようシナン君。
今日はどの採取依頼を受けるの?」
「おはようございます、タリアさん。
今日はこれを受けようと思ってます。」
僕はサンドワームの討伐依頼書をタリアさんに手渡す。
「え? シナン君……
これ、シルバー級の討伐依頼書だけど?」
「はい、僕もそろそろ魔物の一匹くらい
倒してしまわないと、と思いまして。」
「だ、駄目よ……
シナン君が帰って来なくなったら
私はすごく寂しいわ」
タリアさんは、依頼書を真剣に眺めながらズーンとしている、それにしてもここまで僕は信用がないのか、心配してくれているのはわかるけれど流石に少し落ち込むな。
「だ、大丈夫ですよタリアさん
確かに僕1人だけじゃ、サンドワームは
倒せませんけど、この依頼書通りだと
僕以外に3人の冒険者も一緒ですし……」
「ねぇシナン君?
いつも見たいに薬草採取じゃ駄目なの?
お金に困ってるのなら、私ご飯くらいなら
毎晩ご馳走してあげれるんだけれど……」
僕はタリアさんのその言葉に、意思が揺らぎそうになるが、頑張って持ち堪える。
「い、いえお金は大丈夫なんです。
確かに僕は貧乏ですけど、1日2食はしっかり
食べれてますし……」
「育ち盛りの子がたったの2食!?」
「はい……じゃなくてですね!
僕もそろそろ、冒険者として
本格的に活動したくなったんですよ!」
僕がそう言うとタリアさんは相変わらず、ズーンとしながらも渋々依頼の受領をしてくれた。
「シナン君、帰ったらご飯作ってあげるから
絶対にまたギルド《ここ》に戻って来てね?」
「もう、心配しすぎですよ
ちゃんと戻って来ますから安心してください」
僕は受付でブルーになっているタリアさんを放って、サンドワーム討伐依頼のメンバーをギルドの中で待つ事にした。
相変わらず周りからは嘲笑の声が聞こえるけど、今は我慢して、この場で待つ事にした。
「君は……
草刈りシナンかい?」
しばらく待っていると若い冒険者の男が僕に声を掛けてきた。
「その呼び方は辞めてください」
「あはは、いやあ失礼したね。
俺はイーサー今回の討伐依頼を受けた者だよ。
階級はシルバーだ、まさか君が討伐依頼を
受けるなんてね、どう言う風の吹回しだい?」
イーサーは丁寧な言葉でそう言うが、顔からは嘲笑の笑みがしっかり出ていた。
「ただの、気まぐれですよ」
「あっはっはっは!
そうかい、そうかい! 足は引っ張らないで
くれよ! シナン君!」
イーサーは僕の肩をバシバシと叩いて笑っていた、この人とは初対面だったが僕はこいつが嫌いだ。
「おっと、他の2人も来た様だね。
シナン君、そろそろ出発の準備をするよ」
そうして、僕はイーサーと残り2人の冒険者と合流してサハラ村の入り口まで向かった。
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