第2話 エピローグ②
草刈りシナンかぁ……
僕だって、そりゃ英雄様みたいに
格好良く魔物を倒したりしたいさ。
だけど物語の様に現実は甘くない。
僕には剣の才能も魔法の才能も
絶望的に無かった、冒険者登録をして
かれこれ3年、未だに魔物一匹倒せずに
薬草採取の日々を送っている。
「はぁ……魔物討伐依頼受けてみようかなぁ」
「ねぇあんた? 今なんて言った?」
「魔物一匹討伐しようかなって……シファ!?」
「シファ!? じゃないわよ!」
「あんた如きが!」
「魔物を!」
「倒せると!」
「思ってんの!?」
シファは僕の背中をバンッと力強く叩く。
僕は突然の痛みを耐えながら、シファの言い方にかなり苛立ちを感じていた。
「…………」
「何よ? あんたはさっさと冒険者なんか辞めて
この村の医者にでもなれば良いのよ!
剣もまともに触れないあんたにはその方が
お似合いよ!」
「…………」
「何か言いなさいよ!
聞いたわよ、今日もギルドでイクリマに
散々馬鹿にされたみたいじゃない?
このままじゃあんたが冒険者やってる限り
ずっと草刈りシナンなんて言われるのよ?
あんたはそんなんでいいの!?」
「シファに言われなくてもわかってるよ……」
「だったら冒険者なんてさっさと辞めなさいよ!
このままじゃ、あんた一生草刈りで人生終わる
わよ? そんな奴、私は御免よ!」
「別に僕の生き方はシファには関係ないだろ!
僕は絶対に冒険者は辞めないよ!」
「はぁ……そうねあんたの言う通りよ。
私はあんたの生き方なんてどうでもいいわ!
だけど、そんなダサい渾名背負うくらいなら
早く冒険者なんて辞めろって言ってんの!」
「だから、辞めないって言ってるだろ?
なんで毎回僕に突っかかって来るんだよ!」
「あんたが、惨めったらしいからよ!
そこまで言うんだったら早く魔物の一匹でも
倒して見せなさいよ!」
「あぁ! そうさせてもらうさ!
明日には魔物討伐依頼を受けるよ!」
「駄目よ!
あんたが魔物を倒せるわけないじゃない!
魔物討伐依頼を受けたって、無様に魔物に
殺されるだけなんだから、絶対に駄目!」
「そんなの、やってみないとわかんないだろ!
大体、シファには僕の気持ちなんてわからない
だろうから、もう放って置いてくれよ!」
「っこの!
あんたまだ、英雄の夢諦めてないの!?
貴方今年で18の歳にもなるのよ?
そろそろ自分の実力だって目に見えて
わかるでしょ!?」
「そんなの僕が一番わかってるよ!
でもこの夢だけは絶対譲れないんだよ!
例え死ぬ事になってもね!」
「人が散々心配してやってるのに!
この分からず屋!馬鹿シナン!
もう、本当に知らないッ!」
シファは自分の腰に掛けている剣の鞘で僕の事を殴って、何処かへ走り去っていった。
僕はいつもそうだ、シファにああやって嫌味を言われるとどうしても感情的になってしまう。
だけど、シファは僕が冒険者を辞めない限りああやって嫌味を言い続けるんだろうな。
僕は幼い頃母さんから聞かされた憧れの英雄の話を思い出していた。
透き通る様に白い肌、輝く様な金の髪に眩い光を放つ、緋色の瞳。
剣を片手に不思議な魔法を使いこなし
数々の厄災を払ったとされる、伝説の英雄ジーク
僕はそんな英雄になる事を夢見て、今も冒険者を
続けていた、だけど今の僕はどうだ?
村の皆は僕を見て揃えて口にする。
魔物一匹すら倒せない草刈りシナン
……このままじゃダメだな
明日は魔物討伐依頼を受けよう。
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