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十七章

ぼやけてゆく視界の中で、私は自分の人生を振り返っていた。

生まれてからずっと、誰からも愛されず、自分の命を削り、他人の傷を癒してきた。

私の傷は深くなるばかりで、隠す事しか出来ない。

ようやく腹に宿った子は、母である私だけを愛するよう、そう育てていきたかった。

なのにあの子は、父にその命を譲ったのだ。

ロイ様に。過去の私が愛した人に。

我が子にすら、見捨てられた気がした。

私はロイ様が死んでも構わなかった。

そうであってほしかったのだ。


「メグ、具合はどうだ」


ロイ様の声が頭に響く。

何度も反響し、吐き気がしてくる程に。


「何故、あなたが生きているのですか」


選ばれないでほしかった。

私の子に、私とあなたの子に、愛されるのは私だけでありたかった。

国王夫妻が死に、ロイ様の傷を癒した日から十日後。

私は彼の部屋のベッドで目を覚ました。

体中が不調を訴えていた。

目に映る景色はぼやけ、ひとりで起き上がる事はまだ出来ない。


そして知った。

ロイ様はもう元気である事。

私の腹に子がいない事。

ロイ様が国王の座に就き、命を削ってまで王を救おうとした私が女神と謳われている事。


そのどれもが何の意味もなさない。


「私は、私は愛されたかった」


誰も私を愛してくれない。

髪の色が、目の色が変だから。

しかし人並外れた能力を持っており、利用しがいがあるから。


「私は誰かを愛したかった。見返りがある愛を与えたかっただけなのに」


枕を腰に当て、どうにか上体を起こした状態で、定まらない視点をロイ様の美しい顔に向ける。


「あなたなんか、死んで仕舞えばよかった」


彼の顔がくしゃりと歪む。

お腹に手を当て、今は亡き子供を思う。


「この子がいれば何でも良かったのに」


瞳がじわりと熱くなる。

泣くな、泣くな、泣くな、泣くな。


「私は……生きたいと望んだ事はないのに」


「メグ」


ロイ様が私を強く抱き締める。

きつくきつく、私の顔を自分の胸に押し当てる。


「死んでしまいたい」


言葉にした瞬間、私の瞳から涙が溢れ出す。

今度は止める事が出来ないし、そうする事すら億劫だった。

呼吸が出来なくなり、言葉も発せない程に泣いた。

ロイ様はずっと私を抱き締め、時々私の髪を撫でた。

不快には感じなかった。


「すまない、メグ。それでも私は、君を愛しているんだ」


これからも私は、この人と生きていくんだ。

口先ばかりの愛の言葉を聞きながら、黒髪と赤い瞳を持て余し、なんの能力もない病弱な花嫁。

結婚したその日から、私はずっと、死にたがっていたはずなのに。

これから先も生きていくんだ。

ここまでお付き合い下さった皆様、ありがとうございました。

設定を間違え、完結済みにしてしまっていた様なのですが、今回の十七章でこの物語は閉じようと思います。

拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです。

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[気になる点] タグの ほのぼの 息してナイよ。 個人的には大好きな作品です。終わりも余韻が、未来が色々妄想出来て、ありがとうございます、なのですが。 ですが、 ほのぼの  行方不明っていうか…
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