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十二章

「メグ、体調はどうだい?」


寝室のベッドに横たわっていた私は、ロイ様の声に体を起こす。


「こんな姿ですみません。もう大丈夫です」


「無理をし過ぎているのだろう。あまり力を使わない方が良いのではないかな?」


「……そうかも、しれません」


「メグ、この前の話だけれど」


「ロイ様、お願いします。私に一度だけ、機会を頂けませんか?」


ロイ様の言葉を遮り、私は頭を下げる。

これが最後。

駄目なら、諦めるから。


「……機会?」


「私は、後継ぎを産みたいのです」


真っ直ぐにロイ様の瞳を見て伝える。


「この国を、ロイ様の次に背負う、後継ぎを産みたいのです」


不覚にも、涙が流れそうになった。

なんと惨めなのだろう。

こんな言葉を口にしなければ、夫に見向きしてもらえない。


「……しかしこの前……」


「お願いします」


頭を下げる。

本来であれば当たり前の事なのに、私達は子供を作る事すら出来ない。

ロイ様が悪いのではない。

私のせいだ。

体の傷を見られたくなかった。

家族から愛されていない事を、その傷で実感したくなかった。

本当は知っている。

私の体に刻まれた母親と姉の思いは、愛なんかじゃない。

憎しみ、恨み、微かな嫉妬。

私の能力を公にしなかったのは、単に出来損ないだと馬鹿にしていた私の価値が上がる事を恐れていたからだ。

分かっている。

けれど、認めたくなかった。

だから、無い事にした。


服の下に隠されていた傷を、跡形も無く消す事で。


「……私は、メグを傷付けたくはない」


少し困った様にロイ様が言う。

今更何だ。

結婚式の日に私以外に好きな女性がいると言われてから、いや、婚前にその噂を聞いてから、私はもう傷付いていた。


「ロイ様になら、傷付けられたいのです」


傷が愛の印だと言うのなら、それで良い。

私はひとつでも多く、ロイ様に認められたい。


「分かった」


苦しそうに言葉を発するロイ様。

ああ良かった。

どうやら私は、悔い無く死ぬ事が出来そうだ。


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